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恋スルキモチ 梶原SIDE 4
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しばらくぼうっと見つめていたら、いつの間にか目を覚ましていた川本と視線がぶつかる。
あっ、と思わず目を逸らしてしまった。
なぜだか分からないがそうしてしまわないとダメなような気がして、その行動に自分でも多少の驚きと小さな疑問が浮かぶ。
なんで逸らさなあかんねん俺・・・。
なんか後ろめたい事でもあるみたいやんけ。
驚いたせいだろうか、心拍数が上がった。
なんでやねんっ。
少女漫画に出てくる女みたいな反応は!
川本に恋してますってか?めっちゃきしょいやんけ!
自分に対するツッコミのつもりが、そう意識するとなおさら心臓の音が体中に響くように感じた。
「こら、なんやねんその態度は。」
俺がしどろもどろになっている間に目覚めた川本が近づいてきて、肩を軽く叩かれる。
朝シャン派の川本からほのかにシャンプーの香りがして、それを感知した自分がなぜか恥ずかしくて慌ててしまった。
「どないしてん。」
「な、なんもせぇへん。」
一瞬上ずった声に気付かれたかと思ったが、
「まぁええわ。それよりなー、」
頭によぎった世迷言を奥に押し込め、昨日の夕飯の唐揚げを弟に横取りされて腹が立った事や、数学教師の新山女史40歳の無駄に短いスカート丈に対する不満を思い出して平常心を取り戻す。
その間に川本が何かを鬱陶しそうに話しかけてきてはいたが俺の耳には届かず、そのせいかふと視線を合わせると苛立ちを惜しげもなく露わにした川本が俺を見下ろしていた。
「お前聞いてへんやろボケェ。」
「聞こえへんかった、、、周りうっさいから。」
嘘をつくなとばかりに無言で肩を殴られ、しかし追及はせずにため息を吐いたあと俺の耳元に近付いて囁く。
「午後サボんで。部活ないし、飽きたし。・・・たこ焼き食うてこ。」
吐息がかかってくすぐったいのとぞくっとする感覚。川本の匂いが濃度を増して感じられる。誰かに聞かれないようにとの配慮のつもりなのかもしれないが、せっかく収まっていた動悸が再び、先ほどよりも大きく鳴り出してしまった。
俺今むっちゃ顔赤いんちゃう?
いつの間にか握り締めていた手がじんわりと汗ばむ。咄嗟に手の甲で顔を隠そうと口元へやると、鼻の下にかいていた汗に気付いて余計に焦りが増長した。
「え、ええけど。」
さり気なく川本から離れて耳を押さえる。
なんでやねん、俺!
どっかおかしいんちゃう?
意識してるみたいになるやん!
「何お前。顔、タコみたいに真っ赤やんけ!」
心配していた事を指摘されたせいでさらに顔の熱が上昇してした。
「うっさいな!」
もう触れてくれるなとの願いを知ってか知らずか、川本はさっさと席へ戻っていく。
・・・・ホンマ、なんなんこれ。
俺ホンマに、川本の事好きみたいな、
そう心で問いかける途中で、いきなり腑に落ちた気がした。
自分の気持ちに気付いてしまったと言う方が適切なのかもしれない。
訳の分からなかった焦りや動悸の理由も、いつも追っていた目線の先と。
え、待って待って。
俺、川本好きなん?
す、好きやけど、そういう意味じゃなくて、ホンマ・・・。
脳みそが自分の感情に追いつかない。情報処理がどこかでバグを起こしたように、否定しようと躍起になってみてもエラーばかり。
俺・・・川本の事・・・
点と点が繋がり、ひとつの線になる。
好き、なん。
自覚した途端に新たな焦りと不安が浮かんできた。
いくら親しい友達だからとはいえ、好意を履き違えて認識してしまった自分の感情を、川本に知られてしまう事への恐怖が心臓を絞るような痛みとして現れる。
あかん。こんなん。
おっきい男が、同性の、しかも川本を好きやなんて。
きしょい・・・。
何よりも怖い。
「タコ原さん、行こ。」
クラスメイトに気付かれないように鞄を持ってきた川本に肩を突かれて促される。
先ほどの茹でるような暑さと熱はなく、冷えたような汗が俺を包んで、先を進む川本の後ろを付いて騒がしい教室を後にした。
END
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