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【知らない】*遥燈視点
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……夢を見た。
呼び名のとおり、黒猫になって、みんなに話しかけるんだ。
だけど聞こえてないみたいで。
向こうも何か話してるが何も聞こえてこない。
「にゃあ、にゃあぁ……」
声が震える。
……誰にも気づかれてない、透明人間。
いや、透明猫か。
そんなことはどうでもいい。ただ、ただ……。
そこで何かの気配を読み取った。
猫のヒゲは空気の振動に敏感だからか。
振り返ると同じ年くらいの男がこちらを見ていた。
そうすると慌てて目の前で手を合わせた。
こいつは何者?
見たこともない奴が生徒会室にいて、俺は思わず威嚇した。
……夢の中なのに。なんでだろ。
男は一度、振り返った。
そして口を開く。
「…君は生きてるの?
君が見てるのは夢?それとも死後?……現実?」
……は?
「……どれにせよ、君は黒猫。見つけられたとして、意味なんか伝わらないよ。…それだけ。」
そういってきえた。
……正論でした。うんまぁ知ってる。知ってるけど……。
"人間"の俺は黒猫になっても伝えたいから……。
そこで夢は途切れた。
目を開けると、まぁ、殺風景なコンクリートの天井が見えた。
「……ぁ………ぃたい…………腰……」
腰が痛い。
これはやばい。
と、ガチャっと扉が開いた。
「よぉ、お昼寝タイムですかぁ?」
「……あ?…なんだ死神か……」
あ、本音がポロッと漏れた。
やばい。
「……なんだ、だと?俺を誰だと思ってんだくそ猫が!」
ドゴッと腹が蹴られる。
ちょ、寝起き。
あ、でも、……寝起きだからかそこまで痛くないかもなぁ。
死神の足が地に戻る前に体をくねらせ、支え足を引っ掛けた。
「よっと。」
「おわぁっ」
死神は尻をついて転んだ。
「…俺のこと監禁してまで勝とうとするお前が、足引っ掛けたぐらいで転ぶなんてダサいね。」
痛み出す腹を抱えながら死神に蹴りを入れた。
そして、死神のポケットから出た鍵を拾って右手の枷を開けた。
「ふぅ。やっと動ける。よっ」
死神にもう1度蹴りを入れると、ドアを開けて飛び出した。
だけどそこには見張りがいるから、俺は飛び出してサッと向きを変えると飛んでくる拳を避けながら腹に頭突きを食らわせた。
そして廊下を走って逃げる。
窓を見た時、高い場所だったから、階段を下る必要があるな。うん。
……俺は油断していた。
"結人"がいることを、寝起きの俺は忘れてしまっていた。
「……だめだよ遥燈。逃げちゃだめだよ……。」
俺は何度も君を殴りたくないから。
傷付けたくないのに。
ごめん、もう一度だけ許して。
角で待ち受ける結人は、苦しい自分の思いを断ち切って走る俺を待った。
そんなことを、俺は知らない。
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