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スタートラインY その2
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梶原Side
「聞いたー?」
授業終わりにクラスの女子が話しかけてくる。
蛍光灯で煌々と明るい教室とは対照的に窓の外にはどんよりとした灰色の分厚い雲が下界を覆っていた。
「今度の22日、クリスマスパーティー兼ねてクラス会やんねんな。梶原も参加出来るー?」
そういえばもうそんな時期にきていたのかと、黒板の日付を改めて眺めた。
「行くーーーー。俺行く行く行くー!!」
はしゃぎきった島田が横から手を上げて入ってきた。毎度ながらいつもよくそんなに元気でいられるもんだと心の中で悪態をつく。
「他にも誰か行くて言うてる?」
「川本も行くて!梶原も!なぁ?参加にしといてー。」
「了解っ。」
他に出欠を取りに回る女子に拒否するヒマもない。
何勝手に答えてくれとんねん。
・・・川本も行くんかぁ。
そんなら俺も参加しようかな・・・。
なんて暢気な事を考えながら教室から出ていく川本の背中をぼんやりと見つめ、後ろに続こうとする俺に、島田が肩を組んで無理やり引き寄せた。
なんやねん!、抗議しようとする俺を遮って島田が耳元で囁く。
「どうやら川本の本命、このクラスらしいぞ。」
途端に心臓を掴まれたようにぎゅっと痛みが走る。
「・・・なんでそんなん知ってんねん。」
心なし島田に合わせた声のトーンで尋ねるが、いたずらっ子のようにニヤニヤ笑う島田に一抹の不安を覚える。
「部活終わりにしつこくしつこくしつこーーーーく聞いたんやけどな。」
「言うわけないやん・・・。」
そうだ、川本は言う訳がない。
なんだかんだと確信めいた決定打は絶対に自分の口から言わない男だから。
「そう思うやん?・・・でもあいつ気ぃ短いやろ?」
「まぁ、イラチやな。」
「俺らがな、あんまりしつこいからすぐ怒りよんねんけどー。」
想像出来てしまう。あいつのキレる様子が。
「千本ダッシュ邪魔しながらそんでもしつこく聞いてたら案の定ブチ切れそうになってよー。」
「・・・そら怒るやろ。俺でもキレるわ。」
「慌てて、クラス一緒か!?て聞いたら『そうじゃ!!』言うて・・・・結局ブチ切れて肩パン食ろてん。ガチのやつ。もうガチパンや。」
わざとらしく痛そうに二の腕を撫でる島田に俺も肩パンを食らわせてやりたい。
うちのクラス・・・。
聞きたくなかった。
知りたくないといえば嘘になるし、自分だけ知らないなんて嫌だと思うのに、それでも聞いてしまえばやはり知りたくなかったと自分勝手な考えが浮かんだ。
好意を寄せるその相手が具現化していく度に、川本へのアホみたいな恋心を振り返っては罪悪感で胸が押し潰されるように痛くなる。
諦めなければならない事を強く意識して苦しくなる。
好きをやめる事なんて出来んのか・・・?
俺にはまだ、出来ない。
自分の気持ちを自分が否定するなんて。
今だって、脳みそが勝手にクラス中の女子を思い浮かべては選別を繰り返している。
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