アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お休み7
-
菊池の家に来るのはあの夏休み以来、一ヶ月ぶりのことだった。
整然と揃った家具も物も、あの日から変わっていない。
「すまんな、今換気する」
菊池が部屋の窓を開けると、熱気のこもった部屋に涼しく新鮮な風が入ってきた。
「先生、寝ていてください」
「あぁ…そうする」
菊池は優馬にお茶を差し出すと、ベッドに横になった。
菊池がベッドにいて、優馬が傍で座っている。そんな光景はどこかおかしくて、優馬はどんな態度を取ったらいいか困っていた。
「今日…すまなかったな」
「いえ、こちらこそお邪魔してしまってすみません…」
「優馬…」
「はい」
「君が部屋にいるのに、手をだせないのが残念だ」
「元気そうでなによりです」
「はは…」
今日の菊池は穏やかで、よく笑う。
優馬も、横になっている菊池に警戒心を抱くことなく、対等に話しができている心地がある。
いつもこうであればいいのに。
一方的な菊池の取り決めと、脅しと…そんな殺伐とした関係じゃなくて、こんな風に普通に笑えたらと思う。
「もう、私に抱かれるのは嫌か?」
「…」
「君を脅すものも縛るものも、私はもっていない。なのに君は今日なぜここにきた?」
「…それは…先生、ひとりで苦しいかな、と思って…」
「放っておけばいい、君に酷いことをしてきた男のことなんて」
「そんなの今は関係ないです」
「優しいな、おまえは…」
ポン、と頭を優しく撫でられる。
本当は優馬は、菊池を責めたかった。
七海に暴力を振るったこと、ひどい仕打ちをしたこと、自分のように、弄んできた誰かがいること…
愛してるという言葉が、本当じゃないこと。
それを責めて、菊池を拒絶したかった。
先生に捨てられる前に。七海のようになる前に。
「先生は…ずるいです…」
ひどくしたり、優しくしたり。
そうやって優馬の心を揺り動かして弄ぶ。
「あぁ…そうだな」
「自習室で待ってますから…来週は学校にきてください」
「あぁ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
99 / 123