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イジメって何?(13/14)
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「──真琴!」
「……はい!何ですか…っ」
「何ですか、じゃねぇーよ。俺を無視するとはいい度胸だな」
「あ、す…すみません、違うんです…!いや、違わないけど…」
「意味分かんねぇ事ぬかすな」
「…すみません」
旦那の声を聞いてデレデレしていたなんて言えない。
「……いちいち謝るな」
「え?あ、すみま……いや、……うん」
「…一人で何納得してんだよ」
電話越しの千尋さんはそう言うと、ふーっと息を吐く。
……もしかしてタバコ吸ってるのかな?
やっぱりなるべく吸ってほしくないなぁ。
「……まだそう思ってるのか?ならやめてやるよ」
「え!?テレパシ「お前、心の声が口から漏れてんだよ」…はい」
「……真琴がそうしてほしいなら止める」
「いや、前みたいに周りに影響が出るのは避けたいんで……無理しないでください…」
「……」
「……」
……何なんだ?この気まずい雰囲気と無言。
な、何か話したほうが…いいよな?
「あの「真琴」…はい」
出鼻くじかれたお。
「何ですか」
「…どっか行きたいところあるか?」
「はい…?」
「土曜。迎えに行く。好きなところに連れてってやるよ」
「………デートですか?」
冗談で口にしたら、千尋さんがごほっと咳込む。
え、そんな驚く?俺の勝手な予想で、男前な旦那は「そうだな」とか言ってスルーすると思っていた。
「…大丈夫ですか?」
「てめぇ……」
「す、すみません調子乗りました。気持ち悪いこと言ってごめんなさい」
「気持ち悪くねぇよ。デートでも何でもいいから早く質問に答えろ」
「…別に行きたいとこなんかないです」
「あぁ"?」
やばい、怒ってらっしゃる。
旦那の機嫌が……何とかしないと。
「お…俺は旦那と一緒に居れたら、どこに行っても楽しいです!」
「………、何言ってんだお前」
旦那はそう言うと小さなため息をつく。
もしや…呆れてる?
おろおろしながら旦那の言葉を待っていると、ぼそっと何かを呟いたのが聞こえた。
「……この天然タラシが」
「え?」
「何でもねぇよ」
……何でもないって言われると、何故か余計気になっちゃうよね。
「…真琴、今日の出来事を簡潔に話せ。
どうでもいい内容は省け」
今日…?別にたいしたことは……あ。あったぞ、そういえば。
「告白されました」
「……あ?」
「今日…だけではないけど、その……二人の先輩から…」
「…ふざけんな」
旦那が唸るような低い声で悪態をつく。
そしてダンッと鈍い物音が携帯から聞こえた。
やばい、怒ってるどころの話じゃないな。……キレてる。
「すみません、でも女々しい態度とってるわけじゃないんです…!すぐに断ったし、その…っ」
「それは当たり前だろ」
千尋さんはそう言うと大きな舌打ちをする。
「行かせるんじゃなかったな、その高校に。クソ…っ」
旦那は何故こんなに怒るんだろう。
保護者的に心配…だから?
でもそれと引き換えに、新しい自分を発見できたし、人として少しは前進したと思ってる。
……変わった俺の事、旦那はどう思ってるのかな?
「…おい」
「は、はい!」
「ジム行くぞ……土曜」
「……え?」
旦那の発言に、思わず聞き返してしまう。
ジム…?いきなり何で?
