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イジメって何?(7/14)
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濡れた衣類をハンガーにかけて干す。
個室には二人が入ってこないようにカギをかけておいた。
布団に寝転がり、今日1日を振り返る。
今日も1日が長く感じた。
長沢の事は解決して本当良かった。
もう俺のせいであいつが泣くことはないんだよな……?
今はあの事が一番に心を占めている。
真知先輩の告白……。
何で俺を……普通の男子校生って感じの俺を好きになったんだ?
不思議と告白された後も気まずくない……けど応える気がないのに、今までみたいに話しかけていいものなのか?
恋愛感情って、よくわからない。
「…………あれ?」
いつの間にか寝っちゃってた…!?
時計を見ると、朝の5時を過ぎた頃だった。
二度寝……俺、できない体質なんだよな。
そこら辺ぶらぶらしてくるか。
制服に着替えて、居間で寝ている昴を起こさないようにそっと部屋を出る。
学校へ行ってみたら鍵は開いているけど、人気はもちろんなかった。
が、中庭へ足を進めると、人影があったため、こそっと覗き見る。
「……!」
あいつ……副会長じゃないか。
一人で何やってるんだ?
そろそろと近づいていくと、何をしていたのかが分かった……植物の水やりだ。
スプリンクラーを持ち、微笑を浮かべて中庭の植物たちに水やりをする副会長。
……可愛い面もあるんだな。
「……ふっ」
思わずふいてしまうと、副会長がこちらをキッと睨んでくる。
「…!誰ですか!?そこの草むらに隠れている方は…!」
「……!」
やべ…。
こっそり逃げようとすると、シャアアと冷たい何かが頭にかかってきた。
「冷たっ…!」
「…!貴方は…」
振り向くとスプリンクラーで水をかけてきた副会長が驚いた表情で立っていた。
「…えと…いい朝ですね」
テキトーにごまかそうとすると、副会長が近づいてきて俺の肩をガシッとつかんでくる。
「私がここで水やりをしていたなんてこと、絶対誰にもしゃべってはいけませんよ…!」
「え、何で?」
「べ、別に…っ、あなたには関係ないでしょう!」
副会長は顔を赤くしながらそう言い放つ。
恥ずかしいのか?
「いいことしてるんだから恥ずかしがらなくていいのでは…」
「とにかく絶対です!わかりましたか…!?」
「は、はぁ…」
疑問を感じながらも小さく頷くと、副会長がやっと肩から手を離してくれた。
沈黙が生まれ、気まずくなったからその場を去ろうとする。
「…じゃあ、俺はこれで」
「ま、待ってください!」
何ですか、ツンデレさん。
副会長は何度も何かを言いかけようとするが、口を紡いでしまう。
この人何が言いたいんだろう?
眉間に皺を寄せてじっと見つめていると、俯いていた副会長がぽつりとつぶやいた。
「……すみません」
「え?」
「この間は……初対面にも関わらずむりやりキスをしてしまい…すみませんでした」
副会長は目をそらしたまま、謝罪を口にする。
その顔は恥ずかしさからなのか、真っ赤に染まっていた。
「……副会長…」
謝ったことに俺が驚いて目を見開いていると、副会長が俺の顔を見てわたわたし始めた。
「な、何ですかその"夢でも見ているんじゃないか"みたいな表情は。非常に間抜けな顔ですね…!」
「…もともとこういう顔ですから。ていうか、よく俺の考えてることわかりましたね」
「失礼な方だ…!それにですね、あなたが真知にチクったせいで屈辱的な目にあったんですよ」
あぁ……真知先輩、本当にヤり殺したんだ?
