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三月十五日(最終話)
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窓の外から聞こえてきた雀のさえずりで目が覚めた。
まだ正樹を抱いていた腕をそろりと外す。枕もとに置いていたスマフォへ手を伸ばし、今の時刻を確認しようとしたその時、正樹も起きたのか……それともすでに起きていたのか、こちらへ顔を向けぬまま身動きをし始めた。
スマフォの画面を確認。朝の八時三十四分。
幸福感に軽くため息が出る。
話しかけようかと口を開いたのだが、スマフォのメール着信を示す振動にそれを止めさせられた。
朝っぱらから誰なんだ。邪魔をするな、って……正樹からのメールだ。
『起きたか』
『起きたけど、隣にいるのに何でメールしてくんの(:D)| ̄|_...ん?』
『ちょっと今までのメールを読み返しててな。色々今気づいたわ。二月二十日の、あのなぁ、いい加減さぁってメール。句読点で区切った最初の文字を拾い読みするんだろ?あいしてるとか、お前さぁ』
『さすがに今更気づかれると恥ずかしいんですけどぉぉノ)゚Д゚(ヽ』
『あと、二十八日のやつ。こんこんきつねとか、意味不明なことをいきなりメールし出したかと思えば、これも最初の二文字抜き出しだろ。こんなにあいしているのにつたわらないのな、って阿呆か』
『ノ)゚Д゚(ヽ』
『三月三日のそれまこそおま前にしかっての。好意を前面に押し出しているのは俺にしかしてないって…何なんだこの知恵試しみたいなやつ。こんな阿呆な事してんじゃあねぇよ』
『うわぁぁぁぁ<(T◇T)>ふぁぁぁぁぁ!<(T◇T)>』
『うるせぇ』
『正樹こそメールじゃあなくて直接口で言ってこいよ!ヽ(`Д´)ノ文字だと余計に恥ずかしいわ!』
『や、ちょっと言いたいことがあってな。やっぱり口では言えそうもないからさ』
『何なに、なぁに。昨日のキスが下手くそだったとか言われたら俺、ショックで生身のまま宇宙へ飛び立つぞ(;OдO)』
『そして凍りつくのか。阿呆め…って、そうじゃあなくてだな』
『(^ω^)』
『一度しか言わんからな』
『(`・д´・ )』
『気づくのが遅くなって悪かったな』
『俺もお前が好きだよ。愛してる』
『おい、返事しろ』
『流石に恥ずかしいからさっさと返事しろ』
『おーい』
簡単に言うなよ。そんなの無理だ。胸が詰まって――涙腺が緩んで。うまく呼吸すらできない。
正樹が振り向いてきた。
「何で返事しないんだ――って、何、泣いてんの」
ああ、顔を隠す余裕もなくて、思い切り見られてしまった。
涙で揺れる視界の中、正樹の顔がゆっくりと降りてきて――頬に触れてくるその、唇。
「馬鹿だなお前。泣くな」
頬にキスしたまま、そこで囁くなよ。そんな甘く、言わないでくれ。もう駄目だ。声が出ない。
震える指で、スマフォを操作する。返信画面を正樹の目の前に突き出した。
『(;_;)』
ふっ、と息を吐くような笑い声が耳に届いてきて……手で、スマフォをそっと振り払われた。
「もういいから。もういいからさ。泣くなよ。悪かった。ずっと、ずっと悪かったな」
優しく頭を抱かれた。その胸の中でつい、しゃくりあげてしまって。
「タコスケ。顔を上げろ」
微かに弾んだ声へ従ったら、にやりと吊り上った唇に軽くキスされた。
(ここまででLOVEメールは完結となります。続編であるそんなお前とエロメール、は18禁となるので別のBOOKで公開いたします。書き下ろしおまけなどもそちらへ加えてゆく予定ですので、よろしければどうぞ。準備ができ次第、連載してゆきます)
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