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ころころ。side吉岡尋海
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授業を聞き流していると足元にころころ何か転がってきた。これでも視界は広いほうだと思う。
ちらりと目線だけ下に向ける。四つある角が全部削れた、小さくて丸い消しゴム。
左から転がってきたんだから、落とした相手は考える必要もない。顔を思い浮かべると胸がせつなくなったのでぎゅうっと服の上から握りしめる。むずがゆい。
周りのクラスメイトにばれないように隣を盗み見る。最近、盗み見がうまくなった。
それは隣にいる人が原因で。たった一つの理由。
ずっと見ているなんてばれたら気持ち悪がられるから、必死で磨いたスキルなんだよな。
旭は不自然なほど背筋を伸ばしていた
。膝の上に置かれた手が震えている。
目は見開かれて食い入るように黒板を見詰めていた。
落としたことに気づいてないのか?なんて勉強熱心なんだろう。
そんなところも好きだから救いようがない。助けてくれとも思わない。
痛いけど、優しくもあるんだよなこのドキドキ。
一心不乱に教師の退屈な話を聞く旭は優等生の鏡だ。
本当に尊敬に値する。おれも見習わないとな…。
でも勉強ってどうも性にあわない。眠たくなるし。
それにしても消しゴムがなかったら困るだろうに。
どうにか気づいてほしくてがっつり見つめてみるけど、それすらも跳ねのけて旭は集中している。集中力わけてほしい。
うーん、どうすっかな………このままなかったことにすることなんてできねえし………。
おれが拾うしかねえか。一番最良の行動にたどり着くまでに時間がかかりすぎた。照れくさい。
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