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雨と群青 その4
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梶原とこうなってから分かるのは、ご同類だ。俺調べでしかないがこの高校の全校生徒中、梶原への好意無自覚が二人と明らかに自覚している二人。よりにもよって一人を除き全員男だ。
中でも特に前川。
1、2年の間は一体何をしていたのだと思うほど、最近は部活の話をダシによく梶原へ絡んでくる。
春のせいで頭に花が咲いたのか、もう今年で終わりの高校生活に一花咲かせたいのか、どちらにしろ目障り以外のなにものでもない。
距離が近い。距離が。
夕べのK-1の話でもしているのかその振りを思わせるジェスチャーで梶原の頬を何度もゆっくり掠める拳に腹が立つ。
お前もなんで触らせてんねん。アホ。
敏感で繊細なハートの持ち主は妙なところで察しがいいくせに人の気持ちに疎く、鈍感で隙が多い。
そこにつけ込んだ俺が言うのだから間違いない。
「でさぁ、全然させてくれへんねんやんか。エッチ。」
自分には関係のない話題だとスルーを確定していたが、急に俺自身と重なって思わず耳が傾いた。
「・・・お前そればっかりしつこかったんちゃう?」
言っては自分に跳ね返る言葉になんとも言いがたい複雑な心境。
・・・しつこいか?俺。
やってしゃーないやん。
目の前になんや知らんけどエロい梶原おったら。
普通にちんこ立つがな。
無精していた頃が懐かしい。
今その相手がそばにいるというのに。
想像以上にエロい表情、敏感で触り心地のよい白い肌、欲に浮いたように次を期待する瞳。
それから、快感を紡ぐその甘い声。
あ。あかん。
想像したらまたちんこ立つわ。
「その辺は俺抜かりないねん。今さらがっついたりせえへんて。ちゃんとムードも作るし。せやけど毎回毎回断れてみ?分かるやろ、お前も。」
「せやな・・・。」
いくら遊び人の酒井と言えど、その事実にだけは他人事と思えず同情せざるを得ない。
「そういえば川本も前おんなじような事言うてへんかった?えっとぉ・・・名前出てけえへん。」
「亜希か?」
「そーそれ!させてくれへん言うてなかったか?ほんで別れてたやん。」
「あー?せやったっけ?」
事実はそうではなかったし酒井の中の俺の記憶はどうなってんねんと心でツッコんではみたが、そういう発言を全くしなかったかと言えば否定は出来ない。
でもそれと梶原の話はまた別問題だ。
「とにかく、俺ボディートーク出来へんと無理やねんな。清史くんもそうやろ?」
同意させて俺を探るような最後の言い回しが引っかかった。こいつの中ではきっと俺が誰かと付き合っていると推測していて、何気ない会話の端々から得た情報で外堀をちょっとずつ埋めながら自分の仮説を立証しようとしているに違いない。
あながち間違ってはいないところが恐ろしい。
俺の言葉を待つ酒井の瞳が楽しそうに俺を見つめる。
いつもオープンに話していた話題に対してのノリの悪さと最近の俺の付き合いの悪さがそうさせているのは明白だが、梶原との事は死んでも言いたくない。
「うーん。まぁ・・・」
否定しても肯定しても酒井はその後を追及してきそうな気がして言葉を濁した。
何も知らなかった昔のように、簡単に割り切れるくらいなら悩んでなどいない。
男同士だから悩んでしまうのか?
・・・ちゃうやろ。
俺はどうしたいねん。
梶原はどう思てんねん。
ちゃんとセックスしたい。て、そんなにおかしいか?
確かめたい。
梶原の気持ちも。自分の気持ちも。
繋がりたい。
梶原の奥深く。もっと。その心も体も全部。
このままではいられない。
どうすんねん。どうしたええねん。どれが正解やねん。
焦燥感と苛立ちが堰きとめられたダムから決壊しそうなるのを必死に耐えるしかない現状の繰り返し。
「次の子に行くわ。かわいい子なんかいっぱいいてるし。・・・梶原もそう思うやんな?」
不意に名前を聞いて急に現実へ戻され、知らずに血の気が引く。
いつの間にかそばにいた梶原と島田が後ろに立っていて内心焦った。梶原にこの話題はタイムリーすぎて笑えない。
「なんの事?」
そう聞き返してきた表情を窺い、こっそり安堵した。
「やからさー、」
「酒井、試合の時毎回違う女の陰毛もらってゲン担ぎしてんねて。全然ゲン担いでへんよな。」
「きしょ。」
「たくさんの女の子から運分けてもろとんの。」
「お、俺ものんちゃんに・・・!」
無理強いしたい訳じゃない。
待つつもりもある。だけど抱きたいという欲求も自然と沸いてくる。
尊重してやりたく思う気持ちと自分の欲望の葛藤の果てはどこにあるのだろう。
もしかして、俺から逃げ出したい思てんの?
そう思うと苦々しさが心臓を握るように痛んだ。
心臓、こない苦しなんの、知らんかった。
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