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俺の悲しみを見透かさないでside吉岡尋海
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「あ?なんだよこの女々しいの。女からのか?生意気だ」
俺のポケットから垂れていたキーホルダーに目を付けた野郎が、無遠慮にわしづかみ引きちぎる。止める暇もなかった。それだけじゃなく、足の裏で何度も何度も踏みつけ砂と土の上で抉る。
真っ白になった。
俺の視界が。脳内が。世界が。心が。
白のペンキで塗り潰されたような目眩がこめかみを殴った。
旭に貰ったキーホルダーが宙を舞って遠くの地面に落下した。ひどく不愉快だった。旭を汚されたようで。旭に貰った大切な物をこんな薄汚い手で触られたと思ったら押えきれない憤怒が身を焦がす。
「てっ…めえっ!」
気付けば体が動いていた。手加減なんてない拳が野郎の頬を捉える。まともに食らったらしくあっけなく倒れた。もう一人が襲いかかってきたが歯を食いしばり蹴りを放つとあっさりと意識を飛ばした。
感情が制御できない。ちぎれたキーホルダーを掌にのせた俺の顔は一体どんな色に染まっているんだろう。
すっかり汚れてしまった。旭に貰ったものを守れなかった自分に、自然と頬を暖かい滴が滑り落ちた。
心配するなとか、行ってくるじゃねえよ。
こんな小さなものを守れずに、旭を守れるわけないだろ。
大事な人から貰った大事な物ぐらい、守れないと。
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