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メッセンジャーside吉岡尋海
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こんな夜に誰からだろう。時間はまだ11時を指していなかったが、すぐ眠くなる俺にとって結構遅い時間だ。早いときは10時にはもう夢の中だ。
メールの着信音を告げるスマホを黙らせ、ぼーっとしながらメールボックスを開く。
メールだなんて珍しい。友達らしい友達は旭ぐらいしかいない俺にとって、メールなんていう代物は邪魔なものでしかない。ショップの宣伝や、いやらしいサイトに飛ぶスパムが主である。
芸能人からメールだなんてくるわけないのに、何を考えて送信者はメール文を打っているのだろう。だます気があるんならもっと本気で来い。
未読の通知がたまるのも嫌なので、一瞬だけ開いてすぐ削除してやろうともくろむ。
変なものを置いておく趣味は俺にはない。
せっかく旭とメアド交換してうきうき気分だったのに。一番最後に気分を盛り下げてくれる。
唇を尖らせながら開いた先に、表示された名前。心臓が止まるかと思った。いや一瞬確実にとまった。全身の血液や細胞や体組織が驚きで完全停止する。
次に息をもらした時、俺は寒さとは別の意図で体が震えるのを抑えきれなかった。
『こんばんは旭です。寝てたらごめんなさい。今日は吉岡君とメアド交換できて嬉しかったです。交換しようって言ってくれてすごくうれしかったよ。それじゃあまた明日』
たどたどしい文面が、旭らしいと思った。絵文字も顔文字もない簡素な文章だったけれど、俺からしたらキラキラ輝いて見える。直視できない。
現実を理解するかのようにじっくり何度も何度も読み返す。また明日、の部分に指を滑らせて優しく擦った。また明日と言ってくれたということは、旭はまた俺と会ってくれるということで。
当たり前の意味だけれど、大切な一言。
完璧に飲み込めた瞬間に襲ってくる熱い塊に悶えてしまう。足をバタフライをするようにばたつかせ、掛け布団を抱き込みゴロゴロ転がる。
しばらくその余韻で眠れず、次の日寝不足で死にそうになるのはまた別の話だ。
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