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【月みたいだ。】
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「綺麗だね。笑って。」
「……わ、笑う?」
彼は口に弧を描き、微笑んだ。
月明かりが彼を照らしていた。
怪しく見えた。綺麗だと笑う彼が、むしろ綺麗に見えた。
笑い方がわからなくなって、ぎこちない笑みを向ける。
結人はふふふっと笑うと、窓辺に近づいた。
「月みたいだよ。遥燈は。
このまん丸の月みたいに。
魅了する怪しい光と、誘い込む暖かさがある。
俺もそのうちの一人なのかもしれないな。」
「…なに、……なに、言ってんの?……俺馬鹿だからさ、よく分からなくて」
「好きだよ、遥燈。」
「……結人…。」
彼は泣いていた。
こんな告白、嬉しくない。
もっと笑ってほしい。
お前こそ笑えよ。笑って言えよ。
そんな言葉、かけられなかった。
今にも夜空に吸い込まれそうで、綺麗で……。
途端、怖くなった。
結人が素早い手つきで窓を開け、足をかける。
「待って、結人!!」
「……じゃあね、愛しの遥燈。」
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