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嫉妬(1/7)
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〜俺の好きな俺と旦那の好きな俺〜
旦那に、"何で銀髪にしたのか"を何度か聞いてみたことがある。
一度目は「若気の至り」、
二度目は「親友の内の一人が金髪にしたからその対抗心で」と聞かされた。
少し派手だと思うけど、俺はその髪色は嫌いじゃない。
俺は旦那の過去についてあまり知らない。
ボクシングのプロを目指してた、というのは噂で聞いたことがある。
旦那は昔の自分のことはあまり口にしないから、無理に詮索はしないけれど。
ぶっちゃけ、初対面は最悪だった。顔も強面で怖いし。
なのに何故か今は俺の大事な人になっているし……人生どうなるのか分からない。
俺の反抗期は、千尋さんが全部受け止めた。
……誕生会は、どんちゃん騒ぎで散々だった。
いや、すごく楽しかったけどね。
オードブルをもぐもぐ食べてると、凪と会長と副会長が何故か揉め始めた。
「まさかあなたが"銀狼"だったとは……しかし、私は今、大崎くん一筋。
あなたには一切興味はありません」
それを聞いた凪は副会長のネクタイをガッと掴んで引き寄せる。碧眼が異様冷たく光っていて怖い。
「せいせいするけど?つか……真琴に手を出すんじゃねぇよ、もやし」
「も、もやし…!? 酷すぎます、その例えは!」
「おい、俺様をのけ者にするな、西條」
「「うるさい(ですよ)、バ会長」」
「……っ」
凪と副会長の言葉の攻撃を喰らい、バ会長は部屋の隅でうなだれる。
俺がそんな政司先輩に近寄り、背中をよしよしすると、頭をぽんぽんと撫で返された。
「お前、本当に可愛いくなったなぁ…」
「真琴ー!ケーキ食おうぜっ」
「あ、昴。じゃ、そういうことで」
政司先輩の撫でてくる手を払い、昴の方へ向かおうとする。すると先輩が声を上げた。
「な…っ!くそっ、やっぱり可愛くねぇ…!待ちやがれ、真琴!」
「ケーキ……まこ…の分…、僕…切る…」
「そうかい?優ならきっと上手く切ってくれるんだろうねぇ。
真琴くん、そのバカは放っておいてこっちにおいで」
「はーい」
「真知…!俺はバカじゃねぇ!」
「あぁ、ゴメン。アホの間違いだったね」
「ちげーよ!」
「あの、会長、ケンカしたらダメだよ…?」
「長沢…っ、し、してねぇよ」
会長って可愛い子に本当に弱いな。
テーブルの方へ足を進めると、昴が優先輩に話しかけていた。
「待って、先輩。切る前に、真琴にろうそくの火を消させたほうがいいんじゃないすか?」
「…そか…。ろー…そく、…立て…よ?」
「了解っす」
「あ、僕も手伝うよ」
昴と優先輩と長沢の行動を見た真知先輩は声をあげる。
「誰か電気消してくれないかなぁ」
「俺様が消してやるよ」
会長が電気を消すと、ケーキのろうそくの火だけがぼんやりと光る。
「……わっ、何事ですか!?停電…?」
「違うに決まってるだろ、もやし。…真琴!俺がろうそくの火を消す可愛い真琴を写真におさめるから」
皆、口々に何かを発しながらケーキの周りに集まってくる。
誕生日の歌を歌ってもらったときは、嬉しいけど少し恥ずかしかった。
そんな誕生会を終えた、次の日の朝。
「じゃあ、行ってくる。二人ともケンカするなよ」
「了解!」
「はーい」
……やけに素直だな。
「…何かたくらんでるんじゃないだろな?」
「…え"っ!?」
「そ、そんなわけないよ、真琴っ」
「こら、くっつくな凪」
ごまかすように抱き着いてきた凪を引きはがし、玄関に立つ。
「行ってきます」と二人に言って部屋を出ていった。
廊下に出てから、歩幅がどんどん大きくなっていく。
……まだ10時じゃないけど、もう待っているだろうな…旦那。
約束の30分前くらいには待ち合わせ場所にいる人だし。
急いで寮を出て、門番さんに門を開けてもらう。
ぐるっと塀に沿って歩くと、校門の前に立っている旦那が目に入った。横にバイクが止めてある。
「──千尋さん!」
耐え切れず、遠くから叫んで旦那の方へ走っていく。
息を切らして目の前に辿りつくと、旦那はタバコの煙を吐いて俺をじっと見下ろした。
「お前……遅刻してねぇのに、何で息切らして走ってきてんだよ。バカか」
「だ、だって…、その、早く旦那に近寄りたくて。……会いたかったです」
見上げて、今の心情を打ち明ける。すると、旦那がふっと口の端を上げた。
わ、笑ってる…。
俺がちょっと驚いてドキドキしながら見てると、旦那が口を開いた。
「抱きしめたくなるようなこと言うんじゃねぇよ…真琴」
「え…?」
「可愛い奴だな、お前」
「う…」
大きな手で頭を撫でられる。
千尋さんが言う"可愛い"は、時々…何か照れ臭い。
「あ、あんまり撫でないでください…」
旦那の胸に手を置き、押しのけようとする。
……お?
やっぱり千尋さんの胸筋、かたいなぁ…。
べたべたと千尋さんの胸板を触ってると、旦那が咳払いをした。
「……てめぇ、何してやがる」
「あ、すみません」
我に返り、苦笑いを浮かべる。
旦那は浮かない表情でため息をついた。
やべ……怒った?
「…早くケツにまたがれ」
「あ、はい」
言われた通りにバイクの後部座席に跨ると、ヘルメットを渡された。
装着してると、旦那が話しかけてくる。
「腹減ってるか」
「いえ、食べたばっかなんで」
「ならジムに寄った後に飯にするか」
「はい」
こくんと頷くと、旦那がわからないぐらいの微笑を浮かべる。
……が一転。急に表情が険しくなった。
「……おい」
「な…何?」
「これ、誰につけられた?」
「…っ」
首筋を撫でられ、息が漏れた。
何の事かさっぱりわからなくて、バイクのミラーで確認してみる。
……あ。キスマークだ…真知先輩がつけたやつ。
視線をさまよわせ、ぼそぼそと答える。
「これは…その、虫さされで」
「てめぇの嘘はすぐ分かんだよ。俺をなめんな。…言え、真琴」
「……」
これ以上旦那に女々しい奴だと思われたくないのに。真知先輩のバカ…。
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