昨日の昴の漫画みたいなことを強制的にやられたのか……う…っ、おぼろろろおえぇ。
想像したら胃がムカムカしてきた。
「ちょっと、私の話聞いているんですか!?」
「…え?あぁ、聞いてないです。どうせくだらない戯言だろうし」
「な…っ」
「無理やりヤられて屈辱的だったんでしょう?俺も先輩にキスされたときそんな気分だったんです。
自分がされたら嫌な事、他人にもしないでください」
「……、深く反省しています。許していただけますか…?」
「え?もうさっきの"すみません"の時点で許してますけど」
「もう、あなたって人は……!」
その後も副会長をあしらい、十分に鬱憤を晴らす。それから中庭の手入れを手伝ってみた。
「あ…!大崎くん、その花には水をやりすぎないで下さい!」
「は、はぁ」
「根元にかけて下さい。あなた雑すぎます。B型でしょうね、きっと」
「……」
手伝ってるはずが邪魔してる感じになってる。
つか副会長はやることなすこと細かい。
あなた几帳面すぎます。A型でしょうね、きっと。
って言い返したい。
「……てか植物たちにそんなに気をつかえるなら、人間にもそうすればいいのに」
「人間は思い通りにはなりませんし、規則性が無く理解してもらえることが少ないので苦手なんです」
「……」
まぁ……確かにそうだよなぁ。
この学校に来てから思い通りにならないことがありすぎるし。
「でも、他人の価値観に触れ合うことで自分の世界って広がるものじゃないですか」
「これでも昔に比べると広がったほうなんです。なのでもう充分ですよ」
「……でも他人を受け入れないと、いつまで経っても自分のことなんて理解してもらえるはずがない。向き合えばもっと分かってもらえるんじゃないですか?」
「……別に理解していただかなくても結構です」
「何変な意地張っているんですか…」
「張っていません…!」
「いや、どう見ても張ってるし。イケメン台無しの顔になってますけど」
素直じゃない人だな。
せっかくいいことしていても、それを隠してツンツンして……ツンデレめ。
「…まぁ、気楽にやればいいんじゃないですか。なんなら俺でもいいし。いつでも副会長と向きあう準備おっけーです」
「…あなたがですか……?フン、つりあいませんね」
「知 っ て ま す。そんなこと」
「まぁ……、千歩…いえ、一万歩譲ってあなたと向き合ってあげましょう。特別ですからね?深く感謝してくださいよ」
うわぁ……がちでツンデレだ。
顔が真っ赤だし。
"すごく嬉しい…!"みたいな表情、全然隠せてないですよ。
本当に素直じゃない人だな。
まぁ…、とりあえずのっておいてあげますか。
「ありがとうございます、先輩」
「感謝が足りませんね」
「……調子のるなよ」
ふかふかの土の上にいたミミズに失礼し、ひょいっとつまんで副会長の方へ放り投げる。
すると小さな悲鳴が返ってきた。
ざまあみろ。
何故だろう、イケメンが苦しむ表情を見るとすがすがしい気分になるのは。
これって立派なひがみですかね。
「ミミズを投げつける暇があるならきちんと手入れしてください、大崎くん!」
「あいさー…」
がみがみと怒る副会長に対して、テキトーに相づちをうつ。
すると呆れたとでも言うように、大きなため息が返ってきた。
「やる気のない返事ですね。いいですか?土も大事なんですよ」
しゃがんで花壇の土をいじる副会長の手元を見ようと、上から身を乗り出す。
すると副会長が急に振り向いたため、危うく顔同士が接触しそうになった。
うぉ…、近ぇ…っ!
副会長もあまりの近距離に驚いた顔をしている。
「す、すんません」
急いで身を引こうとすると、副会長が手を伸ばして俺の顎を掴んできた。
「え…っ」
「気を抜きすぎです…そのような状態ですといつ襲われてもおかしくありませんよ。気をつけてください」
「……だって先輩、嫌がることを無理やりしないって、俺と約束したじゃないですか。だから気を抜いてもいいかな…って。
信じちゃダメなんですか?先輩のこと」
軽く首を傾げながら副会長のことをじっと見つめる。
すると先輩が急に顔を真っ赤に染めてふいっとそっぽを向いた。
「あなたって人は…」
「え?何ですか」
「何でもありません…!信じるなら勝手に信じればいいじゃないですか」
またツンツンしてるし……。
「……じゃあ信じない」
「な…っ」
「嘘です、信じます。今日話していて副会長の印象が変わりました。
俺の中で"ハラゲーロ"から"先輩"に昇格しておきますね」
「真琴くん…ありがとうございま…って、何が昇格ですか!?ただ元からいるべき位置に戻っただけじゃないですか!」
「あ、先輩って一応ノリツッコミできるんですね。あまり上手くないですけど」
「…っ、あなたは的確に人をツッコミすぎです!人をからかって楽しいですか!?」
「楽しいときは楽しいですよね」
「……ッ」
何か副会長って扱いやすいな。
ふんふん鼻歌を歌いながら水を振りまく。
すると副会長が俺の肩をガシッと掴み、顔を近づけてきた。
「…フフ、何故か俄然と燃えてきました」
「貴方の鼻をへし折ってやりたいくらいにムカつきますが、非常に惹かれている自分がいます。
これも貴方の魅力なのでしょうか?」
「は?てか顔近いですモホ先輩。逆に今あんたの鼻をへし折ってやろうか」
「その小さい体に傲慢な態度……。非常に可愛らしいと思います」
誰がチビだし…ムカつく。
「そう思ってしまう私の目がおかしいのでしょうか…」
「うん、それ病気。早く眼科に逝った方がいいです」
「けどそれは違うと思うんです。普通に普通の顔だちにも関わらず、貴方が憎らしいほど愛しく思えてしまう。
今すぐにでもその緩みきった唇を奪いたいです」
「……」
もうツッコミを口にする気力もわかない。
そんな告白じみたことを言われてどう反応すればいいんですか。
てか普通って二回も言う必要ないよな。
「それでたった今、私の中で結論が出ました。
私は……大崎くんに惚れたんです。貴方に恋をしました」
「……」
告白じみたじゃなくて、完全なる告白をされちゃったよ。
それきっと恋じゃなくて一時の気の迷いだと思う。
「貴方のそのひきまくってげんなりした表情も好きです。ですが、いつかは私がほしくてたまらないと思わせてみたい」
「いや、絶対にそんな日は来ないし」
「着衣を乱して眉をひそめたまま、ほんのりと頬を朱に染めて"…勝手に襲えばいいし"なんて言う大崎くんが見てみたいです」
「…………おえっ」
逃げたい。この場を逃げ出したい。
てかそれどういう趣味してるんだよ。
ツンデレの人がツンデレを見たいってどういう事ですか。
「……大崎くん」
「今度は何ですか」
「どうして貴方は告白をされているにも関わらず、そんなに冷静なのですか…?」
「どうしてって……」
俺がモホじゃないからですけど?とりあえずこの場を去ろうと、副会長に軽くお辞儀する。
「とりあえず、ごめんなさい。それではまた会う機会に」
「ま、待ってください…!」
「ぐえっ」
後ろから襟元を掴まれ、首が締め付けられた。
危ないなぁ、おい。
「生徒会室に寄ってお茶でもしていきませんか」
「断ります」
「朝食つきで…!パンとかもご用意しますから!」
「……」
朝食……だと?
