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総受けのフラグ(13/13)
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「よし、終わった」
「いい汗かいてるな」
額を拭う昴を見てフッと微笑む。
すると昴が目を少し見開いて顔を赤くした。
「反則だろ、その顔…」
「え?」
俺が眉をひそめて聞き返そうとすると、人気を背後に感じた。
振り向くと、濡れた髪をタオルでふく西條がこちらを見下ろしている。
「大崎も入りなよ。さっぱりするから」
「え?あ、うん」
「待て。俺が先に入る」
昴はそう言うと洗面所に足を進める。
「チッ、何で三橋が…っ」
「お前が入ったあとに真琴を入れさせられるかよ」
「いや、別に俺は」
「真琴は黙ってろ。これは俺達、男の問題だ」
昴……俺も男だからできれば話にまぜてほしい。
昴が洗面所に入りドアを閉じると、西條が子犬のようにパタパタと近づいてくる。
「大崎、床拭いてくれてありがとう」
「俺じゃねぇよ、やったのは昴」
「え」
何でそこで微妙な表情をするんだ。
ていうか、
「早くドライヤーで髪乾かせよ」
「めんどくさいし持ってきてない」
「風邪ひくだろバカ。バカでも風邪ひくときはひくし。俺のドライヤー貸すから」
「いやだ。別に風邪ひいてもいいもん」
「何が“いいもん“だ、その体はお前だけのもんじゃねぇだろ。お前の変態おじさんも心配するだろうし」
俺がため息をつくと、西條がジッと見つめてくる。
「お、大崎も心配してくれる…?」
「あ?そうだな」
もちろんその心配もあるが、お前が風邪ひくと同室の俺も風邪ひくかもしれないし。
俺がそんなブラックな本音を心の中でつぶやいていると、西條がキラキラした目でこちらを見つめてきた。
「大崎……」
「まぁ、そう言う事だからドライヤーで乾かせ」
「えー…」
何渋ってるんだよ。仕方ないなぁ。
「俺が乾かしてやるから。お前は黙って座ってろ」
俺がそう言うと、西條が顔を真っ赤にして縋り付いてくる。
「ほ、ほんと…!?」
「嘘言うかよ。ていうか離れろ。とりあえず俺の部屋に来て」
ドライヤーをかけるために椅子に座らせると
何故か西條が鼻をくんくんとさせる。
……何?
「匂うのか?臭い?」
「いいや、違うから…!いい匂い…真琴の匂いがする」
え、俺そんな特徴的な匂いする?
まだこの部屋に滞在してとても短いが…。
首を傾げながらドライヤーにスイッチをいれて西條の髪を乾かしはじめる。
「熱かったら言って」
「ん…、気持ちいい」
それはよかった。でも何かなぁ…。
金髪を乾かすことに集中している内に、俺の中の疑問がむくむくと膨れ上がってきた。
何で俺…今日会ったばかりの奴の髪を乾かしてるんだろう。
昨日までの俺だと絶対考えられないことしてるよな。
もしかして…俺、変わってきてる?こんな短時間で?
みんなキャラが濃すぎるんだよ。どしどし踏みこんできて。
あまり俺に関わってこないでほしい。
…でもこんな騒がしくてうるさい非日常がなくなる事を考えたら、何故か少し寂しい気持ちになる。
どうしてだろう。
失ったときの寂しさが怖いからか?
俺が今まで他人と距離を置こうとしてたのもそれが怖いから?
「……大崎?」
「あ、悪い。手ぇ止まってた」
「別にいいよ。大崎に乾かしてもらえるだけで嬉しい」
西條はそう言うとにこにこ笑う。
「そうか……。…ありがとな、西條」
「え、何が?」
それに昴も。
俺は大事な事に気がつけたのかもしれない。
“人との関わり方は狭く深く“なんて上手い理由かこつけて目を逸らしてただけじゃねぇか。
すっげぇカッコ悪。
「なぁ大崎、何のありがとうなんだよ」
「は?俺そんな事言ったか?勘違いじゃねぇの」
「いや、言ったよね!?」
「さぁ」
少しずつでも進歩していけたらいいな。
旦那が言ってた通り、俺は裏切られるというトラウマに捕われてたのかもしれない。
女々しすぎるぞ、俺。
目指せ、男前…!