「俺がいねぇときは、お前が自分の身を守らなきゃならねぇだろ。…他の奴にヤらせてたまるか」
「え、えっと…?」
「襲われたときの対処法を本格的にみっちり叩きこんでやる。…覚悟しとけ、真琴」
「ひ…っ」
やだ。嫌だ。
身を守るための方法は、前にも教えてもらったことはあるし、ジムに連れていかれた事も何度もある…………けど、正直な話かなりしんどい。
千尋さん、こういう類いのものについては容赦ないし。
せっかくの休みに疲れること、したくない…。
「……あと」
え…?まだ何かあるんですか。
胸が苦しいよ。
「何ですか…?」
「俺のとこに泊まっていけ」
「……えっ、ちょ…っ」
「日曜日もあるからいいだろーが」
「で、でも迷惑かけちゃうし」
「今更んな事言うんじゃねぇよ。飽きるほど泊まったことがあるだろうが」
「そ…そうですけど」
だって、旦那のとこに泊まると…………不思議な現象が起こるんだよね…心霊現象並の。
「文句は言わせねぇ」
「…はい…」
絶対に逆らうまい。
……言いたい事はまだ沢山あったが、二言ほど言葉を交わして電話を切る。
あ……っ、監視(盗撮)カメラのこと言うの忘れてた。
何のために電話をかけたんだよ、俺。
とぼとぼと廊下を歩き、図書室に入る。
自分の座っていた席に戻ろうとすると、俺の席にしょぼんとした様子の西條……じゃないな、凪が座っていた。
「おい」
「……!真琴…酷い」
「何が?」
「真琴の動画を消すなんて……」
「……」
何だ、まだそんなことで落ち込んでいたのか。
ガキじゃないんだからいい加減しゃきっとしろよ。……てか、
「何でお前が俺にそこまで執着してんのか分からねぇけど……真面目に。
どうせなら動画見ないで本当の俺を見たら?今お前の目の前にいるし」
「あ、そっか!生の真琴のほうがいい」
「…お前、バカだろ」
やれやれ、とため息をついて近くの席に座りたいが、そうする事ができない。
…凪の手が、俺の腰をつかんでいるから。
何なんだよ、この手。つか顔近ーよ。
少しでも距離をあけようと、凪の肩を押す。
「……一体何?」
「真琴…キスしていい?」
「丁重にお断りする」
俺は日本人だからそのようなスキンシップは断らせてもらう。
「え…何で?」
「普通はやらねぇだろ、男同士で」
「でも、おじさんはしてくれた。小さい頃から」
「……それは…お前のおじさんが変態だからだ」
理事長、甥っ子に手を出すなよ。…最低だな。
ばれないように小さくため息をついた。
凪は椅子に座ったまま俺をじっと見上げてくる。
「真琴が好きだからキスしたい」
「……俺は嫌なんだよ」
「真琴は俺が嫌い?」
「嫌い…ではない」
「ならキス。キスさせて」
「嫌だ」
「されるのが嫌なら真琴が俺にキスして」
「いや、そういう問題じゃなくて…」
淡々と言葉を返すと、凪が俺に抱き着いてきた。…ぞわっとした何かが、俺の全身を駆け巡る。鳥肌やばい。
「…っ、離れろ…!」
「嫌だ。真琴がキスしてくれないうちは離さない」
「おい…っ」
おまっ、駄々っ子かよ。
まるでおもちゃを買ってもらえなくて、泣いてお母さんにねだってる…みたいな状況じゃないか。
……てか痛い。周りの視線が。
こいつ、ただでさえ容姿で目立つというのに…キスコールで野次馬さん達がこちらをじろじろとみてくる。
「……くそっ、お前ちょっとこっち来い」
凪の抱擁を振り払って、周りの視線から死角となる場所へ引っ張っていく。
本棚の影まで連れていき、凪の腕から手を離した。
「……ぐたぐた駄々こねてんじゃねぇーよ」
「真琴…」
「お前の中で俺はどんな風に美化されてるのかは知らねぇけど、実際の俺は大したことないただの男子高校生なんだよ」
「そんなことない…!」
「早めに目を覚ませ。そんなにうるさくキスしろって言うなら、本当にキスしてやろうか。
