アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
総受けのフラグ(3/13)
-
俺が小さくため息をつくと理事長が黒いカードを渡してきた。
何これ?クレジットカード?
手に取って首を傾けると、三橋が説明してくれた。
「部屋の鍵の役割とか。ほら、ホテルによくあるやつ。食堂でも使えるし。使うとき俺が教えてやるよ」
「さんきゅ」
持つべきものは友、とはこの事か。
「あ、荷物ちゃんと届きましたか?昨日急いで送ったんで」
ハッと思い出して問うと、理事長が曖昧な返事を返してきた。
「届いてると思うがなぁ……あ、ちなみにこの子とは同室だから仲良くしてやってくれ」
……黒マリモと同室?
何か…何か…何か……嫌だな。
「俺、そこの部屋に移動しよ」
「え」
どうした、三橋。
「だって、(西條と二人きりにすると真琴の貞操が危ないし、西條の変装してない姿見たいし、)真琴ともっと仲良くなりたいから」
三橋……。
副音声が聞こえた気がするが、胸がほっこりしたよ。
「まぁ、部屋は寮の管理人と話し合って決めてくれ。授業は今日から受けてもいい。もう始まっているが………あれ?そういえば三橋君は何故ここに」
「サボりです☆」
三橋……そんな堂々と言ったらダメだぞ。
そして理事長、気が付くの遅すぎだろ。
俺はため息をつくとゆっくりと腰をあげた。
「職員室に顔出して、担任がいたら挨拶して2時間目からでも授業受けます」
「じゃあ俺も」
三橋が俺に続くと、黒マリモも慌てて立ち上がる。
「待って、凪くん!私にサヨナラのキスを!」
「ちょ、やめてよおじさん!」
嫌よ嫌も好きなうちか。
黒マリモが嫌がってないように見えるのは気のせいだろうか。
俺は二人を横目で見ながらその場をあとにした。
職員室への道のりを三橋に案内してもらっている途中、思わぬ障害に出会った。
突然曲がり角から現れた人物に、ぶつかってしまい転びそうになる。
体に痛い衝撃がくるかと思って目をつぶると、ボスッとあたたかい何かに体が包まれた。
「わぉ。大胆だねぇ、君。襲われたいの?」
え?
耳元で囁かれた声にビクッとして目を開くと誰かの胸板が視界に入ってくる。
恐る恐る視線を上に向けると、素晴らしく顔が整った金髪のイケメンが目に映った。
えっと、状況整理。
落ちつけ俺。落ちつきたまえ。
まず、今俺はイケメンの胸に寄り掛かっている。
早く身をどかさなければ。…………ってえぇ!!?
俺の手が何故かイケメンのワイシャツの中にインしているではないか。
おかげで鎖骨から艶めかしい腹筋までもがあらわになっていて、ワイシャツのボタンは飛び散った形跡が残されている。
えっと、つまりだ、つまり。
転びそうになった俺をイケメンが支えた。
↓
俺はそのイケメンのワイシャツに引っついてしまった。
↓
その拍子にシャツの合わせに手を引っかけてしまい、イケメンの肌をあらわにさせた。
↓
初対面の人の制服を破損&男の制服をはいだ変態な俺。
「あっあ……っ、その…っ!へ、変態じゃありません!違うんです、わざとじゃないんです!ごめんなさい……っ!!」
「ふっ、顔真っ赤」
耳までじわっと熱さが広がると、その赤面した俺の顔を見て男が笑みをもらした。
「僕は脱がす専門だけど、脱がされたのは初めてだよ」
にっこりと嫌味を言ってくる男を前に、返す言葉が見つからない。
「そのっ、だから、わざとじゃな「知ってるよ?クスッ」
むかつくお。
この人、俺をからかってるのか?
