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兆し.2
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「………まぁ、とにかく、そういうことだ」
そういって、会話をぶったぎれば。
「…………あぁ」
「……わかりました」
「……そうかよ」
三者三様ではあるが、あっさりと受諾された。
ちょうどそこで、最終下校のチャイムが鳴り響いた。
「…それじゃあ」
書類をカバンに詰め込み、立ち上がる。
「…………無理、すんなよ」
ふと聞こえた小さな声に、扉に手をかけたまま振り返る。
振り向いた先では、伸也がそっぽを向き、柴山はニヤニヤ、光毅は驚いたような顔をしていた。
それから、便乗するように。
「……おつかれ」
「頑張ってくださいね、会長」
2人まで声をかけてくるから。
「……あぁ」
一言だけ、無愛想に答えて、そのまま生徒会室を飛び出した。
……………ほんと、なんなんだよ、あいつら。
眉間に力を入れて、外に向かって歩き出す。
なんだか最近、胸のところがむず痒くて仕方がなかった。
ーーーーーーーー
(No side)
「はーー、ほんと会長って、予想外のことばっかですね…」
そう言って、柴山は疲れ切ったように背もたれに体重を預けた。
残る2人も同調するように、頷く。
「傲慢とか言われてたくせに、お人好しだし、仕事してないとか言われておきながら、誰よりも仕事してるし。会長、損しすぎでしょ」
「………しかもあいつ、それを黙認してやがるしな」
不満気に呟く野上に、光毅が噛み付いた。
「お前は、そのおかげで事なきをえてんだろうが」
「っ……!」
図星を当てられ、野上は押し黙る。
険悪になりそうな雰囲気を壊したのは、柴山で。
「まーまー、2人とも、落ち着きましょう。光毅も、会長がなにも言わないんだから、俺たちが言うことでもないだろ」
「…………」
不満そうではあるものの、一旦引き下がった光毅に、柴山はホッとしたように息を吐く。
「…………けど、野上"先輩"。ひとつだけ言っておきますね。これまでのこと、椿屋"会長"が許したんなら、俺らはどうこう言えませんけど。」
表情は笑っているものの、その目はどこか冷たい。
「次なにかあったら、俺ら黙ってませんよ。だから、一応聞いときますけど、先輩はまだ相沢の味方ですか?」
その言葉に、野上が目を見開く。
「お前…!」
「気付いてますよ、相沢って、会長にだけなんか違いましたから。
あいつが"悪い奴"なのかは、よくわかりませんけど、会長に害を及ぼすのは、確かですよね」
光毅は何を考えているのか、ただ黙って2人のことを見ていた。
「それで先輩は?会長の味方なんですか?」
「…あぁ、そうだ」
野上は、まっすぐに柴山の目を見つめて、続ける。
「あいつは、………無邪気で、純粋で、まるで小さなこどもで。だからこそ、厄介だ」
「……厄介?」
それまで黙っていた光毅が、怪訝そうに、眉を潜める。
けれど野上は、これ以上は言いたくない、と言いたげに首をふった。
「あいつには、多分、そもそも関わるべきじゃねぇ。
…………が、もし何かあったら、俺は、会長の味方をする」
その言葉を聞くと、光毅と柴山は顔を見合わせてから、小さく頷く。
「その言葉、信じてますよ。
……なんか、暗くなっちゃいましたね。
それじゃあ、仕事に戻りましょうか」
そう言った柴山の顔は、普段通りの笑顔で。
その後は、先程までの空気が嘘のように、普段通りの作業風景がひろがっていた。
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