…それで目が覚めるんじゃねぇの」
凪の顎をガッと掴むと、凪が驚いた表情をして後ずさろうとする。
俺はそんな凪の首の後ろに腕を回しそれを阻止した。
「……っ」
「…軽々しくキスしろとか口にするなよ。後悔するぞ」
目を見開く凪の表情を見ながら、顔をぐっと近づけてキスをする。
口の端…というより、頬にね。
唇にするはずないから。
凪は顔を真っ赤にすると、ずるっと本棚に寄り掛かりながら床に座りこんだ。
俯いて、俺がキスした箇所に手をそえている。
……おそらく男同士のキスが想像とは違い、気持ち悪くてショックを受けているんだろう。
「……だから言っただろ。身内と他人のキスは違うんだよ。
お前のおじさんは身内だから大丈夫だったのかもしれねぇが、俺は他人だ」
「……た…」
凪が何かを呟いたため、聞き返す。
「…何?」
「……やっ…」
「は?」
俺が眉をしかめていると、凪が俯いていた顔をゆっくりとあげた。
その顔は、涙で酷く濡れていてショックを隠しきれていな……ではなく。
眩しいほどの笑顔で、頬は紅潮していた。
「やった…!真琴に…ほっぺにちゅーされた。……もう顔を洗えない」
「……」
…ダメだこいつ。
ショックを受けるどころか、逆に喜んでやがる。
くそ…っ、キスしなきゃよかった。
唇を袖でごしごし拭い、大きなため息をつく。
……てか、やっぱりほっぺでもダメだ。
正直、気持ち悪いしムカムカした。
やっぱり、男を恋愛対象としては見れない。
口直しに何か……あ…っ、長沢のクッキーがあるじゃないか…!
助かった。早く長沢と会って癒されたい。
あ…約束の時間、過ぎたりしてないよな?
設置してある時計を見るために、人けのないこの場所から抜け出そうとする。
が、凪に腕を掴まれて阻止された。
「……何?」
「真琴がキスしてくれたから…俺もキスする」
「…は?や、いらないから、って、ぐ…っ!」
凪にドンッと肩を押されて、背中が本棚に当たる。
丈夫な本棚のため揺れなかった分、俺の体への反動がけっこう強かった。
肺に少し圧迫されて、けほっと咳込む。
「…っ、何すんだよ」
「何って…キス?」
「だ か ら いらないし。てか絶対するな」
「何で?キスされたら嬉しいじゃん」
「全然嬉しくない」
凪をどかそうと、肩を押そうとする。
けど逆にその前に手首を掴まれ拘束されてしまった。
「痛…っ、お前、力加減って言葉知らないのかよ」
「知ってる。けど押さえ付けてないと、真琴逃げちゃうもん」
「…確信犯かよ」
「真琴、いい匂いする…」
「人の話聞けよ。…って、え、ちょ…っ!?」
凪のいきなりの行動に、思わずぎょっとしてしまう。
凪が俺のネクタイをガッと掴み、下に引っ張って緩めたから。俺の胸元が少しだけはだけた。
「おま…っ、何してんだよ!」
「え、脱がそうと思って」
「いや、そもそも何で脱がそうとするんだよ。お前、ホモなのか?」
「ホモじゃない。それに好きだったら男とか女とか関係ないじゃん」
「関係あるし…!てかやめろ、気持ち悪い。誰かにこんなところ見られたら……」
「誰も見てない」
凪の碧眼がギラッと光る。獲物を狙うような目つき。
少しだけ怯んでいる俺の額に、凪がキスを落としてきた。
「っ、やめろ…!やめねぇと殴り倒して蹴り飛ばす」
「うん…いいよ」
「……!」
そうだ、こいつに暴力は皆無だったじゃまいか。
痛み=快楽というドM体質。
「……ヤりたい。今この場で真琴をめちゃくちゃにしたい」
耳元で囁かれた言葉に、ピシッと体が硬直してしまう。
やり…殺り?……いや、こいつの場合“ヤりたい”だ、絶対。
昴が見せてきた、あの漫画のような事を……?
そんな事されたら俺、生きていけない。
しかもこの場でヤりたいって……誰かに見られるかもしれないハラハラ感を楽しめとでも?
