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言うべき言葉(3/5)
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会長は俺の腕を掴むと空き教室を出て生徒会室へ向かう。
俺はずるずると引きずり込まれるように入室した。
「……!大崎くん…って、バ会長、何故大崎くんの手首を掴んでいるんですか?汚らわしい」
「バ会長じゃねぇ!つか汚らわしいって何だコラ」
「大崎くん、こちらへ」
「ども」
会長から離れて副会長の方に近づく。
けど、至近距離になってからさっきあった出来事を思いだしてお互い顔を赤くする。
「あ……」
「……」
「てめぇら……なに顔赤くしてんだよ。
大崎、早く手伝え」
「……うるさいな。分かりましたよ、バ会長」
「だからバ会長じゃねぇ!」
仕方なく、会長のたまりまくったお仕事を手伝う。
昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴ったら解放してくれたが、「放課後も手伝え」と言われた。
……俺様バ会長ムカつく。
「サボったら犯す」
「会長、大崎くんの嫌がることをしたら許しませんよ。真知にチクります」
「……チッ」
副会長は会長に睨みをきかせると俺の方を見る。
「午後の授業、頑張ってくださいね」
「…あざす」
副会長に礼を言い、会長と睨み合いをしながら生徒会室を出る。
副会長……いつもきちっとネクタイしめてるよなぁ…。俺は窮屈なの苦手だから尊敬する。
……教室に行くと笑顔の昴が迎えてくれた。
「真琴…!大丈夫だったか?」
「ん」
「…テスト、緊張するな」
「え?…あ、数学のやつか」
やべ、忘れかけてた。
チャイムが鳴ると、ホストが教室に入ってくる。
いつもは寒気が立つ黄色い声が上がるのに、今日は動揺の波が広がった。
……ホストが、小テストの束をかかえていたから。
「毎度の赤点から脱出したい……!」
「てか絶対脱出しろよ。俺の睡眠時間さいてまで教えたんだから」
「うっ……、そうだよな…」
「あ、冗談だから本気にするな。…頑張れよ昴」
「真琴……」
昴の手の甲にぽんっと手の平を重ねると、昴は頬を緩めてコクコクと頷く。
……配られた小テストは、昨日昴に教えたような基本ばかりの問題だった。
これなら大丈夫だろ。
授業が終わったあと、昴も「すげー自信ある!」って笑っていたし。
……その後、6時間目の授業が終えて帰りのHRで挨拶をする。
生徒会室へ行こうか、と思い席を立つとホストが呼びかけてきた。
「真琴」
「…何ですか?」
「ちょっと付き合え」
「はぁ…」
昴に「先に帰っててくれ」と伝え、ホストの後をついていく。
連れてこられた場所は、前に呼びだされた個室だった。
今度は何の用で呼びだされたんだ…?
「テキトーに座れ」
「はい。…あ、コーヒーお願いします」
「お前やっぱり見た目によらず図々しいな…!」
「ありがとうございます」
「だから褒めてねぇよ」
ホストは文句を言いながらもコーヒーをいれてくれる。
ホストはコーヒーカップを俺に手渡すと、向かい側のソファーに座った。
「……今日のテストの話だ」
「え」
な、何?結果が悪かったってこと…?
