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突然の往訪………。
それもアポイントなしでのいきなりの突撃である。
「………やっぱ、デケーな」
マンションの前、威風堂々な佇まいの頂上にある山田の部屋………であろう所を見上げてポツリと呟く。
「ふぅ………っしゃ」
大きく息を吐いて、パシパシと音を鳴らし両手で頬を叩き気合いを入れてから、俺はオートロックのボタンを操作した。
『………何か用でも?』
「いやいや、ずいぶんな挨拶だな」
備え付けのカメラに映る俺の顔を、小さなモニター画面から確認するなりインターフォンから山田の冷たい声が響く。
『こんばんは。そして、また明日………さようなら』
「ちょっ、いや、おいっ!待て待て待っ………てはくれないのね………たはー」
ガチャリと無機質な音を立て、一方的に拒絶される。
ガックリと肩を落とし………もうどうしようもないので、仕方なくそのまま引き下がり家へ帰ることにした。
「骨折り損のくたびれ儲け………か」
自虐的な気分に浸りながら、とぼとぼと来た道を引き返す。
恋の駆け引き、なんてものは得意じゃない。
「もう30過ぎたオッサンだぞ………俺は」
いい年こいて、本当に困ったものである。
一度自覚してしまえば、溢れ出し止まらない………どこまでも加速し募る恋心。
乱暴に頭を片手でぐしゃぐしゃと掻いて………ため息を漏らす。
すぐそこに居るのに、手を伸ばせば届く筈なのに………あの野郎ときたらひょいっと俺から逃れてすり抜けていきやがる。
「………可愛くない」
本当にどこまでも可愛くない、最高に可愛い困ったヤツだと思う。
それでも………あわよくば、あの山田という男を全てそっくり自分のものにしてしまいたい。
子供のような欲求、独占欲………。
誰にでも簡単に体を許すアイツを、どうしたら自分だけのものにして縛りつけておけるのか………。
「………はぁ」
とてつもない難問だな………と肩を落とし、ため息を吐きながら帰宅した。
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