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ころころ。side旭秀治
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「あっ」
思わず声がでた。幸いにも小さめの呟きだったから誰にも気づかれた気配はない。慌てて口を抑える必要もなかったな。
相変わらず黒板の前では国語の担当教師がつらつらと古文を読み上げている。
古典といえど物語に変わりない。
言葉づかいとかがちょっと難しくなってるだけで、立派な物語なんだ。最初は読むのは難解だと思うが、慣れればどうってことない。
ほら英語だってロシア語だって同じ言語なわけだし。
まじめに学ぼうとしたら案外あっさり馴染んでくるものなのだ。日常的に交わし合う単語の集大成を自然と理解するのは人間の特権なのだから。
さっきまで真剣に聞いていた古文が頭の中から吹っ飛んだ。
その代わりに簡潔な一文が浮かび上がる。
消しゴム落としちゃった。
足を無理やりのばせば届く距離。数キロも離れているわけでもないのに、僕の心は憂鬱だった。
なんで吉岡君のほうにころころ転がって行ったんだろう。
神様のいたずらと言うにも限度がある。
消しゴムは僕を苛めたがってるのかもしれない。
ああ、神様は僕に吉岡君と何かしら接点を持ってほしいのかな?まだ死にたくないんだけどな………。
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