アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
トゥルーラブ(1/8)
-
俺は……旦那が大好きだ。
だから、旦那の為に生きる。
自分の中で無理矢理決定づけると、何だか少し楽になった…が。
この後ろめたさは一体何なんだろう?
旦那と話していて嬉しくても、罪悪感みたいなものを感じた。
「……間違って…ねぇよな?俺…」
狭い風呂場で呟く。
湯船に顔まで浸かって、ぶくぶくと泡ぶくを立てた。
あぁ、胃がムカムカする。
下っ端達が作ったスラ○ムみたいなケーキを食ったせいかな。
旦那は……カレーは全部食ったけど、ケーキは一瞥しただけで口にしなかった。
だから、俺がケーキを1人で頑張って平らげた。
う…っ、何か吐きそう。今日はもう色んな意味でダメだ。
「…早く寝よ」
起きてると目をそらしたくなるような事を考えてしまう。
明日、寮に帰ったらみんなにどんな顔をしたらいいのか…とか。
頭の隅に追いやるようにかぶりを振った。
「……何ため息ついてんだ」
「へ…っ?あ、いや…」
風呂から上がって腰にタオルを巻いてると、突然旦那に声をかけられた。
ビールを片手に、俺をじっと見下ろしてくる。
な…何?
「お前、少し肉ついたんじゃねぇの」
「え、そうですか?よく分かりますね」
「…見てりゃ分かる」
「……」
ずっと俺を支えてくれた旦那。
そんな旦那が望むことを実行するのは……間違ってないはずだ。
……例えみんなと縁を切ることになったとしても。
「……おい」
「…!は、はい?」
「ちょっとこっち来い」
「……!?」
見上げた視線の先には、般若のような顔をした千尋さん。な、何故!?
おろおろしながら旦那の鋭い視線を辿ると、俺の首筋あたりに注がれていた。
あ……分かった。キス…マークだ…。
隠すように手の平で覆うが、千尋さんは決して目をそらそうとしない。
やべえ…殺られる…えぐりとられる…!
誰か助けてくれ…!
旦那は逃げようとする俺の手首をガシッと掴むと、洗面所に乱暴にビール缶を置く。
そしてその手で俺の顎を掴んだ。
「だだだだ旦那あぁ…っ」
「動くな」
「ひ…っ」
旦那の鋭い眼光が俺を黙らせる。 本能的な恐怖で喉がひゅっと鳴った。
旦那は硬直状態の俺の首筋に顔をうずめると、そこに唇を当てる。 え……ああぁヤバイ…。 えぐりとられるんじゃない。
"噛みちぎられる"だ…!
情けなく足をガタガタさせ、小刻みに呼吸をする俺。
刹那、ジリィッとした息が詰まる位の鋭い痛みが首筋に走った。
「ふ…ぐうぅっ…!い"……っでえええぇえッ!!!」
「ぎゃあぎゃあうるせぇな」
痛い痛い痛い…! えちょっと待ってまじのまじで噛みちぎられたんじゃねだって尋常じゃない位痛かったし今も痛いいぃうぅ…っ。
へたっと床に座りこみ、息を荒く吐く。
恐る恐る痛む場所に手をやると……!
なんと血が「出てねぇよ。噛みちぎるわけねぇだろ、バカかてめぇは」
……うん。意外にも出てなかった。
「てか、独り言聞かないでください…」
「言う奴が悪いんだろーが」
「…一体何したんですか?本当に痛い…」
よろよろと立ち上がり、鏡を覗く。……!?
「え…!?なななな何これ…っ」
「消毒」
「消毒…!?」
以前真知先輩が付けた"印"の場所は、…今までで見た事ないくらい赤黒くなっていた。
消毒…上乗せ?で、旦那もつけたのか…?
つか、人間の皮膚ってこんなに赤黒くなるんですね…!
