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言うべき言葉(1/5)
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……軽い足取りで教室に着く。
教室の中を見渡して探すと、昴と凪と長沢が集まって話をしていた。
「長沢って…受け?」
「チワワくんはもちろん誘い受けだろ」
「で…でも僕、大崎だったら攻めたいな…」
「なんだと…?タチりたいのか、真琴を?」
「俺も真琴とやりたい。中をめちゃくちゃにして、喘がせたい」
「黙れ、西條。お前は生徒会のメンバーとくっついてろよ」
「ふ、二人ともケンカしたらダメだよ?……って、大崎…!?」
俺が三人のところへ歩み寄ると、それに気がついた長沢が顔を真っ赤にする。
「「真琴!」」
「…うわ、西條とハモったし」
「ほんと最悪…三橋とハモるとか」
昴と凪……またケンカか…。
というより、長沢は何で顔真っ赤なんだ…?
「お、大崎……、今の話聞いてた…?」
「いや、全然」
「あ……ならいいや…うん…。よかったぁ…」
顔赤くするほどイケナイ話をしてたのか?
白昼にそんな話をしたらダメだぞ。
……なんてな。
純情な長沢がそんな話するはずないよな…。
ケンカ中の凪と昴の腕を引き、長沢と食堂へ向かう。
食堂に着いた途端、凪が「奢る」って言い出したときはびっくりした。
「おじさんが言ってた。好きなら"好きな人が喜ぶことをしたらいい"って」
「……確かに、奢ってくれるのは嬉しいけど…断る」
「え……」
「お前の金は、両親が汗水流して稼いだものだろ。だから気持ちだけ受け取っておくよ。さんきゅ」
「真琴…」
落ち込む凪の頭をよしよしすると、側にいた昴がムッとした表情をした。
「……西條だけずりぃ」
「え?お前撫でてほしいのか…?」
「うん」
昴は首をこくこくと縦に振って頷く。
隣にいた長沢も「僕も撫でてほしい」と言ってきた。
……何か…みんな……甘えん坊だな。
三人一緒に(仲良く?)飯を食う。
今日はラーメン。
あれ…、俺最近麺ばかり食ってる気がする。
ずるずると麺を啜ってると、昴が話しかけてきた。
「……ワンコ先輩と何話したんだ?」
「ん……色々。途中で真知先輩も乱入してきたけど…楽しかったよ。優先輩で癒されたし」
「ワンコ先輩を…名前呼び…!?
真琴、今度はどんなフラグたててきたんだよ…!」
「……はぁ?」
首を捻ると、今度は横から凪が話しかけてくる。
「真琴、俺と話してても癒される?」
「え……たまーに馬鹿なところが癒されるかもな」
「真琴…ありがと、嬉しい!」
「ん」
やれやれ…。二人が次々と話しかけてくるから、飯を落ち着いて食えない。
にこにこ笑って俺達を見守る長沢が天使に見える。
……ラーメンの器がからっぽになった頃、放送が流れた。
聞こうとすらしなかったけど、自分の名前が聞こえたから驚いて耳を澄ます。
「…繰り返す。……1年B組の大崎 真琴。今すぐ生徒会室に来い」
この声……。
俺の気持ちを代弁するように、昴が呟く。
「会長…?何で真琴を……」
「真琴との楽しい食事の時間を邪魔すんな…。俺、会長を懲らしめてくる」
「待て、早まるな凪」
凪の目がマジだったから慌てて止める。
長沢は眉を下げたまま俯いて座っていた。
「長沢……?」
「多分…仕事のお手伝いしろ、ってことだと思う。前は僕がやっていたから……」
会長……長沢のこと、気に入ってたもんな。
長沢の代わりか…嫌がらせ目的かな?
会長、俺のこと嫌いだし。(舌噛んだから)
俺がふーんと唸っていると、長沢が席を立つ。
「お、大崎に悪いし……僕が会長のところに行くよ」
長沢……。
……いや、待て…?長沢にはもう他に好きな奴がいるんだ。
なのに、会長のために無理して奉仕する必要はない。長沢の手は汚させないぞ…!