とんだ悪趣味だな、おい。
「…ヤらせるか、このやろう。お前、俺になら殴られたり蹴られてもいいって言ってたよな」
「うん」
「お望み通り、蹴りをお見舞いしてやるよ」
俺はそう言うと、無防備だった凪の股間を膝で思いきり打つ。
ドスッという重い衝撃をタマッタマに与えられた凪は目を見開き、苦しい表情で悶えはじめた。
「…ふ……っく…」
「全ての痛みが快楽ってわけじゃないだろ、凪?少し反省してろ」
緩んでいたネクタイを締め直し、時計を探す。
お、ちょうどいい時間だな。
アレを必死に元へ戻そうと格闘している凪を放っておき、長沢の元へと向かった。
……凪があんなに変態なのは理事長のせいなのか?
てか監視カメラ、どれだけしかけてるんだよ。
まさか、今も撮られたりしてないよな…?
そんな不安を抱えながら廊下を歩いていく。
……昴の奴、大丈夫だろうか。
真知先輩、昼休みに言っていた“説教”をするために呼びだしたのかな…?
大体、説教って何だ…?
昴は何も悪いことしてねぇのに。
「……あ、やべ」
考え込みすぎていたせいか、家庭科室を通り過ぎてしまっていた。
慌てて来た道を戻り、家庭科室の戸をノックする。
「失礼します……」
そっとドアを開けると、甘い香りがした。
調理はもう終わったらしく、片付けをする人や俺のように貰いに来た人達がいて、談笑する声で溢れている。
きょろきょろと家庭科室の中を見渡すと、エプロンを脱ぐ長沢が目に入った。
「…長沢」
「わ…!び、びっくりしたぁ」
長沢の肩がビクッと跳ねる。
後ろから声をかけたため、驚いたらしい。
「わ、悪ぃ」
「いや、気にしないで。あ、それと……はいっ」
長沢がニコッと笑って包装したクッキーを俺に渡してくる。
綺麗にラッピングされていたそれを手にして、戸惑ってしまった。
「本当に…俺なんかが貰っていいのか?」
「うん、大崎に食べてほしい」
「…さんきゅ。てか…開けるのもったいねぇな」
こんな丁寧にラッピングされてるのに。
すると、俺の言葉を聞いた長沢が包装をとってしまった。
「あ」
「そんなの気にしないで。…僕、早く食べてほしいな」
「…わかった。じゃあ、いただきます」
沢山あるクッキーの中から一つ摘み、口にする。
サクサクとした食感とちょうどいい甘さが口の中に広がった。
長沢がはらはらした様子で俺をじっと見つめてくる。
「ど、どうかな…?まずい?まずかったら無理しないでね」
長沢はそう言うと逃げるように俺に背を向ける。え……ちょっ、待ってくれ。
「長沢」
「な、なに?」
「すげー美味いよ」
「ほ、ほんと…!?」
長沢の表情がぱあぁっと一気に明るくなる。
可愛い…な。
「よかったぁ…」
「顔もいいのに料理もできるとか…長沢ってすごいな」
「そ…そんな事、ないよ…」
長沢は頬を赤くそめて、恥ずかしそうに俯く。
な…なんだ、その仕種。
とてつもなくドキがむねむねする。
「何かキッチンに立つ姿見てぇな。嫁にきてほしい。…なんて」
「い、いいよ…!僕でよければ…!」
「……え」
「あ…っ、う、な、何でもないよ」
長沢が顔を真っ赤にして手の平をと左右に振る。
俺が詳しく聞きだそうとすると、突然の邪魔が起きた。
「わ…!」
「長沢…っ」
長沢が通りすがりの人に肩をぶつけられ、よろめく。倒れそうになった長沢を慌てて支えた。
ぶつけた本人は、謝らずに俺を一睨みにして去っていく。
エプロンをつけていたし、部活のメンバーの一人かな…?
