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雨と群青 その27
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「…ぅ、…は、……んぁ…」
「声出せや。」
「いや、や」
「声出せって。」
そう言って強引に腕をこじ開けられる。
いつもそうだ。出会った時から。
閉ざしたものを強引にこじ開けるのは川本。
俺が諦めて降伏するまで何度も何度もこじ開けられる。
それを悪く思わなくなるほどにまで。
調教されてる、と。思うねん。
怖いやん。もうだいぶハマってんのに。
これ以上ハマってもうたら・・・。
あ、また思い出してきてもうた・・・
「梶原?」
「・・・俺らって何?」
「は?」
「せやから、俺ら、」
また思い出しそうになった恐怖を払拭するように勢いに乗せて問うてしまった曖昧な関係性。
「今?このタイミングで?」
「・・・、」
もう考えへんて決めてんのに、
意味ない事やって分かってんのに、
俺も大概往生際悪いわ・・・。
川本の動きが停止して、何かを思案しているように空を見つめていた。
その一瞬の長さに息を呑む。
その沈黙が最早怖い。
「かわも、と」
やはり言わなくていい、そう思い話題を変えようと名前を呼ぶが次の言葉は浮かばなかった。
「相方?」
「・・・へ?」
「相方、ちゃう?」
言葉が脳に届く束の間。
「なんかしっくりけーへん?」
川本の事だからどうせ今なんとなくただ思い浮かんだ事を口にしただけだろうその言葉。
せやけどどんな言葉でもええ。
どんな名前でもええ。
線引きがハッキリしている方が、括られている方が、俺は自由に動ける気がする。
笑う川本を見上げて、ようやく落ち着きを取り戻した。
「せやな・・・」
「お前今から突っ込まれるしな。」
「うわ、最悪や。うまい事言うたみたいな顔しとんで・・・」
いつか不安や悩みはなくなるのか?
いや、きっとなくなりはしない。
俺はまた不安を探しては抱えて、やはり時に迷い込んで本質を見失ってしまうだろう。
「川本、」
「ん?」
多分正反対の川本は本質以外を見る事はなく、それに強引に引きずられて不満を抱える分、俺も悩んで迷路に付き合わせているのだから引っ張り合って蛇行しながらでも進んでいくのならお互い様でちょうどええわ、と思うと言い様のない奇妙な安心感を得た。
「なんでもな、い」
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