アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
せつなれいにーside旭秀治
-
「あっ雨降りそう………」
振りだしそうな空を教室の窓から見て、慌てて教科書をかばんに詰め込んだ。早く行かないと本格的に雨が降る。それまでにかえらなければ、今日傘を忘れた僕は大変なことになるに違いない。
廊下を速足で進む。すれ違う人たちとぶつかりそうになったけれども気にしちゃいられない。一刻も早くここからでないと。
何人もの人を追い抜きたどり着いた玄関で、急いで靴を履き替え外に飛び出して絶句した。
もう降り始めている。滝のように降り注ぐ大粒が僕の帰り道を阻んでいた。
まさかこんなに早く降るとは。僕の予想を上回る早さと雨の強さに呆然とする。
しかも風がでてきた。雨を横なぎに流す強風までも僕を嘲笑ってるみたいだ。雨と風のコラボは洒落にならない。ダッシュで帰ってもずぶ濡れになるのは必至だろう。
鞄に詰め込んだ本たちが濡れるのだけは避けたい。僕は服を脱いでお風呂に入れば済む話だが、水に弱い本たちはそうもいかない。
とにかく困った。この豪雨をどう切り抜ければ。途方に暮れる僕の横を、女子生徒が騒ぎながら走って行った。ずぶ濡れになるのも構わず、雨の中を走り去っていく。楽しそうだ。
僕も彼女たちのようにしなければならないのかな?もうそれしか方法がない気がする。
文庫本が濡れなければいいけれど。後はどうでもいい。
決死の覚悟の輪郭を定め、足を一歩後ろに引いた瞬間、声がかけられた。
「あれ?旭か?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
62 / 84