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総受けのフラグ(5/13)
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「真琴、本当にゴメン。お願いだから許して……」
お前、結構律儀だな。
あれから授業と休み時間を何度も挟んだがずっと言ってくるぞ。
俺もう怒ってないのに。
「とっくの前に許してるし。で、次の時間は何の授業?」
「いや、午前の授業はもう終わり。昼休みだから飯食いにいこう」
……お腹空いてないなぁ。
お、黒マリモが小走りでこちらに向かってきてるぞ。
というかあの厚い瓶底メガネでちゃんと見えてんの?
あんな綺麗な目してんのに変装とか…もったいねぇの。
「…俺も、一緒についていっていい?」
「ついにきたぞ、食堂イベント。俺は真琴を守るから…西條、お前がひと暴れしろよ」
「は?」
三橋の言葉に黒マリモが首を傾げた。
今の黒マリモの気持ちがよく分かる。
三橋は時々よくわからないこと話すからなぁ……。
「じゃあいざ食堂へ!」
張り切ってるな、三橋。
でも、
「ちょっと待って。……俺電話したいんだけど、どっか静かな場所ない?」
……inトイレ。
まさか、静かな場所=トイレだとは……。
入口で待たせている二人のためにも、急いで電話をかける。
早く出てくれ、旦那。
「……真琴か?」
「は、はいそうですけど電話するの遅くなってすみま「遅ぇ。何もたもたしてんだテメェは」……はい」
やべえ、ものすごく機嫌悪いぞ。
ここは何か一つ浮いた話を……。
「そ、そうだ、今日俺パンチする機会あったんですけど、型が完璧だったんすよ。見せたかったです」
「……何で人殴る機会があるんだ。あぁ"?」
や、やばい、墓穴掘ったよ俺。
どうしようどうしようどうしよう。
「一体何があったんだよ」
「そ、それはその、あの、」
「嘘つくんじゃねぇぞ。正直に言え」
男にキスされたと?
男にキスされたと言えと言うのか?
そんな情けない事言ったら旦那に嫌われるじゃんか。
そんなの嫌だ。
「……それ本当か?」
「え?」
「キスされたって事が本当か聞いてんだよ」
「え、あの」
「聞こえてんだよ、テメェの独り言。いい加減気が付きやがれ。
それより俺の問いに答えろ……真琴」
名前を呼ばれてドキッとする。
俺は次に飛んでくるだろう怒声を覚悟して、相槌を打った。
「……うん」
ダンッとでっかい音が聞こえ、思わず耳から携帯を離す。
それでも旦那の怒声は俺の鼓膜を強く揺らした。
「何でテメェはいつもそうなんだ。フラフラしてっからそんな事になんだよ、このクソガキ!」
「……ッ、ごめんなさ「絶対ぶっ殺す…!許さねぇ」
こ、殺……!?
俺旦那に殺されちゃうのか!?
「テメェじゃねぇよ、してきた奴だ。俺のもんに勝手に手を出しやがって」
「そうですよね、旦那の下僕として俺失格です」
「そういう意味じゃねぇよこの馬鹿。大体お前いつ俺の下僕になったんだよ」
旦那はハァッと大きいため息をつくと、それきり話さなくなった。
静寂が続く。
……な、何か話した方がいいのか?
あ、そうだ。
「旦那、どうして学校の手続き勝手に済ませたんですか。じいちゃんのとこにも行ったって事ですよね。
何でわざわざ俺が見舞いに行かないときに顔を出しに行ったんですか?
俺そんなに頼りないんですか?
そんなに俺と一緒にいたくないんですか?」
質問責めになっちまったぞ。
特に最後のあたり私情すぎる質問だな。
「ちげぇよ。お前のじいさんには真剣に伝えたい事があって一人で病院に行ったんだよ。許可をもらいにな」
……許可?
ものすごく内容が気になる。
「許可って何の……?じいちゃんに何て言ったんですか?」
「真琴を俺にください」
「…………はあっ!?何言ってっげほげほっ」
「すんなり"いいよ"って言われたぞ」
待って、咳が止まらない。
あとじいちゃん、何すんなりオッケーしてるんだよ。
「な、何ですか、それ。……わかりました、こういう意味ですね。
俺に身寄りが亡くなっても、旦那が面倒見てくれるって事ですよね。
じいちゃんも旦那の事すごい信用してるし」
「そういう意味じゃねぇよ。お前よくそんな捩った考え方できるな。まぁ、面倒は見るが」
「じゃあどういう意味なんですか、一体。
俺を嫁に貰うわけでもあるまいし」
「あぁ、お前を嫁に貰ってやるよ」
「はぁっ!!?」
ちょっ、何だそれ。
大体俺男だし。
「俺だってですね、旦那と一緒のお墓に入りたい位の気持ちはありますよ?
それぐらい好きで尊敬してます。
けど旦那は将来可愛いお嫁さん貰ってその人と墓に入る事になるんですよ」
「俺は結婚しねぇ。嫁も貰わねぇ」
「旦那はかっこいいからすぐにいい人と会えますよ」
「結婚しねぇっつってんだろーが」
旦那の声色が曇ってきている。
何故だろう?
「何で結婚しないんですか?好きな人ができたら多分すぐしたい気持ちになると思いま「結婚したくてもできねぇんだよ…!」
キンと旦那の声が耳に響く。
「いくら好きでもこの国じゃできねぇんだよ、誰のせいだと思ってんだクソガキ。大体お前に俺の人生を指図される言われはねぇ」
な、何それ。
クソガキクソガキって。
こんなに怒ってる旦那初めてかもしれないけど……俺だって怒るときは怒るから。
気が付いたら、堰を切ったように口から怒声が飛びだしていた。
「だったら俺のする事にも口出さないでくださいよ!!
