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たからもの(1/3)
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朝、携帯のバイブ音で目覚めた。
昨日は、帰ってきた後すぐに寝てしまった。
長年悔いていたことが解決した安心感からか、ぐっすり眠ることができた。
震える携帯を俺は目をつむったまま手探りで手に取る。メールじゃない……電話か。
目をごしごしこすって、通話ボタンを押す。
「……大崎…です」
「……おい」
あ……。俺の好きな声。
そうそう、まるで旦那みたいな……って、もしや千尋さん?
「おい、寝ぼけてんじゃねぇよ」
「え…まじで千尋さん?」
「あ"?俺の他にてめぇに電話かけてくる相手でもいるのか」
「いえ…あんただけです」
ゆっくりと答えると、旦那が少しイライラしたように舌打ちをする。
てか、旦那起きるの早いなぁ…まだ5時だぞ?
「旦那…今日早いですね」
「…仕事」
「無理しないでくださいね」
「あぁ」
会話が途切れてしまい、無言を交わしあう。
先に口を切ったのは、旦那だった。
「…10時だ」
「え?」
「明日10時に校門で待ってる。遅刻したら許さねぇ」
明日は…土曜。
「聞いてるのか、真琴」
「…はい。明日、楽しみです。
…やっと旦那に会える…」
ちょっと口元をほころばせながら言う。
旦那は一拍置いて口を開いた。
「お前、まだ寝ぼけてんのか」
「へ?」
「…んな可愛いこと言うんじゃねぇよ」
「えっ…え?」
首を傾げると旦那が言葉を付け足す。
「週末は俺の事だけ考えてろ」
「言われなくてもそうなると思います」
「チッ…さっきから素直すぎんだよ、てめぇは。…調子狂わせんな」
「すみません…?」
素直っていうか、ほんとに嬉しいんだ。
明日、千尋さんに会えるって考えると。
「俺……旦那に話したいこと、いっぱいあるんです。ここ数日間の出来事…」
「…俺にとってはあまり聞きたくねぇ話かもな」
「え…?」
「…何でもねぇよ。じゃあな」
「えっ…えっは、はい。また明日…」
「あぁ」
携帯からツーツーという寂しい音が聞こえる。
何か旦那そっけないな…。もっと話したかったのに。
まぁ、明日話せるからいいか。
ぬくぬくした布団から這い出て制服に着替える。
やれやれ……どうやって時間を潰そうか?
とりあえず顔を洗おう。
個室から出てリビングを通る。
そこには布団に包まって気持ち良さそうに寝る昴がいた。
昨日一緒に昴の部屋からここに敷き布団を移したからな。すやすやと安眠していらっしゃる。
…どうしよう。昴を無理矢理起こして巻き込もうかな?
悪戯心が生まれ、昴の横に腰を下ろす。
…耳に息を吹きかけてやろう。
「…ふーっ」
「……っ」
耳に息を吹きかけた瞬間、昴はビクッと反応する。けど、その後すぐにまたすやすやと寝てしまった。
「チッ…」
鈍いな、昴。
何か…顔に落書きしたくなる。もちろんしないけど。昴は寝顔が可愛いね。
起こすことを諦め、立ち上がって洗面所で顔を洗う。そして部屋からこっそり出た。
……そうだ。
副会長に会いにいこう。中庭で植物に水やりをしているかもしれないし。
それに花の事で聞きたい事がある。
……待てよ…?
副会長の気持ちに応える気がないのに、仲良くしようとするのは最低な行為なのでは…?
いや、そう考えるほうがやらしいか?悩んだ挙げ句、中庭に向かう事にした。
だって、何が正しいのかわからないし。
どう感じるかは本人しか分からないもんな…。
……中庭の植物達は丁寧に手入れされ、それぞれの魅力が惜しみ無く出されている。
広い中庭の中をうろうろしてると、奥のほうから話し声が聞こえてきた。
「そうですか…。優が真知と一緒に添い寝することになったのですね」
「ん……」
「よかったです。…お互いに安心できますよ」
「安…心……」
「はい。優はほんとに真知が大好きですね」
「ちづ…も、好き…だよ…?」
「ふふっ、ありがとうございます」
なんと、そこには副会長と優先輩がいた。
二人は楽しそうに話している。
見たことない組み合わせだな…。
……邪魔したら悪いよな。
そう思って背を向ける。
一歩を踏みしめたとき、足元からパキッという音がした。あ、小枝踏んじった。
「……!誰ですか!?出てこないと水をかけますよ!」
そういや前にも似たことあって、ちょびっと水をかけられたな。
控え目に草むらから顔を出すと、二人が面食らった顔をした。
「…まこ…?」
「大崎くん…!来てくれたんですね?」
「その…邪魔してすみません」
「邪魔なわけありませんよ」
副会長はそう言うと俺のほうに近づいてくる。
優先輩もゆっくり歩み寄ってきた。
「あの…副会長、水やりしてることばれたくなかったんじゃ……?」
「あぁ、優のことですね。実は優には早期にばれてしまってたんです」
「ほー…」
「"ばらさないでほしい"とお願いしたところ、優は"ばらさないから真知を嫌わないで"と言いました」
生徒会のメンバーになった頃、副会長や会長は真知先輩と馬が合わず険悪なムードが漂っていたらしい。
「優は真知という人物について、詳しく話してくれました。
おかげで本当の真知を理解し、考え直すことができたんです」
「ちづ……今…真知…好き……?」
「好きですよ。少し手荒いところもありますが、好きです」
「…よか…た…」
俺の知らない話。
生徒会メンバーの中には俺なんかは入る事ができない絆があるように感じた。
「どうしましたか?大崎くん」
「…!いや…その、えっと……は、花のことで聞きたいことがあるんですけど」
「まこ…花、…好…き…?」
「好きですよ、癒されるし」
優先輩のほうが癒しだけど…。
副会長は植物に水を与えながら聞き返してきた。
「聞きたい事って、なんですか?」
「今の時期、部屋に飾る花って何がいいと思いますか」
「私、そういうことについては詳しくないんです…。誰かにあげるのでしたら、花言葉に目をつけてみたらいかがでしょうか」
「花言葉…」
旦那に似合う花言葉か……。
旦那の事務所に飾りたいんだよな。癒しになればいいな、と思って。
「誰…あげる…の…?誕生…日…?」
「え?いや、違います。知り合いの部屋に飾ろうかなと思って」
「…誕生日と言えば、大崎くんの誕生日はいつですか?」
「へ?あぁ、明日です」
俺がそう答えると、二人が目を見開いて俺を見つめてきた。
え……何?
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