にしても……そこまで俺の事を見通してる旦那って、本当にすごいな。
俺もあんな視野の広い人間になりたい。
また千尋さんに惹かれている自分がいた。
髪を乾かし終わり、ドライヤーのスイッチを切ると西條が立ち上がって振り向く。
「ありがとう、大崎。これからも毎日やってほし「断る。小さい子供じゃないんだから自分でやれよ」
顔を赤くしてふざけた事を言う西條の背をぐいぐい押しやり、自分の個室から追いだす。
すると丁度風呂から上がったのか、洗面所から昴が出てきた。
「真琴、部屋からドライヤー持ってくるの面倒だから貸して」
「ん」
ドライヤーを昴に渡すと、それを見た西條が昴に耳打ちする。
「……は!?何だよそれ…!」
「うらやましいだろ」
おまいら何の話をしてるんだ。
ジッと二人を見つめていると、昴が急に振り向いて口を開いた。
「西條だけずるい。俺の髪も乾かして」
「ブルー○ゥスじゃなくて、昴…お前もか」
勘弁してくれ。
俺は風呂に入るぞ。
とりあえず無視して着替えを持ち、洗面所に入る。
すると昴がとことこついてきて、しゅんとした様子で見つめてきた。
「真琴……」
ぐ、そんな顔するな。
自分が悪い事してる気分になる。
…仕方ない。
「あー…明日。明日乾かしてやるから」
「真琴……!」
昴は嬉しそうな顔をすると、洗面所のコンセントにドライヤーのプラグを差し込む。
そして鼻歌を歌いながら髪を乾かしはじめた。
ずいぶんご機嫌だな…。
俺は鏡越しの昴の表情を見て安堵し、ズボンのベルトの尾錠をカチャカチャと鳴らして外す。
そしてそのままズボンを重力に任せて下ろし、ワイシャツに手をかけると昴が突然声を上げた。
「な、なっ、な……!」
「?」
何なんだよ一体。
「な、何で目の前で脱いでんだよ……!」
「何でって…風呂入るし、ここが洗面所だし」
「そういう問題じゃねぇよ…!俺が…困る」
昴はそういうと真っ赤に染まった顔で俯く。
困る?……あ、そういう事か。
「他人に見せられねぇほど貧相で下品な体ではないと思ってたんだけど…ごめんな、昴」
顔赤くするまで怒ってるんだから、見てられないほど気持ち悪かったんだろうな。
べ…、別に傷ついてなんか…ないし。
「な、そういう意味じゃないから…!」
「え?じゃあ何?」
昴が切羽詰まった表情で腕を掴んできたため、若干驚きながら聞き返す。
「そ、それはその……、」
昴の目が泳ぎ、かなり複雑な表情になっている。いや、無理してごまかさなくていいぞ。
嫌なもんは嫌って言っていいから。
お前は優しいからはっきり言えないんだろうな……。
「昴、目ぇ閉じてて。すぐ脱ぎ終わるから」
あとパンツとワイシャツ脱ぐだけだし。
昴はハッとした表情をするとまた顔を赤くする。
「誰もが一度は見てみたいワイシャツ一枚着萌えじゃないか…」
「は?」
何意味分からない事言ってんだ。
とりあえず昴に早く目を閉じさせて服を脱ぎ、さっさと浴槽に入る。
全く、風呂に入るまでの道のりが何故こうも長いんだよ。
仕切りのカーテンをし、髪やら体やらごしごし洗っているとドライヤーの音が止まってドアを閉じる音が聞こえた。
昴くん退室か。
「……はぁ」
大きなため息をつき、シャワーで泡を洗い流す。心も体も今日は疲れすぎた。
早く夕飯食って寝よう。
カップ麺でも食うか。
そんな事を考えながら浴槽から出て、バスタオルで体を拭く。
……ん?
何か…人の気配を感 じ る ん だ が。
幽霊?いやまさかまさか。
パンツを履いてそんな考えを振り払うようにがしがしと髪を拭く。
すると、その気配の正体に途中で気がついた。
少し開かれた扉の隙間から…二つの目がこちらを凝視している……。
何かホラーみたいだな。
正確に言えば昴と西條がこそこそと隙間からこちらを見ている。
……覗き?
いやいや、ありえないな。
俺が女だったら有り得る話かもしれないが、実際は男で貧相な体してるし。
じゃあ洗面所に置き忘れた何かを取りにきたとか…?
