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見えない壁(5/5)
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……だが、その幸せをぶち壊そうとする奴がいる。
向かい側に座る凪は無表情でシャーペンの先をガンッと机に打ちつけた。
そのシャーペンの先は、俺の指と指の間の、僅かなすき間に深々と突き刺さってる。
あ、危な…っ!
「西條、てめ…っ!」
「真琴、俺も分かんないところあるから教えて?」
「凪、俺は一人しかいないんだ。だからちょっと待ってくれ」
真琴はそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。
「てか俺、トイレ行ってくる。大きい方だからちょっと時間かかるかも」
「ぶっ」
真琴の宣言を聞いて、思わず吹き出してしまう。すると真琴はむっとした表情をした。
「笑うな。最近便秘でつらかったんだよ」
「便秘…?なら出しやすいように、俺が協力してあげる」
「……」
西條の発言に、真琴は呆れた表情を浮かべる。
そして重いため息を残して、洗面所へ向かっていった。
「……真琴、可愛い」
「はげど」
「今度トイレで襲おうかな」
「襲うな。つか真琴が週末、他所に泊まるって聞いたか?」
俺の質問に、西條はピクッと眉を動かす。
「……何それ?」
「好きな人に会いに行くって」
「……真琴…………やだ、誰にも渡さない…」
西條の持っているシャーペンにペキッとひびが入った。
西條は大きく目を開き、くしゃっと自分の前髪を握りながらつぶやく。
おま…、どれだけ真琴に依存してるんだよ。
いや、俺も人の事を言えないけどさ。
「……決めた。週末、真琴をストーカーする」
「は…?」
「ストーカーして、その人がどんな奴か見にいく…」
ストーカーか……。
確かに俺も真琴の"大好き"な人を見てみたい。
…………よし、
「俺もストーカーする。名付けて、“週末の真琴をストーカーし隊”」
「もちろん入隊」
「よし、“週末の真琴をストーカーし隊”結成完了だな」
結成されたことにより、西條との仲が少し良くなった。
この“週末の真琴をストーカーし隊”、結成当時はたった二人だったが、当日までにどんどんと増えていく事になる。
変な隊が結成された事を気づくはずもなく、真琴は清々しい表情で戻ってきた。
出してさっぱりしたのかな…?もちろんそんな真琴も好き。
……真琴は俺が問題を理解するまで何度も教えてくれた。
きっと真琴もすげー疲れたと思う。でもおかげで自力で解けるようになった。
「真琴……」
「よかったな、昴」
真琴は喜ぶ俺の頭をぽんぽんと撫でる。
ついでにねだってきた西條の頭も撫でていた。
「……もう12時過ぎてるな。
二人とも早く寝ろよ」
「えー…」
「いい子だから早く寝てくれ」
渋る西條を、真琴は部屋へ向かわせる。
俺は畳んでいたかけ布団を広げると、ソファーに寝転んだ。
「……昴、お前ずっとこのソファーで寝るつもりか?風邪ひくぞ…?」
「いい。ここを離れたら真琴が危ないし」
「俺はお前が風邪をひくほうが困る。明日、自分の部屋から敷き布団持ってこいよ?俺も手伝うから」
「うん」
真琴は俺に「おやすみ」を言って自分の部屋へ向かう。が、また戻ってきた。
「…一緒に寝るか?」
「………はっ!?」
真琴の発言を聞いて、思わずガバッと起き上がってしまう。
「俺の布団も狭いけど、ソファーよりはいいと思うし。…どうする?」
「もちろん真琴と一緒に!」
俺の即答に、真琴はわずかに口元を緩めた。
──夢…じゃないよな。
俺、今真琴と二人きりで眠ってる…。
真琴は男と寝るのは嫌だけど、心配してるから許してくれたんだよな。
なら俺も…真摯であろうじゃないか。
ムラムラを頑張って抑える。
寝顔をじっと見つめていると、真琴が片目を開けた。
「……何見てんの」
「ご、ごめん…」
「早く寝ろよ」
真琴は苦笑いをすると、目を閉じる。
しばらくするとすーすーという寝息が聞こえてきた。
……可愛い。
結局、まだ友達という大きな壁を乗り越えられてないし、何も変わってない。
でも、今は自信がみなぎっていて負ける気がしない。何でだろう。
…いつか、真琴の好きが俺の好きと同じになりますように。
大好きな真琴の呼吸を感じながら目をつぶった。
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