いつも自分のペースで俺の事を散々振り回して!
俺だって俺の人生があるんだから旦那にどうこう言われる筋合いなんかありません!!」
ブチッと勢いのまま電源ボタンを押す。
静寂に包まれ、冷静になったせいか一気に体温が下がるのを感じた。
「ばか……俺」
泣きてぇ。
完全な逆ギレじゃねぇか。
本当はあんな事全然思ってないのに。
旦那……。
「……真琴?」
声のした方を見ると、トイレの入口の方から三橋が顔を出していた。
「三橋……何?」
「怒鳴り声聞こえたから……何かあった?ケンカしたのか?」
視線を足元に落として軽く相槌を打つ。
すると三橋が近づいてきて俺の頭をポンポンと撫でてきた。
「早めに謝ったほうがいいぞ。
まぁとにかく飯だ。飯食って元気でたらゴメンって結構すんなり言えるもんだと思うぜ」
三橋……。
何度も言うけど、お前って本当にいい奴だな。
一緒にいると心地好い。
三橋と一緒にトイレから出ると黒マリモが俺に気が付き、にこっと笑いかけてきた。
「お前さ、……いや、なんでもない」
「え?何、大崎?教えろよ」
お前その変な変装とれば、きっとすごいかっこいいんだろうな。
とか思っただけだから。
昼休みになれば広い廊下も沢山の人並で狭く感じる。
ていうか食堂まで行くのにどれだけ距離あるんだよ。
「疲れた……」
「え?真琴体力ないな」
うるさいよ。
俺は運動神経良くないんだよ。
「まぁ最初はそうかもしれないけど慣れれば体力つくって。……ほら、あそこが食堂」
「はぁ」
食堂入るのになんでこんなでっかい扉開けなきゃいけないんだよ。
黒マリモは意外にも行動が早く、すぐにその扉を開けた。
……なんでこの学校ってムカつくほど全部が広いわけ?
テーブルが沢山あって上に高そうなシャンデリアとかあるぞ。
見てると何故か破壊衝動がわく。
まじ金持ち滅びやがれ。
「で、どうやったら食えんの?」
「それはこのタッチパネルで…二人ともカード持ってきてる?」
あぁ、あの理事長が渡してきたやつね。
「この機械にカードをいれて食いたいもんをタッチパネルで選んで押す。そしたら食券が出てくるから、それをあそこのカウンターに渡して料理貰える仕組み」
「え、金は?カードにデータ詰めこんで後払いとか?」
「うん」
まじか。
それならなるべく安いの選ばないとな。
三橋は先に自分のカードをいれるとハンバーグのボタンをピッと押した。
「真琴は何にすんの?」
「うーん…黒マリモは?」
無茶ぶりしてみた。
「西條だから!いい加減覚えてよ…」
そんな泣きそうな声で訴えるな。
頑張って覚えるから、えっと、さい…さい…
なんだっけ?
まあいいや、飯決めるのが先だ。
「安いのがいいな」
「ならここら辺とかのがいいんじゃね?」
三橋が指をさした辺りのところを見ると確かに安い。
…………よし、決めた。
「オムライスにしよ」
俺がオムライスのタッチパネルを押そうとしたときだった。
三橋の手が俺の腕をガシッと掴みそれを阻止する。
「な、何……?」
やべえ、三橋の面。
某漫画のマヨネーズ好きな副長並に目が死んでるんですけど。
なんでそんな怖い顔して怒ってんの?
三橋は俺を凝視したまま口を開き、ある一言を言い放った。
「オムライス却下。」
……えっ?
「なんでオムライスなんだ?何故そこまで王道にしようとするんだ、真琴。なんで総受けの道に進もうとする?
別にオムライスじゃなくていいだろ、それともなんだ?どうしても今ケチャップで混ぜたお米を卵に包んだものが食べたいというのか?そうなのか?他のものじゃダメなのか?」
「ちょっ、落ち、落ち着けよ、三橋…!」
お前ものすごく怖いよ。
そんな怖い顔してゆらりと近づいてくるな。
「わ、わかったから……!オムライスじゃなきゃいんだろ?ならうどんにでもするよ」
ピッとうどんのタッチパネルを押すと三橋の表情が打って変わり、にこやかになった。
「うん、俺真琴の事信じてたよ」
あれだけ強い圧力かけられたら従うまでなんだが…。
「じゃあ俺がオムライスにしよ」
「西條……!よくやった、これで少しお前にフラグが立ったぞ!」
三橋……お前すげー嬉しそうだな。
ていうかオムライス、なんで俺はダメで黒マリモはオッケーなんだよ?
ものすごく納得いかないぞ。
まぁ、いいや。
俺が今回の事で教わったことは「三橋を怒らせてはいけない」だな。
それはさておき、カウンターに食券を持っていくと、時間をかけずすぐにうどんを渡してくれた。
他のも作り置きにしてあるのかな、もしかして。
まぁとりあえず、
「ありがとうございます」て言ったら渡してくれた従業員の男の人がピシッと固まった。
え、何?
「あの、何か?」
「あ、いえ、お礼を言われたこと中々ないので……」
まじか。ふつー言うだろ。
お礼も言えないくらい腐った奴が沢山いるのか?
これだから金持ちの奴は。
あ、偏見持ってますごめんなさい。
俺が何故か頬が少し赤い従業員の人としばらくぼーっと目を合わせていると、横から三橋が自分の食券を叩き付けるように置いた。
「このフラグは回収できなかったか……!」
ふぉぉ!
また三橋が黒いオーラを放ってるではないか…!
お前ほんと怖いぞ。
ブラックみっちゃん降臨なう。
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