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【心のキズ】*遥燈side
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「……疲れた。」
助けてください、もうやだわ!
ネズミの骨なんか好きじゃないし、紙の無駄遣いだし!
机どころか椅子もなくなるし!
どうやって片付ければいいの!
今日もひとり寂しく屋上でおにぎり食べて……ぼっちだよぼっち!
「あ、遥燈先輩。いきてます?」
「……あー…誠くん…………こんばんわ」
「今昼ですけど。一人飯ですか。一緒に食べてもいいですか?」
「どうぞ!結人が来なくて死にそうだったし。」
「……結人って…停学になった人ですか?」
「……ん?停学になったの?全く来ないから退学になったのかと思ってた……。」
停学だったのか。よかった。
普通だったら退学になると思うけど、停学でよかった。
「遥燈先輩、聞きたいことがあるんですが。」
「何?」
「僕、前に会った時から、遥燈先輩を想うと辛かったりワクワクしたりするんですけど、どんな感情です?」
「……えっ」
「会えないと寂しくて、会ったら心拍数が上がって緊張する。顔を見れば嬉しくなる。声を聞けば耳に残っていて、発情するような……」
「ストップストップ!!は、発情とか言わない!」
「でも他にどう表したら……。」
「いや、落ち着こう!一旦!うん!落ち着こう!」
「……先輩が落ち着いてくださいよ……」
そんな誠くんの言葉にやっと落ち着く俺。
1人でテンパって馬鹿みたい……。
ていうかそうじゃない!
俺、誠くんに発情されてんの?
男だよね?男同士ですよね!?
誠は実は女の子だったり?
でも、女の子が発情とか言わないよね!?
「……なんか僕、変な事言ってます?」
「うん!言ってる!ていうか変なことしか言ってない!」
「えっ……」
だ、大体、会えないと寂しくて、会ったら心拍数が上がって緊張する。顔を見れば嬉しくなるとか…………そ、その感情ってさぁ……。
「……好き」
「え?」
「僕、先輩のこと好きかもしれません。」
「!?」
ちょ、ちょっとまて、俺はノーマルだぁあああっ!!!
「遥燈先輩、合ってます?」
「……えっ……。そ、それを俺に聞く……?」
「……分からないですし……。あ、そうだ。先輩、試しに僕のこと抱きしめてもらっていいですか?」
「(´°Д°`)」
だ、だだ抱きしめる!?
後輩を!?男どうしで!?
……へ、偏見は多分しないと思うけど、抵抗がありまくる。
「……ダメですか?」
あああああっ、クールな誠くんがそんなチワワみたいな視線で見てくるから俺はそういうの断れなくなるんです……。
「ん!おいで!」
そう言って両手を広げる俺。
流石に自分から抱きつくのは恥ずかしいからなぁ。
「さぁ、俺の胸に飛び込んでこっ…うわぁっ
誠くん、いきなりはびっくりするってば。」
「……すみません。先輩が可愛く見えて……」
「お、おおぅ。そうか。よしよし。」
お、誠くんの髪の毛のフワフワしてる……。
可愛いってさ、好きどうしになったら嬉しくなるもんですかね。
「……先輩、辛くないですか。」
「…何が?」
「とぼけないでくださいよ……。いじめ、酷くなってるんでしょう。辛くないですか。」
「……辛い、かぁ。特に辛くないけど、片付けが大変かな。」
「…だから精神不安定なんですね。」
……今の話と精神、何が関係あるんだ?
馬鹿な俺には分からない。
「…先輩は今、辛いっていう感情を忘れてます。それは先輩が、裏の自分……でしたっけ。それを殺しているからです。二度と傷つかないように、負の感情を作り出す裏の自分を殺してる。」
「……辛いって感情?それならさっき、片付けがって……」
「その辛いは肉体的にです。体動かしたり、頭使ったりするのが面倒くさいとか、そういうことでしょう。でも、いじめは違う。心の闇を生み出すもの。それが今、先輩に無いのは、やっぱり殺してるからだと思うんです。」
「……既に、殺してたってこと?
……でも、確かに……辛いって…どんな感情だったっけ。」
「…全校生徒から、ひどい扱いを受けて、悲しくなりませんでしたか?罵られて、痛いって思いませんでしたか。」
「……」
「先輩、辛いんじゃないですか。」
そんなことはない。
本当に、言ってる意味がわからない。
辛いならとっくに……
「…泣いてるじゃないですか。」
「!う、嘘、だって俺……全然……!」
「辛いと感じなかったのは、表のあなたが守っていたんです。
これ以上、あなたの心に負担をかけないように。でもですね、先輩。
負の感情があるのは、悪い事じゃない。
"前の学校に戻りたい"っていうのも、その一つです。知らないうちに、心はボロボロだったんですよ。
でもあなたはどうして"前の学校に戻りたい"と思うのかが分からなかった。……それが精神の不安定さに繋がる。心が受けてるダメージの量を把握できないから、
精神は不安定になる。
気づいてください。あなたの心はもうズタボロなんですよ。」
「……ずた、ぼろ……」
気が付かなかった。
凄いな、誠くんは。
あったばかりのダメな先輩のことがわかっちゃうんだ。
「……う……っ、」
「泣いていいんですよ。そのために涙はあるんです。」
「……ごめん……っ、ありがとう、誠くん……。」
後輩くんの腕の中は、どこかとても暖かかった。
その暖かさは、俺の心を癒していくように、じんわりと伝わった。
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