アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
44
-
「けっ、あの野郎………」
やさぐれるのも、当然だろう。
昼間あんな期待させるような事を言っておいて、いざ帰るという段になったら完全無視を決め込むなんて………。
………俺は、自分が今何を考えているのか一瞬理解出来なかった。
混乱したと言い替えても良い。
期待………?
俺が、この俺が………あんなに山田の事を迷惑に思っていたこの俺が、山田とどうこうなる事を期待しているなんて………いや、期待なんかしていない。
断じてしていない………けれど一瞬でもそんな事を考えた自分が信じられなくて、俺は思い切りブンブンと頭を左右に振って………すぐにここが人通りの多い往来であることを思い出す。
辺りを見渡すまでもなく感じる道行く人々の訝しげな視線に、顔を真っ赤にさせると足早にその場を立ち去った。
そうして駅に着くとちょうどホームに到着した電車に急いで乗り込む。
無駄に会社に残っていたせいで帰宅ラッシュの時間を過ぎ、広々とまではいかないが窮屈という程でもない車内。
両手を吊革にぶら下げて、時折ガタゴトと揺れる不規則な振動が心地好く、瞼が重くなるのを感じる。
危うく立ったまま寝そうになって………ハッと気付けばもうそこは降りる所で、俺は慌てて電車を降りるのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 114