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嫉妬(3/7)
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多分今は殴り方(?)を教えられてるんだと思う。
「まこ……だ…じょぶ…かな…」
「心配ですよね…僕、ストーカーやめてそばにいきたいよ…」
ワンコ先輩とチワワくんは心配げな表情で真琴を見るけど、会長と西條は千尋さんを睨むように見てる。
「真琴にベタベタ触りすぎ…。真琴が寮に帰ってきたら、あの人が触ったところを全部触り直す」
「あいつ、教え方がうますぎるな。本物じゃねぇか……?」
「本物ってどういう意味すか?会長」
「そっちの道のプロか、"や"の文字がつく奴じゃねぇの」
いや、"や"のつく人と常識人の真琴が絡むのはありえないだろ。
プロ…ボクシングとか…?
「真琴、俺はてめぇが自分の身を守れるように教えてんだ。
……だから自分からケンカふっかけるようなバカなことは絶対にするな」
「……はい」
運動を終えた2人は壁で仕切られている個室でシャワーを浴びたあと、ロッカールームに戻ってきた。
真琴は腰にタオルを巻き、別のタオルで髪の水分をふきとっている。
が、途中でその手が止まった。
…真琴の視線は、隣の千尋さんの鍛え上げられた腹筋に注がれている。
うっとりとその腹筋を眺めた真琴は、視線を落として自分のお腹を見る。
するとシュンとした表情で落ち込んだ。
うはあああああ真琴可愛い…!
しおらしい顔がたまんねぇ。
……にしても真琴が筋肉好きだったとは。 俺も鍛えよう。元運動部、がんばります!
横にいる会長と西條も同じような目標を掲げてるように見えた。
チワワくんは……鍛える必要ないと思う。
ワンコ先輩は元々体格がしっかりしてるから、さっきの着替えで見たとき筋肉がついていた。
…攻め要員?それともリバか?
しばらく真琴の様子を眺めてると、千尋さんが口を開いた。
「…チラチラ見てくるな。言いたい事あるなら早く言いやがれ」
「…へ?あ…っ、そういうわけでは」
「なら何だ」
「あ、えっと、いつ見ても綺麗な体してるなぁ…って。俺が女だったら抱かれたいです」
「……」
まっことおおぉォオオオオ?? 何言ってんだ君は。何さらっとやばいこと言ってんだよ!
例えそれが冗談だとしても、真琴が言うと冗談ですまないんだよ…!
ほら、隣にいる千尋さんも白目をむきそうなほど無表情じゃまいか!
千尋さんが黙りこんだのを見て、真琴が自分の言ったことを思い返すように、宙に視線をさまよわせる。
「……あれ…、な、何か…えっと、そういう意味じゃなくて、その…!
大体、野郎に綺麗とか言われてもキモいですよね、…すみませんでした」
あはは…と、ぎこちない苦笑いを浮かべる真琴に、今度は千尋さんが爆弾を投げる。
「…男のままでも抱かれたいと思うか?」
「……!?んえはぁ!?」
んえはぁ、という変な真琴の声に動揺の度合いが表れている。
しばらくあごに手を当てて唸り考える真琴。(そこは考えないでほしい…) 面をあげた真琴はキリッとした表情で言い放った。
「ときどき…そう思うときがあります…!」
真琴……ナンテコッタ。 ここでフラグを建設しないでくれ。
言いきった真琴の眼差しは子どものようにきらきらと輝いていて……って、あれ?
