アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
腐れ縁(4/7)
-
──親友……か。
俺も昴達とそんな感じになれたらいいなぁ…。
……今、二人ともいい雰囲気なんだよね。
俺、完全なるお邪魔虫だな。……よし。
こそこそと屋上から去ろうとする。…が、衿元を後ろから掴まれ阻止された。
「ぐえっ」
「かえるみたいな声だねぇ」
振り向くと真知先輩がニコッと笑って立っていた。その横には、おろおろとした表情のワンコ先輩が立っている。
「…真知、まこ…首、締ま…て…る」
「ん?あぁ…ごめんね、真琴くん」
「……」
ほんとにマジの真面目に何度も思うんだけど……。
真知先輩って、ほんとに俺のこと好きなのか?
だって、平気で傷付く言葉言ってくるよね?
おかしいとか?顔が酷いとか?
結局、まだ俺のどこが好きなのか…聞いてないし…。
「好きだよ?」
「……!え?」
「まこ……考え…、全部、口……出て…た」
おお…ナンテコッタイ。
つー事は真知先輩の悪口も全部聞かれちまったのか。
「僕、君の中ではものすごく印象が悪いみたいだね」
「う……」
「真…知、まこ……困…てる」
「…優、すっかり真琴くんになついちゃってるんだね」
真知先輩はやれやれと肩をすくめると、ふところから紙パックのレモンティーを取り出した。
……またレモンティーか、好きだな。
「……まこ…」
「…!はい」
ワンコ先輩に話しかけられたため、レモンティーから視線を移し先輩のほうを見る。
「なんですか?」
「まこ……僕、ちゃ…と、言え…た」
言えた…?真知先輩への気持ちの事か。
「まこ…の、…お…かげ」
「いや…俺、結局何もできなかったし…」
「んん…。…応援…して、くれ…た」
ワンコ先輩はそう言うと、俺の手をぎゅっと掴む。
そして、柔和な笑顔を俺に見せてくれた。
「…あり…がと……」
「……っ」
天使。笑顔が天使だ。
お胸がきゅんとし…………てない。うん、してないよ。
俺、今何考えてた?
一歩間違えれば危ない道に突入してしまいそうだった気が。
それぐらい魅力的なワンコ先輩の笑顔が、俺の心を揺さぶった。
「……真琴くん、何で顔を赤くしてるんだい?」
「……!え、してないですよ」
「まこ…顔、赤…。嬉…し……?」
「う…っ」
否定したいが、否定できない。
この二人に挟まれるのは結構きついぞ。
とりあえず、話をそらすか。
「ふ、二人ともほんとに仲がいいですね…!」
「ん……」
「どうしてそう思うんだい?」
キター、えぐる様なつっこみ。
真知先輩はやっぱり…苦手だ。
「えっと…、真知先輩、俺や昴のことは"君"って呼ぶのにワンコ先輩のことは"お前"って呼んでるし…。打ち解けてるなって感じがします」
「……君、わりと目ざといね。言われるまで気が付かなかったなぁ」
真知先輩の発言に、ワンコ先輩はこくんと頷いて同意する。
「僕のこと意外に見てくれてるんだね。嬉しいなぁ」
「…違います」
俺が低いテンションで真知先輩の誤解をといてると、ワンコ先輩がくす…っと笑った。
え…、どうしたんだろ…?
「真知…と…まこ、…似て…る…」
「…えっ!?」
「そう?」
「二人…、優し…。匂い…も、同…じ。
一緒…いて……安心…する…」
「…だってさ、真琴くん」
真知先輩は微笑して俺を見てくる。
先輩と俺が…似てる…?
少しムッとしてしまい、本音がポロリと出てしまった。
「俺、先輩とは違って、大魔王みたいな気質ないし…」
「…真琴くん、それどういう意味かな」
「ひ…っ」
「真知…が……悪役…て、意…味…」
「わ、わざわざ言わなくていいですよワンコ先輩…!」
真知先輩の黒い笑顔と、純粋すぎるワンコ先輩の発言。どちらも同じくらい怖い。
…でもまぁ…ワンコ先輩のほうが安全だな。
「わ、ワンコ先輩…」
「……まこ」
ワンコ先輩のほうに寄ると、ワンコ先輩は少し嬉しそうな表情をして俺に抱き着いてきた。
ワンコ先輩の温かな体温が背中に伝わってくる。ぐ……っ、振りほどきたくても振りほどけねぇ…。
さっきみたいに拒絶された…と勘違いされるかもしれないし。
頑張れ俺、外人に成り切れ。これはただの挨拶なんだ。
されるがままになってる俺を見て、真知先輩が少し不満そうな顔をする。
「ずるいなぁ、優は」
「ど……して…?」
「僕が同じことしたら、真琴くんは絶対に怒るからねぇ」
それを聞いたワンコ先輩は俺をじっと見つめる。そして軽く俺の額をこづいてきた。
「仲間…外れ……、めっ…」
「…っ、はい…」
"めっ"て……何それ、可愛すぎるよワンコ先輩。ほんと癒される。
ワンコ先輩は俺と真知先輩を引き寄せると、ぎゅっと抱きしめてきた。
二人の体温が体全体を包んでいく。
「う…っ、ちょ…」
「あはは、優、ナイスだよ」
「ん……」
嫌だ…!言えねぇけど嫌!
