アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
腐れ縁(1/7)
-
〜素直に愛され、愛させて〜
──朝起きたら、昴の寝顔がドアップで目に入ってきたため驚いた。
いや、今はその倍、驚くことが起きてるんだけど。
今日も騒がしい朝をむかえ、三時限目の授業を終えた頃だった。
急に廊下が騒がしくなり、見るとワンコ先輩が教室の前でうろうろしていた。
俺が不思議そうにその様子を見つめていると、ワンコ先輩と目が合う。
そしたらなんと、ワンコ先輩が教室の中に入ってきて俺の目の前に立ったのだった。
じっと見つめられてもどうすればいいのか分からない。
「あの…どうしたんですか…?俺に…何か用でも……?」
教室にいる皆の視線が痛い。
おずおずと聞くと、ワンコ先輩が薄く口を開いた。
「……ま…こ」
「まこ?もしかして俺のことですか?」
ワンコ先輩は俺の言葉に頷き、小さく呟いた。
「そ…談……ある…」
「…相談?俺にですか」
首を捻ると、ワンコ先輩は俯いて眉を下げる。
相当困ってるみたいだ……。
「…な、何でも相談してください。聞きます」
「…あり…がと…。真知……の…こと、そー…だん…」
……真知先輩?
そういやあの人、ワンコ先輩とは仲良さそうだったな。二人に一体何があったんだ…?
……と、とりあえず、
「場所、移動しませんか?人目が気になるし…あ、てかもう少しで四時間目の授業が…」
俺が現実的な事を言うと、ワンコ先輩は肩を落として先程より落ち込んだ表情になった。
ぐ…っ。胸が痛い。どうかそんな顔をしないでください、お願いします。
結局耐え切れなくて、俺の方が折れる。
「さ……サボりましょうか?」
「…まこ……」
ワンコ先輩はパアァと表情を明るくする。
…これでいいのかな?俺、間違ってないよね?
授業よりも先輩を大事にする方が…いいよな?うん、きっとそうだ。
無理矢理自分で自分を納得させる。
「それじゃ……えっと、どこ行きますか?」
「……」
ワンコ先輩は黙ったまま俺の手を掴み、引いていく。一体どこへ……。
「わ、ワンコ先輩、ちょっと待って下さい。
……昴!ていうわけで俺、行くから」
「…………ワンコ先輩なら……大丈夫だろな。…うん」
昴はワンコ先輩をじっと見つめたあと、俺のほうを見た。そして「また後でな」と言う。
そんな昴に小さく手を振り、ワンコ先輩の誘導に身を任せた。
……ワンコ先輩に連れて来られた場所は、何と真知先輩専用の屋上だった。
だが、本人の姿は見当たらない。
「……ここ、真知先輩の屋上では…?」
「ん……。入る…と、…怒る…。…けど、今…まこ一緒…から、……平気……」
「いや、俺の存在にそんな力があるとは思えませんが…」
「あ…る…!」
ワンコ先輩は先程より大きな声量で否定する。
とぎれとぎれの言葉に耳を傾け、ワンコ先輩の相談を聞く。
……原因の引き金が俺だって事もわかった。
──真知……ひと…り、怖い…。寂し…がり…。
ワンコ先輩曰く、真知先輩は寂しがりや…らしい。
寝るときは、誰かの体温を感じないと眠れない……つまりは一人で寝ることができない。
だから今まではテキトーにナンパして、(…行為をするかはしないかは気分だったらしいが)いつも誰かと一緒に寝ていたらしい。
……けど、今はそんな事をしてない。
俺が、「好きな人がいるときは他の誰かを抱くことなんてできない」と言ったから。
先輩は俺が…好きだから、俺の考えを真摯に受け止め、実行しているらしい。
……つまり、一人で寝られない真知先輩は "寝ていない"。
今日、ワンコ先輩が真知先輩の元を訪れたとき、酷く疲れた表情をしていたらしい。
このままだと休養を取れず倒れてしまう……と心配したワンコ先輩は説得を試みた。
…が、返ってきたのは、
「うるさいよ。優に関係ないだろう?
……お前はいつも僕にしつこいんだよ。…ほっといてくれ、迷惑だ」
……かなりのダメージ力を持つキツイ言葉だったらしい。
「…しつ…こい?……僕…うるさ…い?」
「…そんなことないと思います。てか全ては俺が原因ですね……すみません…」
頭を下げると、ワンコ先輩が首を左右に振る。
「ちが……まこ…のせい、…ない」
「本当に…すみません。……あの、でも真知先輩は本気で言ったわけではないと思います」
「ど……して…?」
「他の人がワンコ先輩と同じ内容のことを言っても、真知先輩は「へぇー…」とか、「…そう」みたいに返事する程度だと思うんです」
まず、相手にしないと思う。
ポーカーフェイスなところもあるし。
「…うっかり、思ってもいないことを口走ったりすることがあったり…。
自分の気持ちを遠慮せずにぶつけられるワンコ先輩だからこそ、真知先輩は言ったんだと思います」
「ぼ…く……だ…から…?」
「…俺はそうだと思います」
「…ん……」
先輩はほんの少しだけ頬を緩めると、床に座りこんだ。俺もつられて先輩の横に腰を下ろす。
「…ま…ち、…好き…。
けど……ケンカ……よく…る…」
「…ケンカするほど仲がいいっていうし、大丈夫だと思います。
好きって気持ち、伝えるのが難しいときありますよね」
「たった……2字…のに……むず……い」
「はい…。………ワンコ先輩は、そんなときどんな風に愛情表現をするんですか?」
ふと思いつき、質問してみる。
……すると、ワンコ先輩が俺の方をじっと見つめて、手を伸ばしてきた。
先輩の手が、俺の頬にそえられる。
そして、あろうことか急に舌を出して俺の頬をペロッと舐めてきた。
「え……うわあぁ!!?」
突然のことに、奇声を発してしまう。
頭真っ白。パニックだお。
な、舐めることが愛情表現…?
「…ふ……っく…、せ、先輩…!やめ…っ」
体がゾクゾクする……それに変な気分だ。先輩の肩を押す手に力が入らない。
「…先輩!」
「……!」
何とか押しのけて、先輩の行動を阻止できた……のは良かったが、一つ問題が起きた。
目の前にいるワンコ先輩が傷ついた表情をしている。
「……嫌……だ…た…?」
「ち、違うんです…!拒絶したわけじゃなくて、…その、くすぐったくて!」
「ほ…んと……?」
「……はい」
ワンコ先輩の今の行為は、先輩にとっては愛情表現でしかない。けど…俺が……。
思わず頭を抱えてため息をつく。
「……はぁ…」
…うん。感じてしまったんだよね、舐められて。しかも男に。
あはは、俺、色んな意味で終わってる。
今すぐ屋上から飛び下りて自分という存在を消してしまいたいよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 63