「可愛いねぇ、君」
「ど こ が?」
「からかうと」
やっぱり、からかってやがるぞ。
イケメンの性格悪い率高いな、おい。
「にしても……どうしようかなぁ、この制服?」
「うっ……!」
掘り返されてまた顔が熱くなるのを感じた。
「弁償!弁償すればいいんでしょう!?」
「そんな投げやりにならないでよ。そーだな……君の体で払ってもらおうかな」
「は?俺の体?」
俺が呟くように疑問形で返すと、男は俺の髪に触れて口元に笑みを浮かべた。
「そんな真っ赤な顔してるの見るとムラムラするんだよねぇ。啼かせてみたいし。襲っちゃおうかな」
……。
ムラムラ=イライラ、なかせる=泣かせる、襲う=殴る?
俺の体+泣かせる+殴る=フルボッコ……だと?
しかもドSだ、この人。笑いながら言ってるじゃないか。
いやだかしかしここで逃げれば男が廃るではないか……よし。
「かかってこいやぁ!」
「え?」
「ごほっ」
俺がそういうとイケメンは拍子抜けといった表情を浮かべ、近くにいた三橋は咳込んだ。
「……君、何か勘違いしてない?」
「体格が小さいからってなめんなし。逆にフルボッコにしてやんよ」
「えぇ?……そっか……。あはは、君って無知なんだねぇ」
何かまた失礼な事言われた気がするぞ。
言い返そうと口を開くと、男と俺の間に三橋が割って入った。
「先輩、真琴に変なこと教えないで下さい」
「純粋っていいよね、調教する甲斐もありそうだし。……オトすには大変だと思うけど」
「誰にもさせませんから」
「君は?彼をオトす気があるんじゃないのかい?」
「なっ……!」
ピリピリした空気が二人の間を走ったと思いきや、急に三橋が顔を赤くする。
何?今の会話に顔赤くする要素があったの?
「君も可愛いね。代わりに襲っちゃおうかなぁ」
「げっ、勘弁して下さい」
げんなりした表情を浮かべる三橋とは対照に、男は微笑した。
「あはは、冗談だよ。真琴くんだっけ?今度レモンティーおごってね」
「はぁ……」
手を軽くひらひらさせて背を向けるイケメンをぼーっとしながら見送る。
嵐が去った感じだな。
ぼんやりそう思っていると、三橋がガシッと肩を掴んできた。
三橋は真面目な表情で俺を見つめると、口を開いた。
「お前はもう総受けになっている」
なんだその北○の拳の「お前はもう死んでいる」のパクリっぽいセリフは。
「だから、総受けって何?」
「なんで真琴ってある意味面倒な事に巻き込まれやすいのかな……」
それよく旦那に言われます。
何かごめんね。
「初日でこれか……俺、真琴の事守れるか心配になってきた」
「俺、大丈夫だよ?」
「どこがだよ。この際だからはっきりいうけど、ここは悪魔の巣窟なんだよ。モホってる奴が沢山いるんだ」
「モホ?」
「だから……ホモだって。この学校には同性愛者が沢山いるんだよ。真琴みたいにほわほわ浮いてる奴はすぐに目をつけられる」
ほわほわ?
なんだそれは。
俺の足はきちんと地面についてるぞ。
ていうか、同性愛ねぇ……。
「でも俺、普通に女の子が好きだし。恋愛感情は抱いた事ないけど」
「"ノンケ"な。けどノーマルでも相手の意思を確認せず平気で手を出してくる奴はいるんだよ。……あの副会長みたいに」
「あぁ……なるほど」
「だからさ。これ以上心配かけんなよ、頼むから……」
三橋が泣きそうな表情で訴えてくる。……さっき会ったばかりなのに、お前優しいな。
俺は三橋の背に腕を回しぽんぽんと叩いて軽く抱擁する。
すると三橋がビクッと反応して声をあげた。
「ちょ……ッ」
「何?」
「あ、あんまりそういう事すんなよ」
顔を上げると、三橋が顔を真っ赤にしていた。
「ゴメン、三橋って俺に触られんの嫌だもんな」
さっきソファーで寄り掛かったときも微妙な表情してたし。
「は?嫌じゃないから!俺いつそんなこと言った!?」
「違うの?」
「違う!その、恥ずか…じゃなくて、……くすぐったいから」
「そう。じゃ、あんまり触れないように気をつけるよ」
「ち、違っ!気をつけなくていいから」
……。
じゃあどうしろと?
