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二月十三日
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二月十三日
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『おーっす!昨日は寝ちゃった悪い(^○^)』
『昨日も、だろ。寝落ちすんなはげ』
『上も下もふっさふさよ?触ってみる?^_☆』
『朝から阿呆なこと言ってんなよ。また学校でな』
『(^○^)ノシ』
夜
****
『今日出た課題やったか?』
『やってない( ・´ー・`)』
『何でドヤ顔なんだ。やれよ。すでに二十二時半過ぎてんだぞ。さっさとやれ』
『もう( ・´ー・`)やらないで通す( ・´ー・`)』
『俺らが受験生って忘れてないか?叱られても知らんからな』
『(ゝω・)テヘペロ』
『そいやぁ明日はバレンタインだろ。チョコを貰う予定あるか?まぁ、あるに決まってるか』
『\(^o^)/な\(^o^)/い』
『はべらしてる女からも貰えないとは可哀想な奴め』
『どうせ正樹もだろ。買ったろか?\(^o^)/』
『馬鹿にしてんのか。男からのチョコなんぞ、いらんわ!』
『照れてんの?ツンデレ?( ̄w ̄)ぷっ』
『黙れ』
『(ゝ。∂)⌒☆チョコクレヨって正樹のために手作りしたろか?』
『黙れ』
『黙っていいの?寂しかろ?(^ω^)』
『阿呆とメールする暇はない』
『おーい』
『おーい』
『寝たか?』
『おーい』
『また寝落ちか?』
『起きろって』
『怒った?』
『ごめん』
『起きろってば(;_;)』
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笑うたびに、あぐらを組んで座っている床が軋んだ音を耳へ届けてくる。スマフォの画面に映った自分の顔が、だらしなく緩んでいるように思えた。
この、普段は嫌っている絵文字を使ってまでも必死に呼びかけてくるメールが見たくて、いつも寝落ちを装う。朝になって、酷いじゃあないかと毎回罵られようとも俺は、正樹を好きな限りそれを演じ続けるだろう。
しばらく待ってみるとメールが止んだので、ベッドに入りまぶたを閉じる。
アラームで目覚め、すぐさまスマフォを手に取る。朝の挨拶をメールで送ってみると――ほら、すぐに返事がきた。
いつもと同じ、朝の八時半に。
『俺とメールしてて寝落ちすんなって、何回言わせれば気が済むんだ!ふざけんな!』
胸がキュンとした。求められていることを実感する。正樹は単に友人としてメールを送ってくるのだろうけれど、俺にとってそれは――
机の上に置いてある、すでに用意をしていたチョコレートの箱を眺める。
あぁ……顔のにやつきが当分治まりそうもない。
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