「加減してくださいよ…!…っ、痛ぇ…」
「跡を完全にかき消すって言ったろ」
「そんなの知るか…!…これ、絶対消えるのに時間めちゃくちゃかかるし…!」
「そりゃあよかった」
旦那は悪びれた様子もなく小さな欠伸をすると、俺に背を向ける。 ぐ…っぬぬぬぬ! ……
いいもん。ふて寝してやる。 話しかけられても旦那が謝ってくるまで無視しよう。
…髪を乾かしたあと、布団を敷いて寝転ぶ。
もそもそと掛け布団の中に入ってぬくぬくしていると、風呂から上がったらしい旦那が部屋に入ってきた。
「俺の分の布団も敷けよ」
「……」
シカトすると、旦那が嘆息しながら布団を敷く。そして敷き終わるとタバコを吸い始めた。
……寝タバコは危ないからしないでほしいって言ってるのに。
盗み見ると、上半身裸の千尋さんが白い煙を吐いている。
「…真琴」
「……」
「シカトするな」
ふん…っ。簡単に折れるものか。
無視を続けてると、旦那の手が俺の髪に触れた。思わず、肩をびくっと揺らしてしまう。
「…これ以上寂しくさせるな……真琴」
「……っ」
耳元で囁かれた言葉。
胸にツキン…とした痛みが広がった。
何か…ずりぃ。
眉間に皺を寄せ、ゆっくり振り返ると旦那が俺の髪を撫でた。
「……謝ってください」
「…悪ぃな」
「……」
……俺を見つめてくる千尋さんの眼差しが…優しく感じる。
それはきっと、旦那の気持ちを知る事が出来たからだ。
「旦那……」
「あ?」
「いつ…いつから、俺のこと、必要としてくれてたんですか…?」
「…兄弟盃を交わした辺りだ」
「……そんな前からですか?」
今まで一度も甘い言葉を耳にしたことがなかった。
……今の学校に通うようになってからだ。
旦那が俺を「好き」と言ってくれたのも。
「ずっと言わねぇつもりだったが……お前、鈍いからな。はっきり言わねぇと進まねぇ」
それは"不安"だから…?
俺の頬に触れてる旦那の手をそっと掴む。
俺は千尋さんにとって、どの辺りの存在なんだろう?
弟…辺りだと、自惚れていいのかな。
……聞きたいけど、胸の内にとどめておく。
千尋さんが俺をどう思っていようと、俺はずっとついていくし…。
「…明日、宮城と出掛ける。帰ってきたらお前を寮に送る」
「どこに行くんですか?」
「山」
「何ですか、それ。山に死体埋めに行くみたい…」
「誰も殺ってねぇよ、バカ。…その逆だ」
「……死体探し?」
「…この間、組抜けた奴らがいるだろ。そいつらの行方が分からねぇらしい」
「……」
「…万が一俺に何かあったら宮城を頼れ。いいな?」
「……はい」
嫌な予感がする。千尋さんも何となく感じてるんじゃないか?
…最近、平和すぎたからな。
「出掛けてる間、整理しておけ。…宮城の奴の別件だが、そっちもなるべく早く片付けねぇとな」
「何かあったんですか?」
「……自分のシマに薬が流れているらしい。脱法のな」
「脱法はいたちごっこですからね…考えておきます」
枕に顔をうずめて答えると、旦那はタバコを揉み消して部屋の電気を消す。
「…悪い知識だけ増えちまうな、お前」
「おかげで法には詳しくなりました。……俺、後悔なんてしてません。千尋さんと一緒にいることができて幸せですから」
「…可愛いこと言うんじゃねぇよ」
「可愛いは嫌だ。どうせならかっこいいって…」
「お前にゃ一生無理だな」
「なっ…!」
「おやすみ」
「ぐ…っ」
自分がかっこいいからってずりぃ。
フンッと鼻を鳴らし、不満を表してから布団の中に潜りこむ。
……疲れていたせいか、眠りの波がすぐに襲ってきた。
──心地よい眠りのあとは、是非とも気持ち良い目覚めが好ましい。
が、翌朝俺を迎えたのは、とんでもないハプニングだった。
「え…………?」
寝ぼけた俺の眼が最初に映したもの。
それは千尋さんの胸板だった。
少しずつ現状を理解すると同時に、冷汗が流れ出す。
俺……何でまた千尋さんの胸に寄り添って寝てんの…?
……今までも何度かこんな事があった。
寒い時期になるとしょっちゅうこんな怪奇現象が。
旦那を起こさないように離れるという、神経をすり減らす戦い。
てか俺…まじキモイんですけど。
だってこれ、ある意味夜這いじゃないか?
「旦那……本当にすみません」
わざとじゃないんだ。
どうかこの気持ち悪い男子高校生を許してくだせぇ。
そろそろと起き上がり旦那から離れたあと、眠る千尋さんに土下座する。
その直後、旦那が寝返りを打ったからビクッと跳ね上がってしまった。
「……ん…」
「……!」
脱出が遅れていたら危なかったかもしれん。
ホッと息をつき、ずり落ちている掛け布団を旦那の体に掛け直す。
──朝食でも作ろう。
そう思って立ち上がろうとしたとき、また何かが起こった。
「……!…え…っ」
手のひらに、温かい圧力。
見ると、千尋さんが俺の手のひらを握っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 63