千尋さんという人に対する真琴の好きは"尊敬"に近い気がする。
もっと身近な…そう、身内みたいな。真琴も前にそう話してた。
なのに、敬語に近いような話し方で気を使ってるように見える。
真琴と千尋さんって、どういう関係なんだ…? 全然見えてこない。
早く知ってスッキリしたい。 胸の中がすげーもやもやしてる。
真琴の発言を聞いた千尋さんは、取り乱すことなく真琴に視線を移した。
「なら、抱くか」
「え、困ります」
「はじめからそう言え。…他の奴には"抱かれてぇ"なんて口が裂けても言うな」
「言うどころか、まずそう思いません」
真琴がむっとした表情をすると、千尋さんがその頭を撫でる。
「早く服着ろ。風邪ひくだろ」
ズキッと、胸の奥に痛みが走った。
"早く服着ろ""風邪ひくだろ"は、真琴が普段使っている言葉。
その口癖が、千尋さんに影響されたものだったら…。
千尋さんにものすごく嫉妬している自分がいる。
……恋するって、辛い。
真琴を好きになってから、それを知った。
ゲームだとキャラをオトすために策略をいっぱい練れるけど……真琴の前に立つと、そういうのが全部飛んじまう。
意識すると、緊張してドキドキが止まらなくなるから。
……もっと、がんばらないと。このままの俺だとぜってぇダメだ。
変わらねぇと。
服を着て千尋さんと談笑する真琴を見ながら、強く決意した。
そんな俺の決意を露知らずな真琴は、千尋さんと一緒にジムを出る。
俺たちもこそこそと後を追いかけて、盗聴した音声をイヤフォンで聴く。
「昼飯、どうしますか?」
「好きなとこに連れてってやる。言え」
「肉…焼肉がいいです」
「…ハラミか」
「あ、上のがいいです。ハラミはカルビより食べやすいから……千尋さんは?」
「お前に任せる」
「…なら、晩ご飯は千尋さんが好きなものにしませんか?何が食べたいですか?」
「お前の手料理」
手料理…だと…?何それうらやましい。
そして千尋さんの答えが即答だった件。
対する真琴の返答はリアルだった。
「めんどくさいので、カレーでいいですか?
市販のルーを使えば、野菜とか切って鍋にぶち込めば直ぐだし」
めんどくさいって包み隠さず言ったよ、まこちゃん。
だがしかし、俺は市販のルーを使っていたとしても、真琴の手料理食いたい。
きっと千尋さんも同じだろ。
「……構わねぇよ」
「じゃあ、台所借りますね」
台所…といえばエプロン。
「真琴の裸エプロン見たいな」
「え」
振り向くと、西條が緩やかに口角をあげている。そして、その隣にいる会長は自分の妄想を口にした。
「白いフリフリの裸エプロンがいいな」
「どうしてですか?」
「フリフリは可愛いだろ。それにアレと白のコントラストがたまらねぇ」
「最低。キモイ」
ズバッと言い切った西條と、会長の間でケンカがはじまる。
「白いフリフリはチワワくんのほうがいいんじゃないか?」
「えっ…ぼ、僕、大崎が喜んでくれるなら…やってみる…!」
「やってみなくていいよチワワくん!」
可愛い攻めずるい。…ワンコ先輩はどうなのかな。
「ワンコ先輩はどういう裸エプロンがいいですか?」
話しかけられたワンコ先輩は、ゆっくり口を開く。
「な…でも……いい…。けど…パ…ンツ、…はいた…ほう、いい…」
「どうしてですか?」
「はい…てな…と、…脱がせ…られな…い」
攻め発言キタアアアアアアア!!
え、何?ワンコ先輩って攻めなのか?
ちなみに俺は、シンプルなデザインの裸エプロンがいい。そのほうが真琴に似合ってると思う。
妄想話をしているうちに真琴達がバイクに乗ったため、俺達も急いで車に乗り込んで追いかける。
着いた場所はさっき言ってた通り焼肉店だった。バレないように遠くの席に座り、俺達も昼飯を食うことにした……会長のおごりで。
真琴はメニューを開くとすぐにオーダーした。
「上ハラミ二人前と…ご飯セットのやつ。あ、冷麺も頼んでいいですか?」
「気にしねぇで好きなの頼め」
「あ、じゃあ冷麺一つ。と、ドリンクバー二つ。以上で」
ウエイターが立ち去った後、千尋さんが真琴に問う。
「それだけでよかったのか?誕生日なんだから遠慮するな」
「……覚えててくれたんですか…?」
「毎年祝ってんのに何で忘れんだよ」
「…へへ」
真琴は照れ臭そうに笑うと俯く。
む…っ。モヤモヤムカムカする。今日は嫉妬祭りだな。
その嫉妬祭りは常に賑やかだった。
「真琴、ついてんぞ」
「え?」
もぐもぐとご飯を頬張りながら首を傾げる真琴。千尋さんは手をのばすと真琴の口の端についていた米粒をつまみ、自らの口に放り込む。
真琴はしばらくきょとんとした表情をしていたが、クスッと笑った。
「…どうした?」
「俺の友達にも、ハンバーグのカケラを口の端につけてた奴がいたなと思って」
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