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雨と群青 その16
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リーチが長い分梶原には有利に見えたが、走り込みの量では俺の方が勝っている。もうあとはスタミナの問題。そして大きな体を抱えた梶原よりも小回りの利く身軽な俺の方がこの勝負には向いていた。
何度か桜の残骸に滑りそうになる足を堪えて、徐々に近付く梶原の背中をただ夢中で追いかける。
捕まえたいし、捉まえたいし、掴まえたい。
なんで逃げんねんとか、そんな事より、今はただただ捕まえたい。
何度も何度も逃げる梶原を、そのたびに掴まえたる。
ようやく追いついて腕を掴んだ頃には本降りの雨のせいで二人とも全身ずぶ濡れになっていた。辺りはアスファルトの濡れた匂いと芽吹き始めた草の湿った匂いが立ち込め、知らない間にまあまあの距離を走ってきたのだと、周りの取り囲んだ田んぼで気付く。
「な、んで、追いかけてく、ねん・・ッ」
「おま、逃げるから、やろ!」
ぜえぜえと肩で息をして、重なりながらまたずれていく二人の呼吸のタイミング。
逃がさないように掴んだ腕を離さないままでいると、梶原は諦めたように足元から崩れてしゃがみこんだ。
息を整える間に服に染み込んだ雨が体温を奪う。
仕方なく近くの高架下まで梶原を引っ張って、止みそうもない雨を凌いだ。
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