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【前の生活に戻れたらいいのに】
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暗い。
どこだろう。
少なくともあのコンクリートの上じゃなさそうだ。
全身が唸るように痛い。
「ここはどこ……何も見えない……。」
匂いは……病院……?
ガラッと音がした。
誰?誰が入ってきたの?
「……遥燈?……遥燈が目を開けてる…!隼人!遥燈が、起きたの!」
「……あね、き?」
「本当だ、医者をよんでくるよ」
「良かったわ、遥燈。……良かった。」
「……どこ?」
「……え?」
「姉貴、どこ?…見えない……。どこにいるの……?声しか聞こえないよ……」
*
「……え?」
姉貴……と思われる人に医者から伝えられたのは、疑うような事だった。
「今は、一時的に、そう……一時的に目が見えないの。大丈夫、そのうち見えるから。」
「……目が……みえ、ない。」
なんで、こんな目に遭うんだろう。
結人に連れ去られて、またレイプされて、そんで目が見えなくなって……。
人間、辞めたい。
死にたい。
辛い。
生きたくない。
殺してくれ。
「嫌だ……いやだ、見えない、いやだ、怖い、怖い…っ怖い、いやだ、殺して、死にたい……っ」
「はる、ひ……遥燈、大丈夫、大丈夫だから、」
「遥燈くん、大丈夫、見えるようになるから。」
……誰かが俺の肩に触れた。
男の人?隼人さん?
やめて、なんで、なんでなんでなんで!!!
「嫌だァ!!やめてくれ!もう、許して、もう逃げ出さないからぁ!」
全身がガタガタ震える。
「やめて、やめて…………!」
頭が痛い、怖い、助けて。
「遥燈くん、大丈夫だよ。ここには奴らはいないよ。」
「…あ、……あぁ……あ……あ……っ」
……奴ら?隼人さんは知ってるの?……嘘だ、そんな……!
姉貴は?知ってるの?
「……ど、どこまで知って……」
そう言うと、しばらく沈黙の時間が流れた。
なんで何も答えない?
「…ね、ねぇ、誰か……誰か、声を……声……」
「……遥燈、どこまで知っているかなんて、家族の私には全てを知る権利がある。だから全部知ってる。大丈夫よ。遥燈のこと軽蔑しないし罵ったりしない。……だって私、ブラコンな気がするからね!」
「玲華、自覚あったんだね」
「当たり前じゃないの!自慢の弟だもの。まさか、ブラコンまでになるなんてね。」
……話を避けられた気がする。聞きたいのはそんな事じゃない。
……でも、今はこれでもいい気がした。
早く、あんなことを忘れたいから……。
*
姉貴は病院にとまるらしい。
目が見えない俺にとって、何も聞こえないというのは、とても不安なんじゃないかって。
だから久しぶりに一緒に寝てくれるらしい。
それなら安心かもな。……うん。
そんなこと思ってると、病室の扉が開いた音がした。
「おぉ、立花。元気か?これ、りんご持って来た。」
「……見せようとしても目が見えてないんですよ。考えてから行動してください、蓮夜。」
「……忘れとった。」
「…ふふ、大丈夫ですよ。……まな板は姉貴が場所を知ってます。……姉貴、何処だろう。」
「あぁ、大丈夫。ちゃんと持って来たから。」
なんだ。そうなのか。
会長と副会長が見舞いに来てくれたらしい。
もうしばらく会長と副会長の顔を見ていない。
どんな顔だったかな……。
「ほい、立花食えるか?……あーんしてやろうか?」
「うわー結構です!何処にありますか?」
「ここだ。」
会長が俺の手を取って教えてくれるが、俺は反射的に手を払ってしまった。
「う、ぅ……すみませ…ん。……」
あぁ、また震えが止まらない。
……なんでこうなっちゃうかな。
前の生活に戻れたらいいのに。
……って、前の生活ってどこまでが前なんだろう。
攫われる前?それとも転校する前?
不良になる前?母さんたちが死ぬ前?……生まれる前?
……どちらにせよ、戻れないのはわかってる。……はぁ、どうやって目が見えるようにすればいいのやら。
「立花、大丈夫か?食えそう?」
「……無理なら大丈夫ですよ。」
「大丈夫です。りんご食べたいですし。テーブルの上に置いてもらえませんか?」
「あぁ。」
コト……と音がした。
恐らくリンゴが入った皿がテーブルに置かれたのだろう。
テーブルがあると思われる所に手を出すと、ピンポイントで皿に手が当たった。
リンゴを手に取ると、そのまま食べた。
……美味しい。
久しぶりに食べた食事……。
「リンゴ……美味しい…ですね」
「そうだろう?現地から取り寄せたものだからな。」
すげぇ。
お金持ちすげぇ。
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