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スタートラインK その2
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自主的にサボろうなんて梶原にしては珍しくて、気になって思わず追いかけた。
俺が見つけた学校の秘密基地。
立て付けの悪い扉をギィと音を鳴らして開けると、やっぱり梶原はそこにいた。
「・・・ここか。」
俺が隣に座っても、腕で瞳を隠して無視を決め込む梶原を都合よく思い唇を盗み見た。
少し厚めな梶原の唇に、甘噛みしたい衝動。
「よぉこんな寒いトコで寝てられるな。信じられへん。」
小さく湧いた欲を抑えつつ、ベストの袖を伸ばして口に当て、白い息を吐きその先を目で追う。
寝たふりをして俺の隣に寝転ぶこいつは、今一体何を考えているのだろう。
元々悩み癖のある梶原は、また勝手に悩んでいるようだった。
「なぁ梶原ー。」
「・・・・・・・・。」
止めない狸寝入りに痺れを切らした俺は梶原の腕を掴んで顔を覗き込む。
「っ」
梶原は外の眩しさに眉間に皺を寄せ、大きな黒い瞳が小さく驚いたように揺れるのを見て俺は満足した。
「起きてるやん。たぬ吉。」
立ち上がって見下ろしたグラウンドでは多分一年生がマラソンをしているのだろう。
頭の悪いこの学校で体育の授業は美術と並んで好きな教科だが、マラソンは好きではない。
フェンスを掴むと鉄の冷たさが指先へ伝わった。
「・・・・・・なんやねん。」
「元気ないからよぉ。」
起き上がった梶原の不貞腐れたような声に、俺は振り返らずに話を続ける。
「元気あるよ。」
なんてどの口が言っているんだ。
「そうかぁ?」
いつものように誘い水を向ける。
「俺はまた・・・恋のお悩みでもあるんか思たけどな。」
言うと同時に振り返れば俺を見ているようで遠くを見ている梶原の瞳。
まっすぐな視線のその中心にいたいと思うのは俺の自分勝手な欲のせい。
「あったらなんや。」
随分投げやりに言い捨てた言葉に睨むと、まずいと思った梶原の慌てる様子が面白い。
だからまた、ほんの出来心。
「・・・・ほんなら。キスの方法教えたるわ。いるやろ、お前も。」
俺にしか使わせへん、とは言えないが。
何が起こっているのか分からず動揺を隠せない梶原の顔が間抜けで、かわいい。
「こうやってな、ここポイントな。」
わざとらしく教えるように、引き寄せる。
「こうやって、」
いつも隙を見て触っている梶原の頬は、外の風に長く当たっていたせいか冷たくて、それでも真っ白なその肌には何度も触れてしまいたくなる。
後ろに逃げそうになる梶原を離さず顔を近付けると、寸止めするはずだった唇がほんの一瞬触れ合った。
あ、ヤバイ。
こんなイタズラせぇへんかったらよかった。
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