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変わり目
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「さ…くら」
何か続きを言わなければと思うのだが何を言えばいいのか分からない
気まずい沈黙が続く
先に沈黙を破ったのは桜だった
「…昨日はごめん…」
「…いいっていったじゃん」
また沈黙が訪れる
次に沈黙を破ったのは俺だった
「それだけなら帰って」
「ちょっ…まっ!」
「なんなんだよ」
俺のことなんか好きじゃないくせに
握りしめた掌に爪が食い込む
桜は気まずそうに目線を逸らしている
「…なに?…また俺とヤりたいの?」
桜は俺なんか見てないって思い知らされて
もうどうでもよくて、嘲るようにそんなことを言った
桜は驚いたように、悲しそうな顔を向ける
なんでそんな顔するんだよ
そんな、傷ついたみたいな
さらに爪が食い込む
「お前も振られたんだっけ?いいよ。ヤらしてやるよ。俺も振られたばっかなんだろ?傷の舐め合いでもするか?」
また、嘲るように言った
ぜんぶ、どうでもよかった
桜はより一層悲しそうな顔をする
「っちがっ!俺は…!」
「とりあえず入れ」
ここは玄関先だし近所の目もあるので家に上がるよう促す
「…わかった」
「…ほんとにごめん」
桜は俺の部屋に上がるとまたそう謝り始めた
さっきまで押し殺していた気持ちがどろどろ溢れてくる
「…なんなのお前。そんなに俺を惨めにさせたいわけ?」
「ちがっ」
「じゃあなんなんだよ!!さっきからごめんごめんって!!それは俺を手荒に抱いたことに対してか!?俺を好きな奴と重ねたことか!?それとも好きなやつに後ろめたさでも感じてんのか!?」
「そんなつもりじゃっ…!」
「じゃあどういうつもりなんだよ!別にいいっていってんだろーが!…………っっ!」
溢れたどろどろは留まるところを知らない
「これ以上惨めにさせんな……っっ!」
「…っお前にそんな顔させたいわけじゃない…っ」
いつの間にか俺の目からは涙がぼろぼろこぼれ落ちていた
震えた声で桜が俺に言う
「どうしたらいい…?…どうしたら笑ってくれるんだ…っ?」
きっとこいつは幼馴染の関係に戻りたいんだろう
昨日の過ちを悔いているのだろう
働かない頭でぼんやりそんなことを思う
でももう俺にはこいつを友達としてなんて扱えない
あの獣のような眼を、吐息を、汗を、匂いを忘れることなんてできない
もう、知ってしまった
桜は優しい
優しすぎる
だから付け込まれる
俺みたいなクズに
「…抱けよ。忘れたいんだよ」
お前の隣に居られるなら俺はどんな嘘でもつく
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