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襲来.3
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「…………」
部屋に舞い降りる沈黙。
俺も、相沢も、………未だうすら笑いを浮かべているあいつらも。
誰1人として、動かなかった。
意外にも静かな相沢から手を離し、伸也の方にむかって突き飛ばした。
そんなに強い力でもなかったが、あっさりとんでいったことに拍子抜けする。
……最初の様子からして、すぐに言い返して来ると思ったのに、未だに静かなのは、なんだかかえって不気味だ。
しかし、すんなりと伸也の手元に収まった相沢は、そこでやっと思い出したかのように、まくしたてた。
「人に向かって、"おかしい"だなんて、最低だ!!謝れよ!!!!」
「ここでは、っつったろ?この学園がそんなに気に入らねぇなら、ここに来なきゃいいだけの話だ」
先程と寸分違わぬ威勢のよさ。
……なんだ、考えすぎか。
さっきの違和感が尾をひくものの、兎にも角にも、この頭痛のもととおさらばしたい。
もはや頭が痛すぎて、立っていることすら辛かった。
どうにか畳み掛ける言葉はないかと思案していると。
「そうやって、人を突き放してばかりいるから、ひとりぼっちになるんだぞ!!かわいそうなやつだな!!!」
思わぬ切り返しに、声量のためだけではなく、眉間に皺が寄るのがわかった。
いま、何をいわれた?
「…………あぁ?」
「おまえが、"セイトカイチョウ"なんだろ?伸也たちからきいたぞ!!!仕事もしない、他人の気持ちも考えない、最低なやつだって!!!!!」
やっぱり。
それくらいのことはいっているだろうとは思っていた。
想定通り。何も驚くべきことはない。
「へぇ…なるほど、なぁ…?てめぇら、わかってんのか?もうそろそろ、体育祭もはじまる。前にも言ったが、いい加減、戻ってきて仕事しろ。その転校生に入れ込むのは結構だが、やることくらいはやれ。」
だから落ち着いて、3人の目を見つめて話した。
もちろん、これくらいで話を聞いてくれないだろうことは予想済みだ。
無視されるのか、拒否されるのか、なんて甘い考えは
「いいじゃない」
かつてなく温度のない伸也の言葉で打ち砕かれた。
「…………は?」
イイジャナイ?
頭痛で脳が正常に機能していないのか。
伸也の吐いた言葉の意味が全く理解できなかった。
「そうだよ〜、いいじゃーーん、だってカイチョー、俺たちいなくても、仕事まわってるんでしょ?てかむしろ、1人でやったほうが逆に効率いいんじゃな〜い?」
「はぁ?なにいって」「親衛隊をつかえばいいだろ」
「…………は?」
「いつもみたいに。"定時上がり"のカイチョウサマ。それか、何なら俺らのこと、リコールでもしてみる?………できるなら、だけど」
珍しく饒舌な修の言葉を最後に、3人は俺に背をむけ、生徒会室から出ていった。
しごとが、まわってる?
こうりつがいい?
しんえいたい?
どうしてもあいつらが言ったことが、頭に入ってこない。
…そして、何より。
温度のないあいつらの瞳が。
何倍も脳裏に焼き付いて、離れない。
………あたまがいたい。
耐えきれずうつ向けた額から、ポタリ、ポタリと汗が落ちる。
ハァ、ハァ、と荒い息が生徒会室に響いている。
「やっぱりお前、最低だな!!数ヶ月も一緒にいた奴らにあんなこと言われるんだから!!」
あたまがいたい。
響いてるのは、音?声量?
それとも
「"おかしい"俺ですら3人と友達になれたのに!!!」
言葉なのか。
「しっかり反省したほうがいいんじゃないか??」
近付く、気配。
「まぁ、もう手遅れだろうけど?」
最後のことばは、耳元で、響いた。
気が、した。
「じゃあな!!!!!」
妙に楽しそうにそう告げるのとほぼ同時に、ガチャリとドアの閉まる音がした。
『悪い、またせたな!!いこうぜ!!!!』
なんて声が聞こえてくる。
ほんと、うるせーこえ。ばかじゃねーの。
そのままずるずるとしゃがみこむ。
あたまがいたい、
脳みそが、ズクズクと脈打ってるようにすら感じる。
ほんのわずかな雨の音が、信じられないほどに吐き気を誘発する。
あたまをぎゅっと抑えてみても、効果はない。
くるしい。
だんだんとぼやけてくる意識の中で、ドアの解錠音がもう一度聞こえた気がした。
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(割とどうでも良い補足)
生徒会室のドアはオートロックです。
勝手に鍵が閉まります。
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