「…大崎、ありがとう」
「あ、あぁ」
「……あの子、会長の親衛隊員でね。いつもあんな感じなんだ」
「…?いつもあんな事してくるってことか?」
「うん…」
長沢は頷くと苦笑いを浮かべる。
「…嫌なら、嫌って言えばいいんじゃねぇの?」
「ちょっと、怖くて言えないんだ。
あの子、グループの中のリーダーだから」
「怖い…?」
「うん…。逆らったら……って思うと怖くて。
僕がイジメられてる事、知ってる人達もいたけど…僕を助けたら自分がイジメられるかもしれないから、誰も…」
中立の立場ってやつか…。
昔の俺も、そんな奴だったな。
「でも、メールで支えてくれた人達もいたよ?…すっごく嬉しかった」
「そっか…。でも、…"止めてほしい"って伝えたほうがいいんじゃねぇの。
長沢はもう隊員じゃないんだろ?」
「うん…」
長沢は頷くはものの、浮かない表情をしている。俺が今、長沢にできる事…。
「…俺がいるから」
「え…?」
「俺、頼りなく見えるかもしれねぇけど、逃げたりしないから」
「……」
「見守ることしかできないけど…応援してるし、側にいる。だから、頑張れ」
「…大崎」
「あ…長沢はもう十分頑張ってるのに頑張れって言うのはおかしいよな…?
えっと、何て言えばいいんだろ…」
「が、頑張ってないよ僕…!まだ頑張ってない。僕、ちゃんと言うよ…!」
「お、おう」
やる気モードか…?
にしても長沢、キリッとした表情も可愛…ごほん。
胸を張り、さっき肩をぶつけてきた人のほうへ足を進めていく長沢だが、途中で振り返る。
「や…やっぱり…少し怖いからついてきてくれる…?」
そんな事を言う長沢は、きゅうんと鳴くチワワのよう。
ハートにサクッと何かが刺さった。
落ちつけ、俺。長沢は男だぞ。
「わ、わかった…」
「ありがとう、大崎」
長沢はニコッと笑うと俺の手を掴んで引いていく。
長沢の手、小さい…。思わずきゅっと握ると、長沢が顔を真っ赤にした。
それを見て、慌てて手を離す。
「わ、悪ぃ」
「あ、う…ううん…」
照れ臭い雰囲気を二人で放ちながら目的の人の前に立ったせいか、しかめっつらをされた。
「あんたら……何?のろけ…?
長沢って会長が好きじゃないの?誰に対してもそういう態度をとるんだ」
「ち、違うよ…!」
「……」
うわ…、迫力すご…っ。
そういや中学生時代、女子達がこんな雰囲気を放っていたなぁ…。
「会長の事が好きだったのは事実だけど、それは“尊敬の好き”。
……僕、今はほんとに好きな人がいるんだ。
だから、もうこんなことしないで…!」
長沢が伝えたい事を吐き出す。
息つぎをしないで言ったせいか、呼吸が少し乱れているようだ。
長沢に言われた本人は、俺の方をちらっと見ると、唇をきゅっと噛んだ。
「……勝手にすれば。会長様に手を出さないなら、長沢になんて興味ないから」
「…ツンデレか…?」
ボソッと呟くと、キッと睨まれる。
「誰がツンデレなのさ…!」
「わ、悪ぃ…」
「あんた会長にキスされた奴だろ。むかつく」
「俺は好きでやられたわけじゃ……その、ごめん」
「長沢…!こんなナヨナヨした奴のどこがいいの?」
「う…」
やべ、微妙に傷つく。もやしで悪かったな…。
長沢は俺の制服の裾を掴むと、負けじと言い返す。
「た、確かに大崎は会長よりはかっこよくないし、ナヨナヨしてるように見えるかもしれない。けど、大崎はいい人だよ…!ある意味かっこいいの!」
長沢、それフォローになってないかも。
純粋すぎる言葉が鋭い刺になり、酷く胸に突き刺さる。
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