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雨と群青 その22
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梶原aide
「俺んち来る?」
真っ暗になりそれでも降りやまない雨の様子を窺っていた俺の背中にそう投げかけた川本。
川本の真剣な瞳で意味を察した。
戸惑いや迷い、それから恐怖。なかなか拭えないでいる俺の指に、川本の意外と大きな手から不器用そうで無骨な指が絡まる。
また俺は。何迷てんねん。
甘えてもうて、また胡坐かく気か?
怖いし不安やし。やけど。
そのたびに川本はまた俺の手ぇ引いてくれんねやろ?
「・・・行こか。」
川本の強気な視線と、何もない静寂な間。聞こえてくるのは優しくなった雨の音と、自分の鼓動だけ。
「・・・ええよ。」
俺の言葉を待っていたようにそのまま手を引かれ、暗くなった雨の中を切り開くように力強く突き進む川本。
今は振り返る事のないこの背中を、俺は毎日見ている。
普段とは違う道を抜けて、誰にも会わずに川本のマンションまで無口のまま二人で歩き続けた。
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