アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
チグハグ兄弟 6
-
「駄目だ」
「何故ですか」
「俺が何故お前達を兄弟にしたと思う?」
食い下がる俺に対し質問で返したのは、この学園の生徒会長だ。
疲労の滲むその顔は、良くも悪くも普通。
特別整っているわけでも劣っているわけでもなく、一見しただけでは特に印象に残らなさそうな平凡な顔をしている。
ただ、何というか、その雰囲気だけは並みのものではない気がする。生徒会長ともなれば、貫禄がでるものなのだろうか。
彼はふと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「顔だ」
「は?」
「え?」
同時に声を発した二人を見て、会長がぶっと吹き出した。
「仲がいいな」
「冗談やめてくださいよ」
「冗談でもやめてください」
またもや同時。
横目で睨む俺と苦笑する瀬良を見て、彼は肩を震わせた。
「……そもそも兄弟制度は、どちらかが問題を起こした場合、二人で責任を取らせるためのルールだ。江戸時代の"五人組"みたいなものだな。そうすれば、俺たち生徒会や風紀の仕事も自ずと減る。瀬良はよく分かっているだろ?」
「はい」
「お前たちのその顔は、絶対に問題を引き起こす。現に、瀬良は今までに一体どれだけ問題を起こしてきた?笠原がいなければ、お前は退学になってもいいレベルだぞ」
「あははは」
「笑い事じゃねぇよ!まったく……。とにかくそんなわけで、問題ごとを多々抱えそうなお前たちを一緒にしておけば、俺たちは楽なんだよ。悪いが、お前ら二人だけはセットにすると前々から決めてる。だから交換(チェンジ)は認められない」
「それはそっちの事情だろ。俺には関係ない」
反射的に言い返せば、会長は俺の物言いを咎めるでもなく、清々しいほどの笑顔を見せた。
「でも、俺が認めないと交換(チェンジ)出来ないんだよなー、これが。だから、二人で一年間頑張れ」
そしてごそごそと机の中を漁り、白い封筒を差し出した。怪訝に思いつつも受け取る。
「幸村、お前は入学早々問題を起こしたらしいな。笠原とも話したが、最初だからこそ厳しめにする必要がある。お前だけに落ち度があるわけではないし、もちろん相手にも罰を与えるが、お前にも挑発した責任はあるだろ?だから、今回は罰としてFクラス降格を言い渡す」
「……へぇ」
降格というからには、クラスによってレベルが違うということだろう。俺は知らなかったが。そんなこと説明されただろうか。
Fクラス降格がどれだけ大変なことなのかはよく分からないが、隣で瀬良が珍しく顔を引きつらせ、「マジかー」なんて呟いていたので、これは厳しめの処置らしい。
「じゃあ、悪いが色々頑張れよ」
会長がぶらりと手を振ると、扉の近くに控えていた屈強な生徒たちに部屋を追い出された。
何だかあの男にうまく撒かれた気がしてならない。あいつ、顔は凡庸なくせして中身は真っ黒だな。
「いやー、断られちゃったね。ま、仲良くやろうよ」
ヘラヘラと軽い笑顔で差し出された手を無視して、俺はさっさと歩き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 17