俺は立ち上がった長沢の肩を掴むと、目を合わせた。
「ダメだ、俺が行く。お前は好きな奴のことだけを考えてろ」
「え……っ」
長沢は驚いた表情をすると、みるみる内に顔を真っ赤にする。
そして恥ずかしそうな表情でこくん…と頷いた。
え…えっ、あれ…!?
俺…何かまずいこと言ったか……?
「……今の発言、直訳すれば"俺のことだけを考えてろ"だよな」
「…?何か言ったか、昴」
「何も」
気のせいか…?
昴と凪の表情が曇っている気がする……。
「どうした、二人とも?」
「「……別に」」
「げっ…!」
「うわ、またハモったし……」
お前ら、実はすげー仲いいんじゃね?
俺も誰かとハモってみたい。
「……じゃ、俺行くから。長沢、そんな顔してると襲われるぞ」
……会長とかにね。
横を通りすぎる際に呟くと、長沢はさらに顔を赤くした。
……さっきから長沢の様子が変だな…。
心の隅でそんな疑問を持ちながら食堂を後にした。
「──大崎くん」
「……!」
廊下を歩いていると、誰かに声をかけられた。振り返ると、副会長のこちらに歩みよってくる。
「……先程の放送聞きました。私も同行します」
「何でですか?」
「貴方のお手伝いになれるかもしれないと思いまして」
「……」
そういや……この人一時の気の迷いで、俺に告白してきたんだったな。
あまり実感がわかない。
「えっと…ありがとうございます…?」
「…感謝が足りないですね」
「調子乗らないでください」
足の指をぎゅむっと踏むと、副会長が苦悶の表情を浮かべた。
「痛……!相変わらず大崎くんは生意気で態度が大きいですね。背は低いのに」
「誰がチビですかコラ」
副会長のネクタイをがっと掴み、引きよせる…………つもりだったが、副会長はよろめいて俺のほうに倒れてきた。
「わ……!」
「──…!」
副会長の顔が視界いっぱいに映る。
その瞬間、俺達の唇が小さな音をたてて重なった。
とても近い距離で副会長と目が合う。
唇が熱いことが、俺を現実に繋ぎとめた。
え…………。…嘘……だろ…?
唇の熱がゆっくり引いていく。 俺が唖然として突っ立っていると、副会長が俺の肩をぎゅっと掴んできた。 「も、申し訳ありません…! 私はあなたに特別な感情を抱いていますが、今はそんなつもりは…っ。 大崎くん、どうか許してください…!」 「──…」 副会長は今にも土下座しそうな勢いで頭を下げる。…キス。 副会長とは二度目のキスだ。 怒りたいけど、怒れない…。 だって、今のは俺が悪いから。 俺が副会長のネクタイをいきなり引っ張ったから…よろめいたんだ。 副会長だって、切ない表情を浮かべて必死に謝ってる。 「大崎くん…」 「……副会長は…悪くないです」 「…っ、しかし」 「……会長に伝えてくれませんか?"少し寄り道してから行きます"って」 「お…大崎くん!」 背中に副会長の呼びかける声が当たる。 けど、振り返らずにその場から走り去った。 ……階段を勢いよく駆けあがる。 屋上の扉をバンッと開くと、真知先輩と優先輩が少し驚いた表情でこちらを見る。 俺はそんな二人に目をくれず、広がる青空に向かって叫んだ。 「……っのやろおおあああぁああああ!! どいつもこいつも、俺の純情を返しやがれええ!!!」 何で…何で男と何度もキス(とか他諸々)しなきゃいけないんだよ…! 俺、こう見えても青春真っ盛りの男子高校生だから。 こんな事が続くと嫌だよ。 泣いていいですか? ていうか、泣くから俺…!
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