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【黒猫】*結人side
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俺は昔、黒猫を飼っていた。
安直な名前だけど、クロ。
大切な家族だった。
クロはいつも、俺と一緒にいてくれた。寝る時も遊ぶ時も、クロだけだった。
そんなある日、クロは遊びに行って帰ってこなくなった。
母さんにそれを伝えるが、猫なんだからそこらで遊んでるのよ。もしかしたら彼女か何か出来たのかもねぇ。
とあしらわれた。
父さんにも相談した。けど、仕事で疲れてるからって俺をのけ者にした。
母さんの言う通りかもしれないと、俺は何日も何日も待った。
けれどクロは帰ってこなかった。
数カ月が過ぎ去って、母さんとばあちゃんちに引っ越すことになった。
田舎の自然豊かなところ。
父さんとは離婚したらしい。
小さかった俺は、あまり良く分からなかったけど。
車窓から輝く川を見ていた。
太陽に照らされて、キラキラしていた。
とても眩しくて、その時の俺とは正反対だった。
その時、何か黒いものが浮いてるのがわかった。
目を凝らしてみた。
……それは死骸だった。
クロの。
クロが付けていた赤い首輪に黄色い鈴。
それが太陽に反射して見えた。
咄嗟にクロって叫んだんだ。
暴れ出す俺を見て、母さんは車を止めてくれた。
俺は川に向かって一気にかけた。
幸い、その川は小さな川で、更に雨があまり降っていなかったころだから、水量もすこし少なくなっていた。
クロを抱き上げて河原に上がる。
クロは冷たくなって死んでいた。
体や顔には沢山の傷があった。
……すぐに、クロが殴られたんだ、と理解した。
俺は甘えていた。
クロという存在があるだけで嬉しい、なんて生意気なことを、思ってながらも、クロと自分を守る術を持っていなかったから。
俺は田舎のばあちゃんちで、沢山修行した。
戦い方のコツ、技術、何もかも教えてもらった。
そして強くなった。
何かクロのように大切なものができた時、守れるようになった。
なのに俺は道を誤ってしまった。
田舎から出てきてすぐ、俺の名前は広まった。
といっても一部だけに。
そこで死神に会った。
死神は仲間にならないかって言った。
一人で暴れるのに飽きていた俺は、何も考えずに承諾した。
それが後悔の原点になる。
「知ってるか?死神さん、また黒猫に負けたらしいぜ。」
「でもこの間は勝ってたよな。」
「馬鹿言うなよ。あの時、黒猫は頭痛かったらしいぜ?体調不良の時に買ったって、ハンデだろ。」
……黒猫。
その時に初めて名前を知った。
正式では月氷の黒猫。
月や氷のように冷たい目をした、黒猫のような悪魔。そういう意味らしい。
へぇ、黒猫が悪魔だなんてな……。
それなら俺は無差別に人を殺す人殺しのようなもんだ。
黒猫は不吉だというが、黒猫が一体何をするというのか。そりゃあ、引っ掻いたり、噛んだりするのは防衛本能、もしくはじゃれ付いてるだけだけど。
黒猫がそこにいるだけで遠ざけられる理由にはならない。
俺は黒が綺麗だと思う。
花火だって、夜空の黒がなきゃ、綺麗に見えない。
月だって夜空がなきゃ黄色には見えない。
昔の人は何を見て黒猫が不吉だというんだろう。
墨だって、鉛筆だって、黒だ。
瞳も、髪の毛も黒だ。
誰かを愛しても、その人にも黒はある。それは闇かどうかは知らないけど、黒がない人なんていない。どこかの国の金髪くんだって、瞳の真ん中には黒がある。
偉い大統領にだって黒はある。
それなのに。
彼らは黒猫を悪魔と呼ぶ。不吉だという。
そんなお前らの方が、よっぽど悪魔だというのに。
…だから不思議とそう呼ばれる相手がきになった。月氷の黒猫。
君はそこまでをするくらい、何か苦しいものがあるのか。
それともただの遊び?
……だったら言ってやんなくちゃならないから。
黒猫をバカにするなってな。
黒を殺すなって言いたい。
さて、……今日も学校か。転校生が来るって言ってた。
……月氷の黒猫。まさか君自身に会えるとは思ってなかったけど。
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