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プロローグ
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旭秀治は本が好きだった。
暇があれば貪るように活字をにらみつけ、暇がなくても文字を指でなぞっていた。学校の休み時間、時たま退屈な授業の際、彼は現実から逃げるすべで読書を使ったりもした。
読んでいると妙に心が安らぐ。どんな現実だってはねのけられる気さえしてくる。
読書の世界は夢と同じだ。
どんな世界だって広がっている。
自分が望んだ世界を生み出すことができて、他人と共有することが可能なのだ。
本は世界だって変えられる。つらい現実だって変えられる。
だがこれは。
ゆっくり本から顔をあげ、恐る恐る隣の席を窺う。
バカみたいに明るい金髪。バカみたいに不機嫌そうな表情。ぶっすりとがった唇は何がどうしてどうなって尖っているんだ?理由を知りたいような知りたくないような。いややっぱり関わり合いになりたくない!
気づかれないように観察していたつもりだったが、ぎろりと睨みつけられた。
鋭い視線に貫かれて、悲鳴をなんとか抑え込み慌てて前を向いた。
背筋がびしっと伸び嫌な汗がつたう。
隣人に獰猛な野獣を放ったかのような威圧感のせいで手汗がひどく、本がぐっしょり濡れてしまう。凄い臆病で気の弱い旭なんて一口で噛みちぎられそうだった。
どうして、どうしてこんなことに。
かたかたと震える手首を押えて生唾を飲み込む。
ただ自分はおとなしく本を読みたいだけなのに!
こんな現実ありですか神様!?
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