自分よりでかい男達に囲まれひしめき合うとか…!
「真琴くんちっちゃいねぇ」
「……っ」
「そこ…も、かわい…い…」
ワンコ先輩…俺、可愛いと言われても全然嬉しくないよ…。こっそりと小さなため息をつく。
ワンコ先輩は目を閉じると一言呟いた。
「…みんな…、一緒……」
「そうだね。……あたたかい」
真知先輩の、いつもとは違う少し子供っぽい笑顔。
頬をほんのり上気させて、幸せそうな顔をするワンコ先輩。
そんな二人の表情を見てしまい、抵抗する気にはなれなかった。
「真琴くんは…嬉しいかい?」
「……普通です」
「…嬉し…ない…の?」
「あ、嬉しいですよ」
半ばやけくそ状態で意見をころころ変える。
そんな俺を見て真知先輩はふっと笑った。
「真琴くんは優しいねぇ」
「ん…優…し……」
「…俺なんかよりワンコ先輩の方が優しいですよ。"優"って名前、ぴったりです」
「あり……がと…」
ワンコ先輩は頬を桜色に染めると恥ずかしそうに俯く。
え…そんな反応されると、何かちょっと照れるんですけど…。
俯く俺達を見て真知先輩はクスッと笑うと、提案してきた。
「優も真琴くんに名前で呼んでもらったらどうだい?
お前もそっちのほうが嬉しいんじゃないかなぁ」
「……!ん……すご…く…」
「えっ」
二人の視線が俺に注がれる。
これは…絶対に言わなきゃいけないパターンですよね。
「ゆ……優先輩…」
「…まこ……!」
「わっ!……て、ちょちょっ、ストップ!待って、ワンコせんぱ…じゃなくて優先輩!」
優先輩が抱き着いてきて、愛情表現…つまり俺の頬を舐めようとするから慌てて止める。
真知先輩も横から手を伸ばして優先輩の首ねっこを掴んだ。
「ダメだよ、優。真琴くんは普通の男の子なんだから、そういう事はしたらいけないよ」
「真…知……」
優先輩はきゅうん…と鳴きそうな表情で落ち込む。
何か……失礼な話だけど、しつけをする飼い主と素直に反省するワンコに見えてしまう。
「…よかったね、名前で呼んでもらえて」
「ん……真知…あり…がと」
「お互い様。……ねぇ優、これからも僕の傍にいてくれよ。…何度もすれ違ったりケンカしてもね」
「ん…。僕……真知、大…好き…。……から、だいじょ…ぶ。…きっと…」
「…そうだね」
真知先輩と優先輩は……二人で一つというのが強く伝わってくる。
目には見えないけど、“一生消えない絆”ってのを感じた。
……腐れ縁みたいな。
悪縁とも言われるけど……別に、離れられなくて関係をずるずると引きずってもいいと思う。
というか…切ろうと思っても切れないって、最強だろ。
俺も一生切れることができない絆を、誰かと結びたい。
その腐れ縁を好きな人と結ぶ事ができた先輩達を見て、すごくうらやましいと思った。
「…どうしたの、真琴くん?」
「ちょ…と……笑…てる…」
「えっ、や、……二人とも素敵だな、って」
思ったことをそのまま口にすると、二人が何とも言えない表情をした。
「……僕達を口説くつもりかい?」
「…キャラ……へん…こー…?」
「いや、違いますから…!」
口説いてないし、口説きたくもない。
てか優先輩からキャラ変更という言葉が出るとは…。
「…うらやましいと思ったんです。二人の絆とか、人を引き付ける個性が」
俺も(先輩達ほど濃くはなくてもいいけど…)個性がほしい。
ぽろっとこぼした俺の本音を聞き、真知先輩は微笑する。
「真琴くんはもう個性が備わってるじゃないか」
「どこがですか……」
「そうだねぇ……何かに例えるなら…。
ステージに立つ人ではなくて、ステージの照明係ってところかな」
「……」
何だ…その微妙なポジション。もっと違う例えがなかったのかな…。
俺が少しうなだれてると、優先輩が一言放った。
「真知……言…てる…こと、…なっとく…」
「え…」
「ふふ、そうだろう?」
やべ……優先輩のコメントからのダメージ、底知れず。
俺の今の体力をポケ○ンで表すなら、コイ☆キングのたいあたりで死んでしまう。
あれ…?俺の例え非常にわかりにくいな。
まぁ、どちらにしろショックなんです。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 63