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机をくっつけるside吉岡尋海
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「ん?旭教科書は?」
「わっ忘れました………」
遠くなりかけた意識に届いた会話。中に旭という単語が聞こえ、俺の意識はゆっくりと浮上し始める。
一瞬で眠りに落ちかけていた俺は、髪の毛を掻きむしりながら隣を見る。目が開かねえ。言ったん落ちた電気を再稼働させるには時間がかかる。
淀む視界の中心に、旭の横顔を見つける。そわそわしていて落ち着かない旭に「どうした?」と聞きたかった。
旭が困ってるなら俺は何とかしてやりたい。でも話しかけれる度胸はないし…。中途半端な自分にイライラしてくる。
「なら隣の人に見せてもらえー」
隣?旭の隣って俺だよな?俺の隣って旭だよな。一気に目が覚めた。旭は窓際だから左に席はない。右側には俺。つまり隣の人とは俺のことを指し示す。
まどろんでいた余韻なんて簡単に吹っ飛んだ。驚きのあまり椅子を蹴り飛ばして立ち上がりかけたほどだ。
待て。何を見せてもらうって?
さっきの会話を思い出す。「教科書は?」「忘れました」脳内で繰り返した。そして意味を探る。
教科書?教科書を忘れたのか旭。ちらりと隅に追いやった教科書を見やる。
初めて教科書なんていう紙の束に感謝した。
これで旭の役に立つことができると思うと、嬉しさで顔がにやけそうになった。
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