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雨と群青 その18
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「・・・さっきの子、置いてきてもうてよかったんか?」
傘も所持していなかったように思い出し、仮にも女の子にこの暗い大雨の中を一人で帰らしていまったのかと申し訳なくなった。
「詩織?ええんちゃう?家、商店街のすぐ近くやし。」
また。
・・・詩織、詩織、詩織。
「綺麗な子ぉやったな・・・。」
「あー、詩織なー。その部類には入るかもしれへんな。」
「ふーん・・・。」
「気になんの?詩織。」
「・・・お前は?」
「は?」
「川本は、」
好きなん?言いかけて、何を聞いているんだと口ごもり俯いた俺の靴をスニーカーでつつかれて続きを促される。
「・・・なんでさぁ、詩織て呼んでんの?サッカー部。」
結局聞けずに話題を逸らした。
「マネージャーが二人とも鈴木やからや。詩織と朋子。紛らわしいやろ。」
そいつらがなー、と続けて話す川本の隣で、馴れ馴れしく呼んでいたその名前の理由を聞いて安い安心感にそっと胸を撫で下ろす。
小さい事を気にして悩んでしまうこの性格に自分もうんざりしていて、ならば川本はもっとうんざりなのかもしれないと思えば俺の心ダメージは結局のところマイナスである事に変わりはない。
「お前ホンマに詩織気になんの?」
女々しくて器の小さい俺を見透かしているような質問に戸惑い、探るような視線を川本へ向けると、不貞腐れたように外を見ていた川本と不意に視線が合った。
「なぁ。」
「気になる、けど。」
恥ずかしい。綺麗な、しかも女の子と張り合うこんな俺は本当に浅ましくて恥ずかしい、と腕の中へ顔を埋める。川本のため息が聞こえてその気持ちはさらに増した。
「詩織にさ、この前・・・お前入れて遊ぼうて誘われてんな。」
話が読めずに顔を上げると今度は冷静に俺を見据えた川本がさきほどよりも距離を縮めて覗き込んでいた。
「気になんねんて。お前の事。」
「え?お前やなくて・・・・・俺?」
「うん。お前。」
「・・・川本ちゃうの。さっきもめっちゃ仲よさそうやったし。デートみたいやなー思ててん。」
言ってため息を吐かれたが、傍から見れば付き合っていると思えるほどの距離感だ。
「試してんのか?・・・・・・前から知ってたけどお前ってちょくちょく女みたいな発言しよんな。」
その言葉にまた後悔。
「あいつ、幼稚園一緒やねん。小学校ん時もサッカー一緒にしてたし。今もサッカーしたいて。男みたいな奴や。今更仲ええとかないわ。」
「・・・・・・あ、そ。」
気がかりで聞きたくて、でも聞けなかったその存在の理由にホッとしたと同時に自分の鬱陶しさに自己嫌悪。
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