人様に教えてる場合じゃねぇ…。
「お前は……まあまあよかったな」
「……」
何だよ。そんな言い方するから心配したじゃないか。コーヒーをずずっと音を出して飲み、不満を表す。
「まぁ、怒るな。お前は置いといて、三橋だな」
「…昴…どうでした…?」
「……余裕で赤点回避だ」
「よっしゃ…!」
へへっと笑うと、ホストも少し頬を緩める。
「お前が教えたのか?…上手いな」
「はい。あー…よかった。じゃあ俺、もう行きますね」
「おい、待ちやがれ。もうちょい付き合え」
「嫌です。……それに先生の弟様に呼びだされてるんですよ」
「……政司にか?」
「俺様会長からの"手伝え"と言う命令です」
「ははっ、俺様か」
ホストは苦笑するとタバコを一本取りだして火をつける。
煙をはくと、ホストは少し真剣な面持ちをして聞いてきた。
「お前は…政司の事どう思っている?」
「正直に言えば……あんまり好きじゃないけど、…悪い人ではないと思います」
「……そうか」
ホストは俺の言葉を聞くと微笑する。少し間を開け、再び口を開いた。
「……あいつには色々迷惑かけたからな。ああ見えて我慢する奴だから」
「我慢……?」
「俺の家は名家でな。本来、長男の俺が後継ぎになるはずだった。
……けど俺が"教師"になっちまったから、政司が代わりに…な」
「……」
金持ちも大変だな…。
自分の好きな道に進めないという苦しみもあるのか…。
「あいつ、"役たたずの兄貴に代わって俺様が後継ぎになってやるよ"と言っていたが……本当はあいつにも叶えたい夢があっただろう」
「……、…」
「俺はあいつの夢を奪ってまで教師への道を進んだ。
だから半端は許されない。立派な教師にならなきゃならねぇ」
「……先生ならきっと、大丈夫だと思います」
心の声がぽろっと口から漏れる。
ホストの視線を感じ、慌てて立ち上がった。
「…えと、先生は洞察力があってみんなから慕われてるし…ちょっと外見はあれだけど」
「あれってなんだよ」
「なんか少しチャラいな…って。けど俺、転校してきて間もないけど先生のこと信頼してます」
「……そうなのか?」
「生徒や弟を常に心配して気にかけてる
し…。優しい先生ならきっと、立派な教師になれると思います」
思っていた事をそのまま口にする。
背を向けてそろそろと部屋を出ていこうとすると、ホストが立ち上がって俺の後ろに立った。
俺が後ろを振り向く前に、耳元で囁かれる。
「……ありがとな。しばらくはお前の言葉を励みに頑張れそうだ」
「……そ…それは…よかった…です…」
不思議な感情が胸の奥で生まれた。
言葉ではうまく表せないけど、嬉しい…に近い感情だと思う。
振り返ると、ホストが穏やかな微笑を浮かべて俺を見つめている。
何かものすごく恥ずかしい気持ちになったから、目をそらして廊下に出た。
「……失礼しました」
「また明日な」
ホストが髪をくしゃくしゃにするように頭を撫でてくる。
俺は身をよじらせて振り払うと、文句を口にした。
「…セクハラ教師」
「セクハラしてねぇよ」
「…あっそ。さようなら」
「怒ってても挨拶はちゃんとするんだな」
「常識です」
そう呟くとホストがまた腕を伸ばしてくる。
俺は撫でられるのを回避すると、ホストを一睨みして立ち去った。
……なんか、余裕がある感じでムカつく。
"ガキ"扱いされてる感じで。
まぁ、実際ガキだけど…。
真っ正面から向き合ってほしい……って、俺、ホストに何を求めてるんだよ。
……あいつはただの担任だろ。
「──遅い。もっと早く来やがれ」
「…さーせん」
やっぱり会長、ホストに顔似てるな。
怒る会長の顔をぼーっとしながら見つめてると、怪訝そうな目で見つめ返された。
「……人の顔じろじろ見んな。それとも見惚れてんのか?」
「うるさい、ニセ俺様」
「てめ…っ」
会長はこめかみをぴくぴくさせて俺の腕を掴む。抵抗せずに会長に身をまかせると、生徒会室のさらに奥にある部屋へ連れていかれた。
「お前、そこにあるパソコンでこの書類の内容、表にまとめられるか?」
「…はい」
会長は俺が頷いたのを見ると、置かれていた書類の上にさらに大量の書類を重ねた。
「ちょ…っ」
「まかせた。よし、開始するぞ」
「いやいや…これ今日中にやれと?てか何故こんなに溜めたんですか」
「ぐちぐちうるせぇな。俺も頑張るからお前も頑張れ」
めちゃくちゃだ、この人…。
長沢も大変だっただろうな。
俺は深いため息をつくと大量の書類に手を伸ばした。
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