ていうか、
「三橋、顔赤くない?」
「え?あ、暑いんだよ、真琴も暑くねぇ?」
……もう秋ですが?
何故か焦っている三橋の横顔を眺めていると、タッタッと後ろから走ってくる音が聞こえる。
振り向くと、黒マリモが息を切らして5m先に立っていた。
走って追いかけてきたんだな、きっと。
……ん?
「なんか黒マリモの制服はだけてない?三橋くん」
「鎖骨辺りにキスマークがありましたよ、真琴くん」
ノリありがとう。
……って、キスマーク…!?
「おそらく理事長でしょ。
あの人独身だし、モホってるし。
噂では学園のそこらじゅうに監視カメラつけてるらしいよ。トイレとか着脱室とか」
……それ、盗撮じゃね?
ほんと危険人物が多いな、この学校は。
寒気がして腕をさすりながら歩いていると、三橋が歩みを止めた。
「ここが職員室。しつれいしまーす」
「……失礼します」
三橋の後ろを追うため職員室の扉を後ろ手で閉めると「痛っ」という声と鈍い音がした。
……あ……。
「ごめん。大丈夫?」
扉に挟めてしまった黒マリモの手をナデナデすると、コクンと頷きが返ってきた。
喋れないってきつそうだな。
「やっぱりしつこくじゃなければ話しかけていいよ。さい……、さい、……何だっけ?」
「西條。何度も言うけど西條 凪だから!」
「真琴ー、担任いたよ」
声のした方を見ると、三橋が手を振っていたため、そこに歩み寄る。
担任か……ん?
何故か俺の前に椅子に腰かける、くすんだ黄土色の髪のホストがいるんだが。
しかもタバコ臭い。
「ホストじゃねぇよ。失礼なやつ」
「え?」
「真琴、また心の声漏れてるぞ」
おぉ……最悪な初対面になってしまったではないか。
ホストの鋭い視線が痛い。
「にしても、ホストという見た目のシナリオ沿い…やっぱり最高ですね、伊坂せんせ。
教師×生徒いいなぁ。早くそこら辺の生徒抱いて俺に萌えをくれ。あ、真琴以外でね」
「……てめぇ相変わらず意味分かんねぇ事いいやがって。しかもまんまとサボりやがったな」
三橋の意味わからない発言でホストの視線から逃れる事ができたが、機嫌が悪そうだ。
俺が眉をしかめていると、後ろにいた黒マリモがスッと前に出てきた。
「俺、西條 凪…、です。大崎と一緒に挨拶しにきたんだ…じゃなくて、来たんですけど」
相変わらず敬語下手くそだな。
ホストは三橋から黒マリモに目線を移すと、若干嫌そうな顔をした。
「かなり面倒そうな雰囲気放ってるな、お前。何で変装しているかは聞かないでやるがな」
ホストはそう言うと俺に視線を移した。
「お前は…………そんな眉間にシワ寄せてしけた面すんな。もっと笑え」
「ぶっ」
ホストの言葉に三橋がふいた。
三橋……お前のこと信じてたのに。
失礼だな。心の中じゃ、ニコニコと笑ってんだぞ。
ふんだ、いいもん。
この広い世の中だ、俺のしかめっ面が好きな物好きはきっといるさ。
「俺、大崎の気難しそうな表情、好きだよ」
案外近くにいたよ、物好き。
俺の中の黒マリモ好感度メーターがぐぐんと上がったのは言うまでもない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 63