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雨と群青 その7
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「なぁ。次のチャイムまであと何分?・・・寝てまいそうやぁ。」
眠そうな声。
「あと10分くらいちゃうか?俺もう5分したら降りるで。」
「なんかあんの?」
「んー。前川が教科書貸して言うてたからな。こんなんなら島田に頼んどけばよかったわ。」
「そんなん誰か貸すやろ。ほっとけや。」
「そうやねんけど。ええ奴やからなぁ。優しいし、この前も俺の苦手なOBに絡まれてたの助けてもろたし。」
「俺あいつ、・・・なんか嫌や。」
嫌いなら嫌いと具体的に表現する川本には珍しく歯切れの悪い批判を不思議に思い、視線を寄越したが少しだけ眉間に皺を寄せて相変わらず目を瞑ったまま。
「案外ええ奴やねんけどなー。」
接点がないはずの川本と前川にどんな繋がりがあったのかと考えを巡らせたが、それよりも眠気が勝った。
「・・・。」
それっきり話さなくなった川本は寝てしまったのかもしれない。行く前にでも起こしてやろうと俺も目を瞑った。
陰?と思うと同時に体に感じた重みで目を開けるといつの間にか俺に跨って見下ろす川本。
「わ、何?」
何か言いたげな表情とは裏腹にしばらくそのまま見つめられ、無言のうちに重なる唇。
俺は逆らう事なくいつものように受け入れる。誰にみられる事もない屋上とはいえ屋外でする行為は僅かな緊張を生むが、それも川本から与えられたもののように心地いい。
舌が絡み合う息遣いは二人にしか聞こえない。
こんな時思うねん。好きやなぁて。
不安てなんやったっけ?て。
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