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結局その日、山田は家には来なかった。
時計の短針が23時を向いた頃に、もうすっかり空腹の向こう側へと辿り着いて食欲のなくなった胃に、ご飯を流し込むようにして食べる。
それから歯を磨き、さっさと電気を消して寝た。
それでもやはり、心の何処かで“もしかしたら………”と思うと落ち着かず、中々寝付けない。
気付くと眉間には深い深い皺が刻まれており、これでは寝れないのも当然か………と苦笑した。
思い切り息を吸い込んで、3秒間そのままに………それからゆっくりと、鼻から時間をかけて肺の中が空っぽになるまで息を吐く。
ドクドクと脈打つ鼓動に意識を集中させ、もう一度同じように深呼吸をする。
そうして目を瞑れば、さっきまであんなに寝付けなかったのがまるで嘘のように、意識は夢の中を漂った。
翌朝は目覚ましのけたたましい音で飛び起き、昨夜大量にストックする羽目になった冷凍のご飯を電子レンジで解凍する。
次いで同じく大量に余ったおかずを温め、とりあえず口に運んでいく。
寝起きで頭がボーッとしながらも、食器をきちんと洗いながら、まだまだ大量に残っている可哀想な昨日の夕飯の残りの行く末について考えていた。
「あー………弁当?」
弁当箱を食器棚から引っ張り出して、冷蔵庫に眠る可哀想な物達をシンプルだけれども見栄えも悪くない配置に詰め込む。
髭を剃り、顔を洗って歯を磨き終わる頃にはもうすっかり目が覚めて………着替えると必要な物を揃えて家を出た。
「………はぁ」
会社には、山田がいる。
「はぁ~ぁ………」
重苦しいため息と共に顔を上げると、目に飛び込む空は青く澄みわたっている。
すぐに視線を真っ直ぐに戻し、再び口から洩れ出そうになるため息を飲み込んで………俺は足を前へと動かした。
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