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雨と群青 その12
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足元を見ながら商店街のクリーム色のタイルを数えて歩いていたが飲食店の匂いに釣られて顔を上げれば視界に見覚えのある人物が映り、俺は思わず歩みを止めた。
見慣れた制服の着崩し方、ダルそうな歩き方。
川本・・・。
その隣にいるのはショートが似合う、ちょうどよく日焼けした健康的な女の子で、あれがきっと詩織だとお節介な勘が働いた。
「清史、ソフトクリーム奢って!」
「え、なんで?」
「この前私がジュース奢ったし!ええやん。」
「俺のが支払い高なってるやんけ。」
デートみたい、と他人事のようにゆっくりと脳みそが状況を認識し、それに応じてまた痛みだす心臓。
『とにかく、俺ボディートーク出来へんと無理やねんな。清史くんもそうやろ?』
『うーん、まぁ・・・』
あの曖昧な返事の本心はどこにある?
その子とやったらボディートーク出来んの?
男とするより話早いもんな。
まして、お預けさせられるやなんて不本意やろ。
俺への行為は過ぎた好奇心?
元々男が好きな川本やない。
俺やなくてもええのかもしれへん。
ほんなら俺の存在意義ってなんやろな。
嘘でもええから、言葉が欲しくて。
せやけど。
鬱陶しいと思われたくない。
重いと言われたくない。
嫌われたくない。
結局上手にねだられへん。
しんどいなぁ・・・。
もう考えすぎて、分からへん。
ショーケースのソフトクリームを覗き込んで楽しそうに微笑み合う二人と同じ空間に、俺はいてはいけない存在に思えた。
今すぐこの場所から消え去りたい、と重い足が動き出し踵を返す目の端で川本と目が合った。
「梶原!!!」
川本の声を皮切りに背中を押されたように全速力で商店街を走り抜ける。
勝手に抱え込んだ不安、疑心、恐怖、その全てを吹き飛ばしてしまいたくて、何も考えずにただアホみたいに走りたかった。
あぁ、何してんねん俺。
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