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恋スルキモチ 梶原SIDE 2
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きっかけは二年の春。
始業式から数日経ち、クラスのみんなはすでに新しい環境に適応しつつあった放課後。未だに馴染めずにいた俺は部活の疲労感とともに下駄箱へと向かった。
暗くなりそうな、少し雲に移った夕焼けが見える玄関の窓。
『辛気臭そーな顔やな。』
横から急に声をかけられて驚いて振り向く。
わ、川本やんけ・・・。なんやねん。
俺を気にする風でもなく面倒くさそうにスニーカーへ履き替える川本。
周りを窺うが、いつもの取り巻きはいないようで、やはり俺に言ったのかと理解しながら、川本の無礼さに小さく苛立った。
こういう奴には構わん方がええ。
そう判断した俺は靴紐を丁寧に結び直す川本を尻目に無視を決め込み、足早に靴を履き替えると、踵を踏みつけたまま玄関の扉を潜り抜ける。
『梶原やろ?』
踵を直しているすぐ後ろに追いついた川本が再び話しかけてきた。名前を呼ばれてしまえば、さすがに気付かなかった振りをして無視は出来なくなる。
『・・・は?何?』
『お前、梶原って名前やんな?』
そうやけど、なんで知ってんねん。
素朴な疑問は自分のスポーツバッグに小さく書いた名前を見て納得した。同じクラスというだけでこいつが俺を知っていた訳ではない。もし仮に知っていたとしても、どうせ禄でもない事に利用するに違いない、とそう思った。
答えずにいる俺に何を思ったのかは読めないが、それでも気にする様子はなく、川本は鞄を持ち直して続けた。
『ラーメン、食いに行かへん?』
拍子抜けした。
もしかしたら万が一にでもカツアゲされたりするかもと警戒していた反動で余計に。
なんで?
なんで初めましてぎみのお前とラーメン食いに行かなあかんの?
アホちゃうか、こいつ。
それとも誰ぞと間違ってんちゃう?
『なぁ、ラーメン。行こて。』
答えられずに硬直していた俺に焦れたのか先ほどよりも少し声が大きくなり、それに焦った俺は疑問や抵抗を見せる事も忘れて訳も分からず
『ええけど。』
と答えるのが精一杯。
『腹減ったなー。遊楽亭の方にする?あそこのチャーシューうまいよな!』
『俺、駅の近くのんがええ・・・。』
『源ちゃんかいな。あそこも悪ないな。お前、醤油ラーメン好きなん?』
『味噌ラーメン』
『は?味噌なら遊楽亭やんけ、アホちゃう。』
『うっさいなぁ。』
自分のスポーツバッグで俺の鞄に軽く当てながら突っ込まれ笑われるこの空気はまるで前から友達であったかのように、奇妙に馴染む感覚だった。
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