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雨と群青 その23
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川本SIDE
玄関を開けるといつもの明かりがなく、静まり返った空間が広がっていた。
下駄箱上のおかんのメモに気付いて目を通す。
“おかん実家法事
おとん埼玉出張
おにい迷子“
迷子て。
兄の成亮は二浪の末大学に通うようになった今年から、次に落ちたら就職だと親に宣言されて今までになく猛勉強をした反動のせいか遊び歩いて帰ってこない事が増え、おかんも最初は口うるさく言っていたが、そのうち成亮は迷子になったと嫌味を向けるようになっていった。
そういや俺が一時期遊び歩いて中学行ってへん時も、おうちもガッコも分からへんのか!迷子や迷子!情けないわぁあたし!!言うてたな・・・。
おかんの法事は事前に知っていたし成亮の留守も予測していたが、おとんまで出張とはありがたい誤算だ。
メモをくしゃりと潰し、ぐっしょり水を含んだ靴を脱いで先に部屋へ上がってタオルを梶原に投げて寄越す。それから洗濯機に服をぶち込みながら浴室の電気を点けた。
「お前先入れ。」
尻尾が下がって怯える犬のような梶原を見て内心笑えたと同時に冷静さを取り戻し、集中しそうになる熱をやり過ごして自分の部屋へ着替えを取りに向かう。
「・・・お邪魔します。」
小さく呟いた梶原は玄関で靴と靴下を脱ぎ、そっと浴室へと姿を消した。
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