それは惹かれる。
でもなぁ……。
「…会長とかに会いたくないですし」
キスされた事はもちろん、長沢の出来事もあわせて、会ったら殴りかかってしまいそうだ。
「大丈夫ですよ。この時間帯ですと、優と真知しか来ませんから」
「…はぁ…」
真知先輩か……あの人にもなるべく会いたくないな。
何故か話してると負けた気分になるし。
ま、いっか…。
「朝飯食わせてもらったらすぐ出ていきます」
「…!来てくださるんですね!?それでは早速!」
「げっ」
手をガシッと掴まれたから、パシッと叩いて振り払う。
そしてしょんぼりとうなだれる副会長の後ろをついていった。
「……広…っ」
イン生徒会室なう。
生徒にこれだけの部屋を与える必要あるのか?
こんなにお金あるなら募金しろ、募金。
「大崎くん、そんなとこに突っ立っていないでソファーに座っていてください」
「え?あ、はい」
ふかふかのソファーに腰掛け、部屋をきょろきょろと見渡す。
すると副会長が湯気の立つティーカップをローテーブルの上に置いた。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
多分高い紅茶なのかな?
貧乏人の俺には味の違いとやらはわからないけど。
その後に焼いた食パンをいただいたけど、柔らかくておいしかった。
「ふふ、可愛いですね、大崎くんは。ハムスターみたいです」
「……むぐ…っ」
顔をあげると、テーブルを挟んで向かい側のソファーに副会長が座り、こちらを見ていた。
人が食べてる姿見るなし。食べにくい。
口がパンでうまっていたため、ギロッと睨みつける。
「あぁ、怒らないでください。もっと食べますか?」
副会長の言葉にこくんと頷く。
だってタダだし。
もきゅもきゅとパンを口に詰め込んでいると、生徒会室の重い扉が音を立てて開いた。
む……、噂の真知先輩達か?
ちらっとそちらを見ると、真知先輩とワンコ先輩が驚いた表情で見つめ返してきた。
「わぁ…、真琴くんじゃないか。どうしてここにいるんだい?」
「…ど…して」
説明するのが面倒くさいため、視線で副会長に訴える。
すると副会長が手短に説明してくれた。
「……何、それ。ほんと真琴くんってタラシだなぁ。まさか千鶴に告白されたんじゃないだろうね?」
「……、千鶴?」
パンを飲み込んでから真知先輩に聞き返す。
「あぁ、君の目の前に座っているできそこないのバカだよ」
「……」
副会長のことね。
本人、できそこないとか言われて酷く傷ついた顔してますよ。
…ていうか、よく告白された事わかったなぁ。
「……何、その顔。されたんだ?へぇ」
真知先輩はスッと目を細めると副会長に近づいていき、ネクタイを掴んで首をギリギリと締め付け始めた。
「ま……真…知、止めて…くださっ」
「君、若干M要素あるからこっちのほうがお似合いだよ。もっといい声出してみなよ」
「く、苦し…っ」
見て見ぬふりしよう。
俺が知りたくない世界の雰囲気を感じたし。
目の前の惨状から目をそらしていると、隣にワンコ先輩が腰掛けてきた。
「……お…はよ…」
「……!おはようございます、先輩」
相変わらずふんわりとした雰囲気を持っているではないか。
あぁ、癒やされる。
そう思っていた矢先、ドサッと右隣に誰かが座ってきた。
「遅れたけどおはよう、真琴くん」
「ひ…っ」
真知先輩がいつの間にか戦いを終え、にっこりと微笑んできている。
副会ちょ…っ、……、………モザイクかけておこう。
「僕には挨拶なし?酷いなぁ」
「お、はようございます……」
ボソボソ返すと、先輩がフッと笑って親指で俺の唇に触れてきた。
「真琴くんって、どーていだよね」
「……っ!何を…っ」
「誰かと付き合った事も、好きになった事もないのかい?」
「……それがなんですか」
こみ上げる恥ずかしさと苛立ちを何とか抑えて答える。
すると真知先輩が顔を近づけて耳元で囁いてきた。
「おかしいなぁ。ならどうして千鶴とのキスがファーストキスじゃないのかな。
…君は誰と初めてキスをしたの?」
「……!」
ドキリ、と自分の心臓が波打つのを感じた。
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