まぁ、何でもいい。
何かこそこそされると嫌な気持ちになる。
だからギロッと扉の隙間を睨んで言葉を発した。
「何?何か用?」
俺がそう言うと二人が慌てて顔を出してきた。
「べ、別に大崎の入浴シーンを覗きにきたわけじゃないから」
「俺は西條を止めようとして…っ」
「は?三橋も見てただろ、大崎の体」
「ば…っ、ちげーよ!」
顔を真っ赤にしてわいわい言い出す二人。
とりあえず相手にする気力がなくて、
そのまま扉を閉めてみた。
服を全部着て髪を乾かしている間も扉越しに響いてくる二人の声。
お前ら本当に元気だな。
うらやましいよ。
髪を乾かした後、ため息をつきながら洗面所の扉を開くと二人がパッとこちらを見る。
まず話をそらすか。
「お腹すいた」
「一階に購買あるぜ。買いに行くか?」
「いや、カップ麺食う」
「え、なら俺もカップ麺食う。
真琴、ちょうだい」
「仕方ないな」
旦那から貰った大量のカップ麺を昴に選ばせる。
すると西條がひょこっと近づいてきた。
「お、大崎、俺も…」
「お前はだめ」
「……!」
西條はショックを受けた表情をするが、簡単には食い下がらない。
「明日の昼代、奢るから…」
「分かった。早く選べよ」
小さいキッチンで湯を沸かしながら承諾する。
明日の昼、豪華な飯を頼もう。
別に金額については西條何も言ってないし。
……貧乏人はさ、黒いんだよ…西條。
カップ麺を食べた後は何故か三人一緒に並んで歯磨きをし(狭苦しかった)、居間で備え付けのテレビを見てごろごろした。
眠気に誘われる時間になった頃、あくびをしてゆっくり立ち上がる。
「俺、寝るから」
そう言うと、西條がもじもじとしはじめる。
「俺の布団、まだ届いてないんだけど…」
つまりはお前、何が言いたい?
「明日届くまで…大崎、お前の布団で一緒に寝たらだめ…?」
「は!?」
お前何言ってんだ、あぁ?
今危うく目玉がポーンと出そうになったぞ。
「お願い、大崎。今日だけ…!」
「……」
野郎と一緒かよ……チッ、でも仕方ないか。
「俺の睡眠の妨害はするなよ」
「大崎…!」
「あ、抱きついてくると俺の布団で寝させねぇから」
俺がそう言うと西條は大人しくなったが、代わりに昴が声を上げた。
「こいつと二人きり…!?そんなのだめに決まってんだろ!」
「三橋には関係ないだろ」
「関係ある。絶対お前手ぇ出すだろうが」
「手を出すのは男として当然だし」
「開き直るな!やっぱり手ぇ出すんじゃねぇか」
あーもう、うるさいうるさい
どうしろって言うんだよ、全く。
二人の言い合いに口を出す気力が無くて、流れに身を任せる事にした。
……で、ど う し て こ う な っ た。
今?俺の布団で三人一緒に寝てます。
何で野郎と川の字になって寝る事に…。
狭苦しいんだけど。
眠りたくても眠れない。
…の割に二人とも寝つくの早いし。
すやすやと安眠する二人を見て少しだけ殺気がわく。
左側に寝る昴はまだいい。
寝相は悪くないし、気持ち良さそうな顔をして寝ている。
右側の西條ときたら、俺の上着に右手をいれながら寝ている。
もう…色々勘弁してくれ。
とりあえず絶対に一睡も出来なそうだから、脱出を試みた。
二人を起こさないようにそろそろと布団から出る。
何で俺がこいつらを起こさないように気を使わなきゃならないんだよ…。
西條寝相悪すぎ。
布団から出てる足をぐいぐい押して無理矢理入れ込む。
む、昴のお腹が出てるぞ。
勝手に失礼して昴のめくれた服を元に戻す。
ていうか、俺も俺で何でこいつらに優しくしてるんだし。
「もうやだ……」
俺はため息をつくと予備の掛けぶとんを持って個室から出ていく。
居間にソファーがあるから、狭いけどそこで寝よう。
……本当に調子狂う。
常識ない奴ばっかりで。
けど、昴達みたいな奴は嫌いじゃない。
他人の気持ちを踏みにじるような…そうそう、
バ会長とか?ハラゲーロとか?
あいつら地球人ですか。
ああいう奴ら大嫌い。
俺…男としての大事なものを失ってしまったな…。
若干しょぼくれながら目を閉じて睡眠体制を整える。
明日はなるべく平穏に過ごせますように。
「……おやすみ」
誰に言ってんだ、俺。
寂しいやつだな。一人ツッコミも悲しすぎる。
「どわあああああっ!!?」
「……!」
何だ、今の叫び声は。
というか、あれ?
もう朝ですか?全然眠った感じしないんだけど…!
「な、何で三橋が…!大崎だと思って抱き着いてたのに!」
「うげ、西條の温もり……テラ気持ち悪い…。何で俺に抱き着いてくるんだよ!?」
「大崎だと思ってたんだってば。つか大崎はどこ!?」
俺の個室からギャーギャーと騒ぐ二人の声が聞こえてくる。
朝からうるさいなぁ、お前達。
その元気俺に分けてくれ。
ソファーから起き上がりのそのそと声のする方へ歩いていった。
……あまり気持ちが良い目覚めではないはずなのに、何故か嫌な気持ちにならない。
俺はわずかに口元を緩めるとドアノブに手をかける。
そして、あまり口にする事ができなかった言葉を二人に向けて発した。
「……おはよう」
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