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センチメンタル 梶原SIDE 4
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川本に好きなやつがいたというのは想定外だった。いや、考えていなかった。
よく考えれば、いない訳がない。俺たちは思春期真っ只中の男子高校生なのだから。
横から頭を殴られたような衝撃と、混乱した自分の思考を必死に寄せ集めて考えをまとめようと努めるが、作業は一向に捗る気配はない。
川本は相変わらず手持ち無沙汰なのか何度かチャンネルを変えてはやはり諦めたように元の番組に戻した。
「おもんないなー・・・。この曜日の深夜。」
ぽつりと呟いた川本の言葉が合図のように俺の感情は口から溢れ出た。
「川本。」
「あ?」
俺を見ず、掴んだ柿ピーを意味なくライターで炙る川本。
「好きな人って誰なん。」
この際俺の気持ちよりも川本の相手を知りたかった。島田もいない状況はうってつけで、仲がいい俺には言えるはずという驕りもあったのだと思う。
相変わらずこちらを見る事はなく柿ピーを一口食べて吐き出した川本は
「なんで教えなあかんねん。」
と面白くないと言わんばかり。
「知りたい。」
考えるよりも先に口が出てしまうのはすでに自分が酔っているせいなのか。聞かなくていいと制止する自分の心に耳を傾ける事をしない。
「なんで。」
今度は俺を見て、それでも不機嫌そうな顔をしていた。
「なんでって・・・。気になるやん。」
「なんで気になんねん。」
むしろなんで聞いたらあかんねん、と言いたかったそう言えるオーラではないと普段の川本の雰囲気との違いで察した。
友達やから聞いている、は俺にとっての言えない一言だ。
好きやから気になる。
なんて更に口が裂けても絶対言えない。
「けちー。」
この空気を打破する本当の正解を俺は知らなくて。小さくおちゃらけて有耶無耶にするしかないのだ。
「お前は?」
「へ?」
「お前のん先言えや。そしたら教えたるわ。」
そう小さく笑った川本。そうやってサッカー部のみんなの情報を集めたのだろうか。
疑いは猜疑心を生み出し、酔っ払いの俺は浅はかにも騙されへんわ!と一人相撲をしてしまう。
そうじゃなくても、とても言えない。
俺が好きなんは、川本やって。
沈黙の合間に気付いたが、まず否定すればよかったと後悔した。
好きな奴おれへんと、そう言っておけばよかったのに、多分きっと川本には気付かれてしまっただろう。
そしてそれを今更口にしたところで信じてもらえないどころか聞き出すまで粘られるのは分かっていた。
沈黙の口火を切ったのは川本。
「言われへんのやったら人に聞くなや。」
といつものような人懐っこい顔を覗かせた。
「・・・島田たちのん聞いたお前がそれ言うん?」
「あいつらが勝手に部室で話し出しただけじゃ。」
それっきりこの話題はタブーかのように二人でしばらく沈黙のまま、無駄に流れるテレビ番組を見て過ごした。
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