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春色ブラックコーヒー 7
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「口に何か固いものでも突っ込んでおこうか。……あそこの石像とかぶん投げたら丁度いいかな。顔ごと潰れるかもしれないけど」
「いやぁ俺さ、すげえ田舎者だから、都会人に会うのが楽しみだったんだよ。あんたっていかにも都会人って感じだよな。スタイル良いし、オーラだけでお洒落そうっていうか」
「だが残念ながら石像は、俺には持てそうにない。もっと手軽に投げられるものの方がいいか」
「でも、ちょっと細すぎねぇ? 俺のところ、実家からちょくちょく仕送り来るから、野菜とかお裾分けしようか?すげえ美味いんだよ、うちの野菜。ちなみに俺ん家、八百屋なんだ。俺のオススメはキャベツかな。キャベツって、重いほど甘くて美味しいんだよ」
「ダメージを与えるには重い方がいいに決まってる」
「よっしゃ、毎度ありぃ!……間違えた、ついいつもの癖で。じゃあ今度キャベツ渡すな! 楽しみにしててよ!」
「…………………………いい加減黙って」
一ミリも噛み合わない会話(会話というより独り言の応酬か?)に苛立って立ち止まった俺の背中に、珍しく(と言っても会ってから数分しか経っていないが。つまりこいつは数分間ずっとアホ面を晒していたということだ)真面目な顔をしていたスポーツ男が鼻をぶつけた。
何故かそのままズベべーンと背中からすっ転ぶ。
「いっでーー!!」
腰を押さえて地面に這いつくばる奴をうんざりした顔で見下す。あはは、芋虫みたい。すげえお似合いだよそのまま過ごせば?
「どうやったらそんな転び方できんの? 馬鹿なの?」
「いてててて……、頼む、ちょっと手、貸して」
「一億払うならいいよ」
「じゃあそれで…………え、たかっ!」
一拍遅れて目を剥いたスポーツ男をその場に放って、俺は早足で立ち去った。
くそ、初日から色々と最悪だ。
今朝のアンラッキー占いだとか言うふざけた番組を思い出し、衝動的に目の前にあった石像を蹴り上げた。
俺の前を歩いていた生徒が真っ青な顔で振り向い
たが、知るか。俺は機嫌が悪いんだ。
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